Daisuke ITO

中国語を居場所としつつ言語に関する諸々について考え、教えることを生業としています。 言…

Daisuke ITO

中国語を居場所としつつ言語に関する諸々について考え、教えることを生業としています。 言語学 中国語 韓国語 タイ語 旅 バイク プロ野球 酒

記事一覧

簡単に諦めるな

 1点ビハインドで絶体絶命の9回表2アウト、2ストライクから内川がライト前ヒットで出塁、次がなかなか調子が上がってなかったもののこの日2安打の上林。個人的に上林はこ…

Daisuke ITO
1日前

仕事なんてみんなこんなもん🥱

Daisuke ITO
2か月前

北京にて(2)

 今は昔、2006年秋から2007年にかけて、北京で夫婦2人が住むマンションの1部屋を間借りして住んでいたときの話。そこのおばちゃんは、餃子を作るたびに「食べる?」と呼ん…

Daisuke ITO
6か月前
3

北京にて(1)

「寮費とデポジットを払います。まずはデポジットから」 「現金でください」 「寮費を微信(WeChat)で払うつもりで準備してきたんですけど、デポジットは現金じゃなきゃダメ…

Daisuke ITO
6か月前

「言語交換」は甘くない

 身も蓋もない話。たとえば、「日本人」である私が〇〇語の運用能力を磨きたいとする。その場合、「日本や日本語に興味関心のある〇〇人」と付き合うのは、実はあまり得策…

Daisuke ITO
9か月前
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「語学」をやめたい

 「語学」という日本語は、大きく分けて次の2つの意味で使われている。  ① 母語以外の言語を操る技能、またはそのトレーニング  ② 各言語ないし言語一般を対象とする…

Daisuke ITO
9か月前
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たとえばこれを見てもまだ医者の言うことを真面目に聞こうと思う?

Daisuke ITO
10か月前

2種類の「理解」

 日本語の「理解する」という動詞ついて言えば、その使われ方を観察すると、大きく分けて少なくとも2つの異なる意味で使われていることに気づく。  ①(人や物事に対し…

Daisuke ITO
10か月前

情けは誰のため?

 「情けは人のためならず」というのは「人に情けをかけたらいつかそれが自分に返ってくる、つまりは巡り巡って自分のためなのだ」という意味だ、と親からか学校の先生から…

Daisuke ITO
10か月前
1

言葉の暴力性

 人間が何かを利用する(=道具として使う)のは、人間の能力に限界があるからだ。たとえば、人間がナイフを使うのは、肉の塊を丸呑みにする能力が人間に具わっていないか…

Daisuke ITO
10か月前
1

友達がいない男

 友達ってなんだろう? とりあえず考え出した定義は、  ① 当日いきなりでも「飲もう」とこちらから誘える  ② それで断られても別に気まずくはならない の両方を同…

Daisuke ITO
10か月前
3

雑談

 しばらく前、授業中に授業と関係ない雑談をするな、という指摘を学生さんから受けた。しかし、自分の専門、仕事、趣味、居場所、推しetc. といった興味の対象はXだからそ…

Daisuke ITO
11か月前
2
簡単に諦めるな

簡単に諦めるな

 1点ビハインドで絶体絶命の9回表2アウト、2ストライクから内川がライト前ヒットで出塁、次がなかなか調子が上がってなかったもののこの日2安打の上林。個人的に上林はこの先チームを背負うべき人だと思っていて、特に頑張ってほしいと思っている。前も札幌でホームラン打っていたし、これで1発逆転とか、もしかしたら、いや、そんな奇跡は、いやまさか。その瞬間、まさかが目の前で起こったのだった。体がこれまでに経験し

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仕事なんてみんなこんなもん🥱

北京にて(2)

北京にて(2)

 今は昔、2006年秋から2007年にかけて、北京で夫婦2人が住むマンションの1部屋を間借りして住んでいたときの話。そこのおばちゃんは、餃子を作るたびに「食べる?」と呼んでくれる。中国では小麦粉をこねて皮から作るのが普通。
 あるとき、「これはぜひマスターして日本で自慢したい」という下心から「餃子の作り方を教えてください」と言った。すると、具体的に何と言われたかは覚えていないけれど、確か「作り方な

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北京にて(1)

