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そして「輪」が閉じた 『おカネの教室』新潮文庫に入ります

『おカネの教室』の新潮文庫版が3月28日に出ます。
予約が今日2月15日から始まりました。
まずは恥も外聞もなく。

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「コレ、Kindleで読んだなー」という推計5万人のアナタ。
文庫版、税込み693円です。単行本より1000円以上安い。
1冊、手元に置いておいて、損はありません。
さりげなくその辺に放置すればお子さんが読むかもしれません。

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迷っている方、以下の錚々たる推薦コメントをご覧下さい(順不同)

みなさま、絶賛の嵐、ありがとうございます。
なぜか文庫版の画面が分離しちゃってますが、単行本のAmazonレビュー2200件、星の平均は4.5。

ギフトとしても人気です
9割のレビューが★4以上です

「統計的に優位に、良い本」です。

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まだ迷っている方。
文庫版はなんと、池上彰さんの解説付きです。
ご著書で推薦図書に入れてくださってたのですが、まさか池上さんが書いてくださるとは。
解説、私もまだ読めていません。楽しみだなー。

まだ迷っている方。
の背中を押す効果があるかは不明ですが、私の「文庫版あとがき」を全文公開します。

 2018年の単行本『おカネの教室』の出版から6年もの歳月が流れてしまいました。我が家の三姉妹だけが読む家庭内連載から始まったこの本は、紙の書籍で5万部、電子書籍でも同じくらい読まれるロングセラーとなっています。思いもよらなかった多数の読者を得て、驚き、喜び、文庫化でさらにたくさんの方に読んでもらえれば、と楽しみにしています。
 この6年で、物語の最初の読者だった長女は大学院に進み、次女も大学に進学、三女は来年大学受験と三姉妹はすくすく育ち、父はといえば、2023年6月に28年勤めた日本経済新聞社を辞めて、51歳にしてYouTuberになってしまいました。人生、何があるかわからない。ちなみに「高井浩章」は筆名で、本名は高井宏章と申します。
 おカネの世界に目を向けると、円相場は1ドル140〜150円台まで下落し、日経平均株価はバブル時の最高値に手が届こうかという上昇を見せています。そんな中で2024年から、新NISA(少額投資非課税制度)が始まりました。今後は日本でも「投資をすることは当たり前」という時代が来るのだろうと思います。
 「貯蓄から投資」自体は、私は良い流れだと考えています。しかし「投資をやれば儲かる」「やらないと損」という側面ばかりが関心を呼ぶのは、いただけない。
 なぜ投資には果実があるのか。
 その果実は誰が生み出すのか。
 果実を育む「見えざる手」とは。
 その流れの中で投資が果たす役割は。
 本書は、一人の少女の悩みに向かい合う中で、「投資の向こう側」にある世界の有り様が垣間見える物語になっています。

 唐突ですが、「人類はお金に慣れていない」が私の持論です。貨幣ができてせいぜい数千年。生き物としてのヒトの歩みに比べれば、お金という道具の登場はつい最近のことで、私たちの心や体はこの道具をうまく使いこなすように進化してきたわけではありません。
 しかも、この100年ほどでお金と経済の仕組みは、おそろしく精妙で、おそろしく複雑なものに発達しました。世界をうまく回すための潤滑油だったはずのお金は、時に暴走して我々の社会を揺るがしたり、時に金銭崇拝が誰かの人生を狂わせたりする、厄介な存在になることもあります。
 娘たちには、そんな「お金の落とし穴」を避けてほしい。うまくお金と距離感を持てる人になってほしい。それが『おカネの教室』を書き始めた動機でした。日経新聞を退職した後、今は金融教育に力を入れて活動しています。本書からチャンネル名をとったYouTube「高井宏章のおカネの教室」もその一環です。
私は、乱暴に一言でまとめると、「たかがお金、されどお金」と言えるようになることが金融教育の目標だと考えています。
 お金はただの道具で、人生の目的ではない。それは当たり前のことですが、日本ではこの「たかがお金」が強調されすぎてきました。本当の意味でそう言えるのは、お金の役割や大切さを知ってから、つまり「されどお金」と知ってからのはずです。
 
 そんな狙いや願いを込めて書いた物語ではありますが、同時に、娘たちに伝えたかったのは「お金や経済は面白い」ということです。私自身、経済記者として長年取材を重ね、今も経済をテーマとしたコラムを書いていますが、飽きる日が来るとは思えないほど奥が深く、エキサイティングな世界です。それは、人間社会で起きる多くのことは、裏側にベッタリとお金が張り付いているからでしょう。お金は世界を映す鏡、あるいは違った角度から世界を見るレンズのようなものです。
 
