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ここは詩や詩のようなものを集めたマガジンとなっております。ジャンルはバラバラですが、どれか一つでも心に刺さるものがあれば幸いです。
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記事一覧

【詩】世界の扉を閉じてきた、すると

【詩】世界の扉を閉じてきた、すると

街中の喧騒を消したくて耳栓をした。

すると
好きな雨音まで聞こえなくなった。

親の喧嘩を見たくなくて目を閉じた。

すると
庭に咲く紫陽花まで見えなくなった。

あらゆる情報を断ちたくてスマホを割った。

すると
大切な人たちの連絡先まで無くなった。

何もかも失ったことに耐えられなくてナイフを握った。

すると
そこに君が来た。
気高いライオンの咆哮のごときエレキ音が僕の耳栓を吹き飛ばし そ

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【詩】ムーンレイカー

【詩】ムーンレイカー

のぞき込むは
鏡の世界

反転する
心と身体

分裂する
月のかけらに

立ち昇る
見知らぬ翳り

ぼくはカフカの夢を見る

雪で隠す
アヒルのこども

まぬがれない
真夏の陽差し

のぞき込むは
鏡の世界

きみはやはり
ムーンレイカー

【散文】オールド

【散文】オールド

彼女は美しい。

嵐の夜も不動の姿勢をとる老木のように鷹揚で
雷の粗相も風のいたずらも許せるほど寛大で
色衣を幾重にも折り畳んだようなシワをつけ
四十六億歳の太陽のようにいつまでも輝き続けている。

刻々と進む深い川の流れに身を任せ
熟れるほど美しいザクロのように
年をとるほど魅力的になっていく。

彼女は自信を持って老いている。
彼女は老いが一番美しいことを知っている。
彼女は死を突き抜けるよう

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【猫俳句】春夏秋冬

【猫俳句】春夏秋冬

《春》

山里の
尻尾ふるふる
猫柳

子の刻に
猫の目で見る
朧月

《夏》

夏の午後
伸びる猫背に
長い青

縁側に
からのお皿と
爪のあと

《秋》

茜空
土手でじゃれ合う
赤とんぼ

秋刀魚くれ
くれなきゃ今日は
触らせにゃい

《冬》

雪の影
キャッと飛び出す
白い猫

雪時雨
見向きもせずに
夢のなか

【詩】退廃的な夜

【詩】退廃的な夜

光は万物に色を与える。
時に烈しい光は万物から色を奪い去る。
身勝手で理不尽な昼のおこないを
夜が羽根を広げて覆い隠す。

瓦礫が奏でる音楽は
灰色の肺を掻き毟り
冷酷無情な月球は
酔い潰れた肝臓を容赦なく切り裂いていく。

誰もが諦め
誰もが見捨てた
退廃的な夜のなか
一本のマッチに新たな光を宿らせる。

【詩】飢え

【詩】飢え

お腹がグー groove ぐるーん
禄いまだ賜はらず
八咫烏 腹が立つ
伽藍堂 No No No
孕んどう オトヲ
パパゾンビ ママ暢気 みんな揃って
川遊び アマゾンに 死んだも同然 I'm a lonly boy.
Go in! 剥がせや FACE
本の 中身は FAKE
超えて行け 神の 一個上
とにかく 迷わず リンゴ喰え

行き過ぎた資本主義社会の中で、これから僕達はどう生きていけばいい

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【韻文詩】お呪い

【韻文詩】お呪い

呪いの森のお呪い
トロイの木馬を焦がしたり

燻煙が木々に感染し
赤い子種も炭木と化す
山は灰を分娩し
赤い空音は真と化す

誰かが始めたお呪い
誰かが防げたお呪い

崇められた
祟り神
世界を滅ぼす
お呪い

【詩】綿雲

【詩】綿雲

銀色ナメクジが
わたの花を愛撫する
ぬめりを伴うその痕跡は
朝露に混じり 流れ去る

麦の風にあおられて
ひらりひらりと
枯れ落ちる

繊細な花弁と引き換えに
やわくふくらむ白いわた

茎からはなれ 根からはなれ
空に向かって浮遊する

ゆるやかな膨張をくりかえし
ふわりふわりと漂うわたは
湿った大地に ひとつまみ
銀の塩をふりかざす

【詩】小石とクレヨン

【詩】小石とクレヨン

得るものの方が多かったあの夏
ここから先は失うものの方が多くなるのだろうか

純粋な好奇心だけで
色鮮やかな森を駆け巡っていたあの頃が
遠い昔のように感じられる

スーツの上からトレンチコートを羽織り
密集したビルのあいまを縫い歩く

赤切れの手を擦り合わせ
白い息をくゆらせる
ネクタイをキツく締め
肩に重くのしかかったものを背負いなおす

タッタッタッ
何かが落ちた
えりのすそから小石が2こ

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【韻文詩】融解メトロノーム

【韻文詩】融解メトロノーム

ト、ト、ト、ト、
テンポ100
左右に揺れる
善と悪

トッ、トッ、トッ、トッ、
120
恋に奔走
Love Kills

ト、、ト、、ト、、ト、、
テンポ50
よるを奏でる
幻想曲

ト……ト……ト……ト……
テンポ20
白く着飾る
化粧室

と……と……と……と……
とけていく
まっかなほのおで
もえていく

【詩】無重力ブランコ

【詩】無重力ブランコ

進んだり戻ったり
行ったり来たり
君が地球の中心から引っ張ってくれるから
私は力いっぱい漕ぐことができた
君がいるのが当たり前だと思っていたから
私は迷いなく足を突きだすことができた

地面を蹴り
いざ漕ぎ出すと
止まることなく回りだす

ふわふわと ぐるぐると
同じところを回りだす

私の心は宙ぶらりん
私の鎖に振り回される

どこに進むかわからない
それでも私は手を放す

過去の大地に手を振っ

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【詩】冬の窓

【詩】冬の窓

窓から見る
乾いた空と白い雪
きっと君は春にいるだろう
温かい空気に包まれて
色鮮やかな花に囲まれているだろう
冬のことは忘れてしまっただろうか
窓から身を乗り出しても
遠すぎて君を見つけることができない
こっちは当分 春は来なさそうだ