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詩 大切なものたち 記憶の中で

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形象化と現実は、少しズレていて、本当の出来事より印象に残ったりします。
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2021年3月の記事一覧

詩)昭和歌謡のうたに浸ってしまう一日 ああもう一度人生があったなら

詩)昭和歌謡のうたに浸ってしまう一日 ああもう一度人生があったなら

女にとっていちばん惚れてはいけない男
そんな男になってみたかった
女のいうことを全部聞いて
明日のことなんか考えず
今日だけに生きる そんな男に

あなたの過去など 知りたくないの
済んでしまったことはしかたがないじゃないの
(知りたくないの)

でも、うまくはいかない
男はどうしても別の女と出会ってしまうのだ

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詩)小さな花へ 見えないことが見える

詩)小さな花へ 見えないことが見える

今日が終わった合図に小さな花を見つけよう 

〈前向きな思考でいたいですが、昨日今日はちょっと難しいです。なにをどうしたらよいのか…〉

道端で咲く小さな花々 寒い時期でも直径1ミリくらいの小さな花が咲いている

〈息が出来ない〉〈息が出来ない〉〈息が出来ない〉BLACKLIVEMATTERS

小さな花はどれもこれもかわいい でも雑草 振り向かれないんですが。

〈この10年間、復興計画がいびつ

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詩)腕枕

詩)腕枕

腕枕でたまには
一緒に 
重さを感じながら
寝息を感じながら
今日のことを思い
昨日の痛みを忘れ
明日また元に戻れるように

腕枕でたまには
寝っ転がる
近づく
ちょっと触る
顔が近づく
髪の香り
眠そう

腕枕でたまには
さっき飲んだ
地酒の甘さ
いや
白い手の
甲の


腕枕でたまには
いろいろ
あった
悪いのは
いつも僕
その
重さ

腕枕でたまには
感じる
ことが
出来たら
ここまで

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詩)げんちゃんタクシーはもう運行不能です

詩)げんちゃんタクシーはもう運行不能です

老夫婦の姿に見入ることが最近よくあります
夫のスマホに覗きこむ妻さんとか 
マスクしているので目だけで話している姿とか
二人で公園のベンチに腰掛けて真っ直ぐ前をみてじっとしている姿とか
電車の中で学生たちに挟まれて 黙ってじっと佇む姿とか

あの頃
まだお互い独身で 
川崎で遅くなって 寮の門限ギリギリで
バスじゃ間に合わない
それで僕のチャリに二人乗り
げんちゃんタクシー出発!
川崎駅から武蔵中

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詩)鎌倉まんだら堂の少し焦げた玉子焼き

詩)鎌倉まんだら堂の少し焦げた玉子焼き

平日に休みをとって花見に行ってきた と喜しそうに
娘からLINEがきた 夫さんは土日休みじゃないからね
有給とってお弁当をもって   
おいなりさん初めてつくった!と、うれしそうな報告 

ずっと年をとってから
あの時 お弁当持って花見にいったねえなんて
思い出すよ
きっと
その宝石だった瞬間

想い出す。
初めてのデート
春の鎌倉のまんだら堂
鎌倉駅からバスに乗って。
ちょっと曇っていて
天気が

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詩)黄金のあぜ道

詩)黄金のあぜ道

大阪はかつて 
摂津 河内 和泉に分かれ
その和泉と呼ばれていたところで
ぼくは小学校に通いました
田んぼのあぜ道がそのまま舗装されたような町でした。

道草しながら帰り道
道の真ん中に蛇がとぐろを巻いて
「おいでおいで」をしていました
田んぼには小さな「カブトガニ」がいて
飽きもせず いつまでも見ていました
肥溜めの横を通るとき いつも緊張しました。
雨が降った翌日
道に飛び出した蛙たちがぺちゃ

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詩)青葡萄 詩人の魂

詩)青葡萄 詩人の魂

朝日を浴びて 後ろに束ねた 黒髪が艶々と
僕の前には 地味な黒い衣装をまとった人が立っていた
指はすこし太く 大きな眼  美しい人だと思った 

夕日の中で去ってしまった人の影 時の流れよ 
松林で待ち侘びる 人よ 風よ
<こうやって 何かに追われるように 速足で歩くのはなぜだろう>

昨日 英単語の本を持った女学生が 隣で本を開いて 
少しすると 電車の揺れが心地よいのか 眠ってしまった。
その

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詩)伊東温泉の銭湯 小川布袋の湯 最高の人生とは

詩)伊東温泉の銭湯 小川布袋の湯 最高の人生とは

それは某有名リゾートホテルから徒歩五分のところにある銭湯 小川布袋の湯

まだ陽も明るい午後二時過ぎ
どっこいしょと地元の人たちがやってくる
地元民に混じって この時間に風呂に入れる 
少し歩き疲れた足 もう足が銭湯を求めている
1人250円なり。

タオルはなくても大丈夫だよ
ここにあるよと
すらっとした初老の白髪の爺さんが教えてくれた。齢75くらいだろうか 
タオルをありがたくお借りして 入る

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詩)星の王子さまが大人になったら

詩)星の王子さまが大人になったら

警視庁の女性警視が大人になった星の王子さまに尋問した。
「現住所は?」
「小惑星bの612号です」

それは 見えない星です。
見えないものを見るためには
見えるものを見ることを犠牲にしなければなりません
なんびゃくまんもの星のどれかに
さいている花
肉眼では見えない星です。

空を飛べると考えたことはありますか
高度4300メートル
空から人間界の嫉妬やら変なものを見つめて
人間のしあわせは囲い

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詩)橋の影 それは男と女の

詩)橋の影 それは男と女の

橋を渡っていくと
影がついて来る
どうしたんだい?
橋の下では 
右側に寒そうな海が 
左側にはいま陽が昇り始めたほのかに明るい景色があった
影は橋の真ん中までついてきて
小首をかしげる
さあどうするの と言わんばかりに

橋の真ん中で
このまま 渡ろうか
引きかえそうか 確かに 悩んでいた。
影はVの字に折れ曲がり
長々と橋によりかかる

どうしよう?
影に聞いた。
悩んでいるんだ。
このまま渡

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詩)四月になると

詩)四月になると

四月になると
ひとみには小さなイスと
ランドセル

きっと晴れていて
タンポポも咲いていて
春告鳥が「ほけほけほけきょ」と練習を始めていて
つくしんぼもちょろちょろ生えてきて

いややっぱり雨かな
赤い傘さして
黄色いながぐつ
みんなと手をつないで
リスがひょっこりのぞきに来たりして

いいな
これからが一番楽しくて
ぼくは終わっちゃったから しょうがないけど
もう一度ランドセル背負って
行きたい

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