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日本におけるDXの推進に必要な要素

個人的な興味もあり、DX(デジタル・トランスフォーメーション)については、これまでも孫正義さんやオードリー・タンさんの基調講演や対談を取りまとめてまいりました。

DXとは、平たく言えば「デジタル化の推進により社会生活をより良くする」という考え方です。

今回は、別の企業セミナーであった一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「日本のDXの在り方を考える」というテーマの講演について。

まずは、機能していないオンライン行政についての話がありました。
一番分かりやかった事例は、コロナ禍の状況下におけるデジタル化の遅れですよね。

官庁主導での取り組みはことごとく後手に回ったり、開発したアプリも酷いものでした。

・  給付金オンライン申請の混乱
・  感染者情報のファックス送信
・  接触確認アプリ「COCOA」の機能不全
・  ワクチン接種記録システムの不具合

などなど。

給付金の申請に至っては、実際はコロナ禍においても予約の行列が。
情報収集にはファックス頼みになる始末。
アプリは開発すれども機能せず。
ワクチン接種記録システムは、仕組みがあっても使用されず、記録も残らず分析もできないという結果に。在庫ないのに「ある」というエラー判断する不具合も。

コロナ禍の事例だけではなくて、機能不全ということでは、海外にいる日本人の運転免許証の更新なども一時帰国が必要と、現代社会では考えられない対応を行政に求められる現状があります。

東京都なんて未だにフロッピーディスクを使用している区もあるようですし(^_^;)

一方では、民間企業のデジタル対応化の遅れについての指摘も。

・  テレワーク推奨なのに在宅勤務が進まない
・  オンライン医療については医師会の反対があり進まない
・  オンライン教育では公立校と私立校間の格差が発生
・  今なお蔓延る印鑑文化とファックスや電話などのアナログ業務

会社に出社する方が評価されるというのは、成果主義よりも皆勤主義といったところでしょうか。

台湾の学生さんに、日本のテレワークの実態の原因はなんだと思うかと訊いたところ、「日本人は参勤交代の好きな国民だから」と言われたなんてジョークを聞いたことがあります。

これらは技術の問題ではなくて、技術はあるが「組織の仕組み」の問題です。

技術は、導入だけでは進まない、配布だけでは進まない。

問題は、組織の在り方であり、社会の在り方であり、病院や教育の在り方にあります。

また、デジタル化の基礎としての「本人確認」「本人認証」の仕組み化がなされていないということもDXの推進を阻む要素となっています。

例えばコロナワクチンを接種したかどうかについての「ワクチンパスポート」の導入について。

病院から発行されたワクチン接種済み証を本人証明のできるものと照合することは可能です。

ところが病院での本人確認の照合に使用しているのは氏名と住所の項目のみです。だから、顔写真のついていない健康保険証などでもいいわけです。

本来の本人証明に必要なのは「同一人物」であるかどうかということですから顔写真が必須であり、それを証明できるのは運転免許証かパスポートかマイナンバーカード。

ところがこれらは取得必須の証明書ではありませんから、持っていない人も大勢います。

また、将来的には、全国民がマイナンバーカードの取得を目指すとしても、現段階では本人確認にマイナンバーカードの使用を反対する人がいるとのことです。

国が手掛ける仕組みだとしても、「電子署名」や「電子認証」への信頼がないのですよね。

「国家に対する信頼」がないとデジタル化は進まないと野口教授は仰っていました。

今現在も、アナログであれば「印鑑証明」などは国が管理しているには変わらないはずなのですが、ここをデジタル化できるかどうかが鍵となるわけです。

そして最後に、デジタル庁の発足で問題解決するかどうかとう話題に。

今の問題としては、

・  省庁ごとのバラバラの仕組みと、国と自治体の不連携
・  組織のリーダーにIT知識がないため、丸投げの体制となっている
・  IT人材の育成不足
・  閉鎖的な組織

といった点を挙げられていました。

デジタル化の遅れは、かつてと違って「生産性の低い日本」の原因ともなっていますが、真のデジタル化を推進していくには技術の問題ではなく、

・  仕事の進め方
・  組織の在り方
・  社会の在り方
・  国家への信頼とそれに応えられる国の在り方

これらの課題解決が必須である、と本当に今後の日本は大丈夫なのかなと何とも先行き不安な感じにさせられた感は否めません。

ただ、また別の対談で、現在の日本において先進的に取り組もうとしている自治体の具体例を聞く機会が得られましたので、次回はそれについて触れていきたいと思います。

今日も読んでくださいまして、ありがとうございます。

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