マガジンのカバー画像

高井宏章 雑文帳

324
徒然なるままに。案外、ええ事書いてます
運営しているクリエイター

#読書

そして「輪」が閉じた 『おカネの教室』新潮文庫に入ります

そして「輪」が閉じた 『おカネの教室』新潮文庫に入ります

『おカネの教室』の新潮文庫版が3月28日に出ます。
予約が今日2月15日から始まりました。
まずは恥も外聞もなく。

今すぐ、ご予約を!

「コレ、Kindleで読んだなー」という推計5万人のアナタ。
文庫版、税込み693円です。単行本より1000円以上安い。
1冊、手元に置いておいて、損はありません。
さりげなくその辺に放置すればお子さんが読むかもしれません。

今すぐ、予約を!

迷っている方

もっとみる
「本を読む」だけで、いいかもしれない

「本を読む」だけで、いいかもしれない

28年勤めた日経新聞を辞めて、フリーになって、4か月ちょっと経った。中途半端だな、4か月ちょっと、って。
「あれやってます」「これやってます」みたいな話は、また書きます。
YouTubeのリンクだけ貼っておこう。経済や投資に興味ある方、ぜひ。

この文章は、会社を辞めてから守っているルーティンのなかで、「これ、皆さんやったら良いのに」というテーマに絞ります。

それは「本を読む」だ。

なんだ、そ

もっとみる
好きな人と、歩けばいい。 『会って、話すこと。』を読んで

好きな人と、歩けばいい。 『会って、話すこと。』を読んで

田中泰延さんの『会って、話すこと。』を読んだ。
面白かった。

前著『読みたいことを、書けばいい。』の読後、私は長い文章を書いた。

長くなったのは、面白かったから、なのだが、世評と自分の受け止め方にズレがあったから、でもあった。
『会って、話すこと。』については、書評やネット上の感想に違和感はない。「元電通マンが金欲しさで書いた本」と正当に受け止められている。

どこかの本に「誰かがもう書いてい

もっとみる
魅惑の「大判本」10選+α

魅惑の「大判本」10選+α

我が家のリビングのテレビの下の棚には「大判本」がそこそこ並んでいる。

ここでは大判本を「普通の本棚には収まらない大きめの本」としておく。置き場所に窮して集めてあるという事情はあるが、このスペースには普通のサイズの本も並んでいる。
ここにあるのは「ちょっと変わったお付き合い」をする本たちなのだ。

ギアチェンジのひととき

「ちょっと変わったお付き合い」とは、拾い読みだ。
ご紹介する10冊プラスア

もっとみる
稀有な書き手による、生涯に一冊だけ書ける本 『ウナギが故郷に帰るとき』

稀有な書き手による、生涯に一冊だけ書ける本 『ウナギが故郷に帰るとき』

どんな人でも、ある程度の年齢になれば、一冊は本が書ける。自伝だ。
退屈な自分語りに終わるか、興味深い本になるかは、その人の歩みによるだろう。
『ウナギが故郷に帰るとき』は後者のなかでも、極めてユニークな傑作だ。

謎に満ちたウナギという生物を追う人類の歴史と、著者の子ども時代のウナギ釣りの思い出が交互に差しはさまれる構成に、読者は最初戸惑うだろう。

地理としては大西洋から欧州大陸全域、時間軸はア

もっとみる
地球儀から考える新冷戦 『13歳からの地政学』

地球儀から考える新冷戦 『13歳からの地政学』

最後に地球儀をじっくり見たのがいつだったか、覚えているだろうか。

私はといえば、リビングに転がる「ほぼ日のアースボール」のビーチボール版で遊ぶことはあっても、「じっくり見る」ということあまりなかった。

先日、少し空気が抜け気味だった地球儀に息を吹き込み、久しぶりに時間をかけて眺めまわした。
きっかけはロシアによるウクライナ侵攻と、田中孝幸さんのデビュー作『13歳からの地政学』を読んだことだった

もっとみる
『お金のむこうに人がいる』の田内学さんと会って、話して、経済と人間のことを考えるのは面白いと改めて思ったこと

『お金のむこうに人がいる』の田内学さんと会って、話して、経済と人間のことを考えるのは面白いと改めて思ったこと

田内学さんの『お金のむこうに人がいる』を読んだ後、先日、ご本人と三越前のイタリアン「Da GOTO」で2時間ほどお話をした。美味しゅうございました。

このユニークな本と、同じようにユニークな著者から受けた刺激を書き留めておく。
こちらから「はじめに」が読めます。

個人的なメモのような文章なのだが、「読んでみようかな」と迷っている人の背中をちょっと押せるなら、それは嬉しいおまけだ。
では、つらつ

もっとみる
「神様」が描き切った受難と救済 手塚治虫『きりひと讃歌』

「神様」が描き切った受難と救済 手塚治虫『きりひと讃歌』

「一番のお気に入りの手塚作品はどれか」

マンガ好きならこんな話題で盛り上がったことがあるだろう。

『ブラック・ジャック』『火の鳥』『ブッダ』『どろろ』『奇子』『三つ目がとおる』『シュマリ』『ばるぼら』『アドルフに告ぐ』――。

今、本棚に並んでいる作品をざっと挙げただけでも、どれを選ぶか迷う。短編集や『人間ども集まれ!』といった異色作も捨てがたい。少し上の世代なら、『鉄腕アトム』や『ジャングル

