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朝日を浴びて 後ろに束ねた 黒髪が艶々と
僕の前には 地味な黒い衣装をまとった人が立っていた
指はすこし太く 大きな眼  美しい人だと思った 

夕日の中で去ってしまった人の影 時の流れよ 
松林で待ち侘びる 人よ 風よ
<こうやって 何かに追われるように 速足で歩くのはなぜだろう>

昨日 英単語の本を持った女学生が 隣で本を開いて 
少しすると 電車の揺れが心地よいのか 眠ってしまった。
その一瞬 微香がした 大人になる ほんの前の。

今日 しばらく会っていない友人に メッセージを送った
考えてみれば お互い 30年近く会っていないのに
最近 急に会いたくなって。 こんな時代だから。

明日 口ずさむ 青葡萄 
あれは自然の情景か 祖国への想いなのか その想いは 僕の心をかき乱す            奪われた 詩人の魂  それは今 在処(ありか)をさまよう。

청포도  이육사  青葡萄  李陸史
내 고장 칠월은
청포도가 익어가는 시절
わがふるさとの七月は
たわわの房の葡萄の季節
이 마을 전설이 주저리주저리 열리고
먼데 하늘이 꿈꾸며 알알이 들어와 박혀
ふるさとの伝説は一粒一粒に実を結び
つぶらな実に遠い空の夢を宿す
하늘 밑 푸른 바다가 가슴을 열고
흰 돛단배가 곱게 밀려서 오면
空の下の青海原は胸を開き
白い帆船が滑るように訪れると
내가 바라는 손님은 고달픈 몸으로
청포(清泡)를 입고 찾아온다고 했으니
待ち侘びる人は船旅にやつれ
青袍(あおごろも)をまとって訪れるという
내 그를 맞아 이 포도를 따 먹으면
두 손은 함뿍 적셔도 좋으련
待ち人を迎えて葡萄を摘めば
両の手のしとどに濡れるも厭わず
아이야, 우리 식탁엔 은쟁반에
하이얀 모시 수건을 마련해 두렴.
童(わらべ)よ われらが食卓に銀の皿
白い苧(からむし)のナプキンの支度を


2022年に詩集を発行いたしました。サポートいただいた方には贈呈します