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【140字小説】彼の眼鏡

夫の遺体は森の中で発見された。
そこに銀縁ぎんぶちの眼鏡はなかった。

20年前、夫は近所の老舗しにせで眼鏡を買った。吝嗇家りんしょくかの彼にとっては珍しくとても高価な眼鏡で、最後まで大事にしていた。

私は彼の眼鏡を捜した。
最後に彼が歩いた道を知りたかった。
彼に近づきたかった。
しかし、彼の眼鏡はどこにもなかった。


140字

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