北京にて(1)

「寮費とデポジットを払います。まずはデポジットから」
「現金でください」
「寮費を微信(WeChat)で払うつもりで準備してきたんですけど、デポジットは現金じゃなきゃダメですか?」
「ダメです」
「じゃあ、どうせ現金を用意するなら寮費も現金じゃダメですか?」
「寮費は現金不可です」

******

「支払いは微信で」
「OK」
「あれ、QRが出ない」
「回線に繋がってないのでは」
「そうだ、Wi

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「言語交換」は甘くない

「言語交換」は甘くない

 身も蓋もない話。たとえば、「日本人」である私が〇〇語の運用能力を磨きたいとする。その場合、「日本や日本語に興味関心のある〇〇人」と付き合うのは、実はあまり得策ではないような気がしている(多少は経験に基づいた感想)。そういう〇〇人は総じて日本に甘く、日本人に甘く、したがって私にも甘いと思う。もちろんそれも〇〇人の多様な側面のひとつには違いないのだが、一方それによって日本に興味のない多数の〇〇人の存

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「語学」をやめたい

「語学」をやめたい

 「語学」という日本語は、大きく分けて次の2つの意味で使われている。

 ① 母語以外の言語を操る技能、またはそのトレーニング
 ② 各言語ないし言語一般を対象とする研究分野(〇〇語学、言語学)

 この2つは、一方ができるからといって他方もできるというものではない。①が得意だからといって②ができるとは限らないし、②をやる人すべてが例外なく①に堪能とも言い切れない。このように、①と②とは、明確に区

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たとえばこれを見てもまだ医者の言うことを真面目に聞こうと思う?

2種類の「理解」

2種類の「理解」

 日本語の「理解する」という動詞ついて言えば、その使われ方を観察すると、大きく分けて少なくとも2つの異なる意味で使われていることに気づく。

 ①(人や物事に対して)そこに至る因果の筋道を説明できる
 ②(人に対して)その立場に共感し、時にそれに配慮した行動をとる

 以下、①と②の意味の「理解」をそれぞれ「理解1」「理解2」とする。「エンジンの構造を理解する」とか「市場経済の仕組みが理解できない

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情けは誰のため?

情けは誰のため?

 「情けは人のためならず」というのは「人に情けをかけたらいつかそれが自分に返ってくる、つまりは巡り巡って自分のためなのだ」という意味だ、と親からか学校の先生からか忘れたが教わった。その解釈は妥当だろうか。敢えて疑ってみたい。
 対案としては2通りの解釈が可能だ。1つ目は、もっと身も蓋もない話で、「不遇な人が視野に入ると自分の居心地が悪いので、それを解消するために情けをかけざるを得ない」という意味に

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言葉の暴力性

言葉の暴力性

 人間が何かを利用する(=道具として使う)のは、人間の能力に限界があるからだ。たとえば、人間がナイフを使うのは、肉の塊を丸呑みにする能力が人間に具わっていないからだ。人間が言葉を使うのもおそらく同様だろう。世界を丸呑みにすることはできないから、あたかもナイフで肉の塊を切り分けて口に運ぶのと同じように、言葉で世界を切り分けて自分に取り込むのだ。
 言葉は世界を「切る」もの、刃物だ。「51対49」と「

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友達がいない男

友達がいない男

 友達ってなんだろう? とりあえず考え出した定義は、

 ① 当日いきなりでも「飲もう」とこちらから誘える
 ② それで断られても別に気まずくはならない

の両方を同時に満たせる相手(だけ)が「友達」だ、というもの。両方同時に満たせない相手は、申し訳ないけど友達以外の何かだということになる。
 ところが、これを大学生諸君に言ってみたところ、総じて「厳しすぎる」「ハードル高すぎる」といった反応だった

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雑談

雑談

 しばらく前、授業中に授業と関係ない雑談をするな、という指摘を学生さんから受けた。しかし、自分の専門、仕事、趣味、居場所、推しetc. といった興味の対象はXだからそれ以外に興味なし、という思考回路は感心しない。「X」が「非X」との対立においてのみ存在し得るというのは言語学の「基本のき」。あるものの価値というのは、それ自身が積極的に存在し自己主張するようなものではなく、自身のあり方を自身では決定す

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