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詩)鎌倉まんだら堂の少し焦げた玉子焼き

平日に休みをとって花見に行ってきた と喜しそうに
娘からLINEがきた 夫さんは土日休みじゃないからね
有給とってお弁当をもって   
おいなりさん初めてつくった!と、うれしそうな報告 

ずっと年をとってから
あの時 お弁当持って花見にいったねえなんて
思い出すよ
きっと
その宝石だった瞬間

想い出す。
初めてのデート
春の鎌倉のまんだら堂
鎌倉駅からバスに乗って。
ちょっと曇っていて
天気がいいとは言えなかったけれど
バスの揺れと
触れる手と

鎌倉の原風景 石の洞窟の並ぶ
ちょっと殺風景なところで
彼女のお弁当を広げた
玉子焼きがちょっと焦げた とか
おいなり少し味が薄いでしょとか
曼珠沙華がまっ赤に咲くなかで
他には誰もいない
奇跡のような 二人だけの世界

 今日 玉子焼き焦げたって言ってたの覚えてる?って聞いたら
それだけはちゃんと覚えてるって

ふ~ん そうなんだ。
あのまんまなんだね。


焦げた玉子焼き
ちょっとしょっぱい
ちょっと
幸せな
記憶


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