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イナーワールド 第1話「終焉の月」
《あらすじ》
第1話 終焉の月
人生に無駄なことは、ひとつもない。と、亡き父は繰り返し言っていた。
元々はべつの誰かの名言だろうか。そこらへんによく転がってそうな文句ではある。
人生に無駄なことは、ひとつもない。
それは誰にとって無駄ではないのだろう。父にとってだろうか。神にとってだろうか。自分にとってだろうか。
少なくとも寿命のある生き物にとって、この世は無駄なもの
【毎週ショートショートnote】半分ろうそく
あと半分.......、あと半分.......。
雲ひとつない空の下、子どもたちが賑わう公園のベンチに一人の男が座っていた。
防風ストールを羽織った40代後半の川戸守は、燭台の上にある火の灯ったろうそくを大事そうに見守っていた。
そのろうそくは既に半分まで溶けており、八重咲きの雛菊のように全方位均等に蝋が垂れ下がっていた。
「おじさん何見てるの?」
頭に長いろうそくと燭台を乗せた少年が、ジャ
ここまで毎日投稿してきましたが、今日はついに書けない日がやってきたので、お休みします。noteを初めて1ヶ月が経ちましたが、意外と読んでくださる方が多くてとても嬉しいです。今後もよろしくお願いします。
【詩】世界の扉を閉じてきた、すると
街中の喧騒を消したくて耳栓をした。
すると
好きな雨音まで聞こえなくなった。
親の喧嘩を見たくなくて目を閉じた。
すると
庭に咲く紫陽花まで見えなくなった。
あらゆる情報を断ちたくてスマホを割った。
すると
大切な人たちの連絡先まで無くなった。
何もかも失ったことに耐えられなくてナイフを握った。
すると
そこに君が来た。
気高いライオンの咆哮のごときエレキ音が僕の耳栓を吹き飛ばし そ
【詩】ムーンレイカー
のぞき込むは
鏡の世界
反転する
心と身体
分裂する
月のかけらに
立ち昇る
見知らぬ翳り
ぼくはカフカの夢を見る
雪で隠す
アヒルのこども
まぬがれない
真夏の陽差し
のぞき込むは
鏡の世界
きみはやはり
ムーンレイカー
【毎週ショートショートnote】伝書鳩パーティー
「週末のパーティー出席するよな?」
「もちろん。それにしても上は酷いことをする。今まで一緒に仕事してきたパートナーを俺たちに食わせるなんてさ」
「野生に放つのはよくないし、ただ殺処分するだけだと可哀想だからってことらしい」
「楽しいパーティーがお通夜みたいな空気になること間違いないな」
「まあICTが充実した世の中で、あいつらを使ってやるのは厳しいし。仕方ないさ」
「古いものや非合理なも