 このあとがきを書いている今、『おカネの教室』は続編を執筆中です。舞台は3年後。高校二年生になったサッチョウさんが、夏休みにロンドンに留学中のビャッコさんと再会します。一作目で「お金を手にいれる6つの方法」を授けたカイシュウさんは、今度は二人に「お金を殺す3つの方法」を伝えます。
 手前味噌と言うか、実は私自身、ビャッコさん、サッチョウさん、カイシュウさんの大ファンです。一作目の執筆時は、彼らが「一人歩き」を始めてから、「先が気になる!」と書くのがとても楽しくなったものでした。久しぶりに『おカネの教室』の世界に戻り、私の想像を超えてお金の世界に分け入っていく3人組にワクワクしています。
 読者の皆様にも、いつかどこかで3人組と再会していただく機会があれば、と存じます。
 
 最後に、あらためて、本書をお読みいただき、まことにありがとうございました。
                        2024年2月 高井浩章

『おカネの教室』高井浩章 新潮文庫版あとがき

さあ、

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くどいですね、すいません。

「私の一部は新潮文庫でできている」

新潮文庫入りには特別な感慨があります。
2018年に私はこんな文章を投稿しました。

このタイトルに共感する方、それなりにいるのではないでしょうか。
「埋めたリンクは踏まれない」の鉄則に則り、抜粋・引用します。

おそらく多くの本好きにとってそうだろうが、新潮社は特別な出版社だ。それは新潮文庫という知の宝庫によるところが大きいと想像する。

私が育った町には、近所に大きな書店がなかった。自宅にも本棚と呼べるようなものはなく、そもそも貧乏で、本は図書館で借りて読むものだった。
それでも「本の虫」だった私は、小学校高学年から中学生のころ、駅前の小さな本屋によく足を運んだ。もうなくなってしまって、あれほど通ったのに、店名が思いだせない。
お金はないから、ひたすら本を見て回り、立ち読みする、迷惑な客だった。長い時は2時間ほど、店内をぐるぐる歩き回っていたと思う。壁の棚以外には書棚の「島」が2列あるだけの小さな書店だった。壁の棚は文芸や実用系の単行本やマンガ、「島」のうち1列が雑誌の棚だった。
私が一番長い時間を過ごしたのはもう1つの「島」の文庫本コーナーで、そこの主役は「新潮文庫」の古今東西の名作だった。
今でも、漱石、鴎外などの日本文学からトルストイ、ヘミングウェイなど、ずらりと並んだ背表紙のなすモザイクが目に浮かぶほど、その棚の前で長い時間を過ごした。今ほど書店の棚の入れ替えが忙しくなかったので、私はどの本がどの位置にあるのかほぼ完璧に覚えていた。「絵」として背表紙を記憶していたので、テストで作品と作者名を結び付ける問題などは楽勝だった。
図書館で借りたり、そこで立ち読みしたり、わずかな自宅の蔵書を読んだり、といった形で、私の読書の量と幅はだんだん広がっていった。漱石や太宰の短いものは、その書店で読んでしまったと思う。
そして中学生のある時期から、猛烈に「自分で本を買って集めたい」という欲が内側から湧き上がってきた。それまで自分で買っていたのは読み捨てる少年漫画誌ぐらいだった。
何日も、何時間も文庫本の書棚の前で吟味した結果、買ったのがドストエフスキーの「地下室の手記」だった。本棚から引っ張りだしてみると、昭和44年初版の江川卓訳で、31刷は昭和60年配本とある。おそらく14~15歳の時に買ったのだろう。
正直、これは「はずれ」だった。そもそも、散々迷ったあげく、「ドストエフスキーくらい読まないとな」というミーハー(?)な発想で、一番薄くて安い(280円!)作品を買っただけなのだから、脈略も何もない読書になったのは自業自得としか言いようがない。

その後、私は何冊の新潮文庫を読んだのだろう。数えたことはないが、1000までは行かないが、100や200といった数ではないはずだ。
人間のある部分は、読んだもので作られる。
秩序だった読書と縁遠かった十代の私は、新潮文庫で古典に親しみ、ブルーバックスで科学に憧れ、宝島ムックからサブカルを吸収し、ムーブックスでオカルトに染まり、落合信彦で国際情勢をかじったつもりになっていた。
この大人になる前の乱読が、今の私を作っている。私の一部、それもかなり良質の部分は、新潮文庫を通じた読書に負っている。
良い機会なので、これから「地下室の手記」を再読してみようと思う。
今開いてみたら、本文の活字が恐ろしく小さいが、幸いまだ老眼は「きていない」ので、まあ、大丈夫だろう。
中学生の私にはチンプンカンプンだったこの本も、おっさんになった今なら、何か得るものがあるだろう。

こうしてまた、新潮文庫が私の一部になる。

note「私の一部は新潮文庫でできている」より

新潮文庫ばかり立ち読みしていた高井少年よ。
お前が書いた本が、新潮文庫に入ったぞ。

かくて、「輪」は閉じたのだった。

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異色の経済青春小説「おカネの教室」、新潮文庫になりました。


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