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【小説】田舎暮らし案内人奮闘記 第4話

こんにちは、移住専門FP「移住プランナー」の仲西といいます。
ここでは、これまでの17年間の活動、2500組以上の移住相談対応から
皆さんに役立つ情報を書いています。
今回は、これまで受けた移住相談を小説風に書いてみました。
気に入った方は、フォローをしていただけると嬉しいです。

第4話 神経質な相談者!心の叫びよ届け!


私の朝の日課。

5㎞のジョギングとシャワー、梅干しと卵かけご飯、そしてスマホで為替相場をチェック。
やがて、遠くから小学校のベルが聞こえてくると、私も子供たちと同じ様に、書斎に向かいデスクに向き合う。
そして、教科書の代わりに、PCを開けて電源を入れる。

まずは、メールチェックが仕事のスタート。
本日も受信トレイには50件の未読メッセージ。
移住に夢見る人からの熱いメッセージが届いている。

相談メールをフォルダー移動し、着信の古いものから内容を確認。
子供のようにワクワクした気分でメールを開く。

本日の相談。

はじめまして。
東京都在住の江本といいます。
来年退職をしたら、夫婦で〇〇県への移住を考えています。
暖かい地域で海が見える家も探しています。
相談に乗っていただけますか。

「定年後に移住をしたい」は、良くある移住へのきっかけでもある。
「暖かい地域で海が見える家」と言うのも、家探しでは一番多い希望だ。

ご連絡ありがとうございます。
どうぞ、気軽にご相談ください。

この時点では、ごく普通のご夫婦の移住相談と捉えていた。
しかし、その1時間後に返信されたメール内容に、どっと疲労感を覚えることになる。

有難うございます。
取り急ぎ、今、お聞きしたい内容は次のようなものです。

1.○○県の人口と今後10年間の人口流動
2.○○県の年間平均気温と過去10年間の雨量
3.○○市の高齢者医療に対する助成金
4.○○市の救急治療の医療機関数
5.○○市から先進医療が受けられる病院までの距離
6.○○市のバス時刻表
7.○○市のガソリン単価
8.○○市のハザードマップ
9.○○市の○○川の過去30年間の氾濫状況
10.○○市の南海トラフト地震発生時の津波の高さ
などなど


さすがに、ここまでの質問を受けるのは初めてである。
助成金だけを細かく聞いてくる人は結構多い。
私の経験上、助成金を細かく聞いてくる人は、結局、移住できない人が多い。

私は疲労感をおぼえながらも、失礼な文面にならないように、気を付けて返信をした。

すると、また1時間ほどしてメールが返ってきた。

早速の回答ありがとうございます。
○○市の空き家バンクに掲載されている物件〇〇番に興味があります。
物件について教えていただくことは可能ですか。
または、市役所の担当者に聞いていただくことは可能ですか。
今、お聞きしたい内容は、次のようなものです。

1.ベランダの方向
2.ベランダの日照時間
3.浴槽のサイズ
4.門の幅
5.前面道路の幅
6.前面道路の斜度
7.シロアリの駆除履歴
8.物件のある地域の町内会活動は熱心か
9.物件のある地域のハザードマップ
10.物件のある地域における、南海トラフト地震発生時の被害予想

さすがに、常識のある人の質問内容とは思えない。
この後、さらに質問が来ることを考えると、返信を躊躇してしまう。
しかし、返信をしないわけもいかず、答えられる範囲で返信をする。
そして、同文を市担当者にも送付し、情報の共有を図った。

田舎移住で地域に溶け込むことに不安を感じる人は多い。
私の経験から、地域の溶け込めない一番のタイプが神経質な人である。
なぜならば、移住後に神経質な人は不満を感じやすいからだ。
そして、地域とのコミュニティが上手くいかずに、地域から不満の声が届くことになる。



移住者は地域から注目されがちである。
だからこそ、移住者が地域でトラブルを起こすと、他の移住者にも迷惑が掛かることになりかねない。

「あなたのような神経質な人は、田舎移住をしてもうまくいかない」

私の心の声が届くことがあれば・・・と、返信の文章を書きながら思った。

一期一会

今日のご夫婦が、田舎暮らしをすることを祈って・・・

(終わり)



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移住専門FP「移住プランナー」として活動をしています。これまで17年間2000組以上の移住相談に対応をしてきました。ここでは、私の経験からお役に立てる情報を日常的に綴っていきます。「移住」という夢の実現にお役に立てればうれしいです。大阪出身、北海道と鹿児島の3拠点生活中。