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古本として出回らないような本にこそ出会いたい
打ち合わせを終えたその足で、新橋駅前の古本まつりに立ち寄った。一年ぶりくらいだろうか。
年に数回開催されるこの古本まつりでは、駅前の通称「SL広場」に30ちかい古本をあつかうテントが立ち並ぶ。
その眺めは、いきなり都心に巨大な古書店が出現したみたいでなかなか壮観なものがある。
とはいえ、本の数が多いからといって自分の欲しい本が見つかるかといえばそれはまた別の話だ。
新橋にかぎらず、こうした
「シュルレアリスムと日本」覚え書き
シュルレアリスムはむずかしい
シュルレアリスムはむずかしい。
東京の板橋区立美術館で開催中の展覧会「シュルレアリスムと日本」をみての感想です。
むずかしいと言っても、それはかならずしも難解といった意味ではありません。そうではなく、意識をもって無意識の領域を描こうとすることに本来つきまとう困難さ、とでも言えばよいでしょうか。
シュルレアリスムは、アンドレ・ブルトンの《シュルレアリスム宣言 溶
PERFECT DAYS
――ああ、この世界はなんて素晴らしいんだろう
柄にもなく、そんな感情に見舞われる瞬間がたまにある。
けれど、惜しいことにそんな感情は長続きすることはない。
あまりにあっけなく消えてしまうので、せめて口のなかでトローチを溶かすほどの時間であればなどと思ったりする。
それでも、そのときおぼえた感情は自分のうちにたくわえられ、人生をすこしだけ前へと押し出す推進力となる。
――つい先だっての話。
2:21.8の“絶対”
日曜日。雨のなか銀座に出る。
ひとくちに銀座に出るといっても、その時々で理由はさまざまだ。その日銀座に行ったのは、場外馬券売り場でジャパンカップの馬券を買うためだった。
大きなレースがつづく秋は、春と並んで競馬の“シーズン”である。とはいえ、ここのところ仕事が忙しく、週末に出勤することも多かったためSNSで結果をチェックするくらいでまったくといってよいほど追えていない。思えば、馬券を買うのすら
【読書感想文】イ・ドウ『私書箱110号の郵便物』
どうも人間というのは忘れっぽい生きものらしい。朝晩ちょっと肌寒くなっただけで、もう今年の夏のいつまでもだらだら暑かった日々のことを忘れそうになる。
ここ日本には四季というものがありまして、なんて言っていたのもいまはむかし。ここ最近は一年の半分近くを夏が占め、そこに春と秋とが申し訳程度にこびりついているといった印象だ。
じっさいこの夏をふりかえると、やたら猛暑とゲリラ豪雨ばかりが思い出される。長