もっとみる
戦友と「神様」と2つの青春 藤子不二雄Ⓐ『まんが道』

戦友と「神様」と2つの青春 藤子不二雄Ⓐ『まんが道』

2018年夏に当コラムを始めたとき、「いつか必ず書こう」と決めた作品がいくつかあった。

その筆頭格が、藤子不二雄Ⓐの『まんが道』だ。

漫画家のバイブル私の手元にあるのは2012~13年にかけて刊行された全10巻の「決定版」だ。

小畑健、ハロルド作石、江口寿史、あらゐけいいち、島本和彦、秋本治、荒木飛呂彦……。
帯や文末の寄稿文に並ぶ漫画家の名前を見るだけで、この作品の偉大さが分かる。どの言葉

もっとみる
これで書けなきゃ、お手上げ 『書くのがしんどい』

これで書けなきゃ、お手上げ 『書くのがしんどい』

書名だけみると、ベストセラー『読みたいことを、書けばいい。』の著者、田中泰延さんがこぼす愚痴のようだ。田中さんはあちこちで「書くのは苦しい」と発言している。

本書はそうした泣き言ではなく、「そんなあなたが書けちゃうんです!」という帯の文句を含めてメッセージが完結する、「これから書く人」に向けたガイドブックだ。

『書くのがしんどい』PHP研究所 竹村俊助/著

文章術を説く本は何冊か目を通してい

もっとみる
タペストリーのような大風呂敷 『三体2 黒暗森林』

タペストリーのような大風呂敷 『三体2 黒暗森林』

翻訳モノには、独特のマゾヒズム的な楽しみ方がある。

もう「新刊」は出ている。
でも、読めない。
ギリギリ行ける英語でも大作は躊躇する。
原書を読んだ人たちから「傑作」といった評が耳に入ってくる。
ジリジリしながら、訳を待つ生殺しに耐える日々。

『三体』3部作にそんな思いを抱く方は多かろう。

『三体II 黒暗森林』早川書房
劉慈欣/著 大森望、立原透耶、上原かおり、泊功/翻訳

私もこれほど「

もっとみる
「すべての男」が読むべき傑作 『ザリガニの鳴くところ』

「すべての男」が読むべき傑作 『ザリガニの鳴くところ』

「2019年アメリカで一番売れた本」
「全米500万部突破」

そんなパワーワードが踊る帯には強力な布陣で、

「とにかく、黙って、読め」

と言わんばかりの推薦の言葉が並ぶ。

『ザリガニの鳴くところ』早川書房
ディーリア・オーエンズ/著 友廣純/翻訳

この上に私が贅言を重ねても意味がなさそうなので、個人的な体験を少々ご紹介する。

私が本書を購入したのは、文学YouTuberのベルさんのこの

もっとみる
教育の「悪平等」への偏見をほぐす 『日本の15歳はなぜ学力が高いのか?』

教育の「悪平等」への偏見をほぐす 『日本の15歳はなぜ学力が高いのか?』

PISAをご存知だろうか。
OECD(経済協力開発機構)が3年ごとに行う国際的な学力調査で、Programme for International Student Assessmentの頭文字をつないだものだ。
「日本の子ども、学力順位が後退」といった形でニュースになるので、名前は聞いたことがなくても、結果だけご覧になったことはあるかもしれない。

本書は英国人教師が、PISAの成績上位から5つの

もっとみる
鳥肌モノのエピソードの宝庫 『エリザベス女王』

鳥肌モノのエピソードの宝庫 『エリザベス女王』

秀作ぞろいの中公新書の歴史シリーズのなかでも、指折りの傑作だ。

今年で94歳、在位68年を迎えた「史上最長・最強のイギリス君主」の世界史的な位置づけ、そして何よりエリザベス女王自身と英王室メンバーの伝記として、きわめて秀逸な読み物になっている。

『エリザベス女王』中央公論新社 君塚直隆/著

あらかじめお断りしておくと、ロンドンに駐在した影響もあって、私はエリザベス女王のファンだ。ご長命をお祈

もっとみる