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詩)橋の影 それは男と女の

橋を渡っていくと
影がついて来る
どうしたんだい?
橋の下では 
右側に寒そうな海が 
左側にはいま陽が昇り始めたほのかに明るい景色があった
影は橋の真ん中までついてきて
小首をかしげる
さあどうするの と言わんばかりに

橋の真ん中で
このまま 渡ろうか
引きかえそうか 確かに 悩んでいた。
影はVの字に折れ曲がり
長々と橋によりかかる

どうしよう?
影に聞いた。
悩んでいるんだ。
このまま渡ってしまおうか
どうしたらいいか
影は答えない 影なんだから
そりゃそうだね。 独り言を言って
橋の上にあった小石を蹴った
それを合図にしたかのように
左側の陽が高々と上がってきた

影はとても短くなり
背丈よりぐっと小さくなった
寒そうな右側の海には
寒そうな山々の影に
細い溝のような
何かが光り

橋を渡ることにした。
渡れと言われたわけではないし
渡らなくてもよかったかもしれない
もう忘れたいのかもしれないし
忘れてしまった思い出をもう一度
呼び戻したかったのかもしれない

橋を渡っていくと
影はもう ついて来なかった
そうか  


橋 納得して
橋 納得していない 


女と
男の


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