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#建設現場
第73話 「働き方改悪」VS鍋元さん
「働き方改革じゃなくて、働き方改悪だろ! 政治家とか官僚とかって馬鹿じゃねえか!」
「ねえ、大丈夫?」
鍋元洋司は、朝起きていきなり、妻の鍋元衣子から心配そうに声を掛けられた。
「寝言で得体の知れない文句を言っていたわよ。政治家とかって何?
変なことに巻き込まれてない?」
衣子は怪訝そうな顔をしている。
「大丈夫だよ。何でもない」
「ねえ、本当のことを言ってよ。この工事はすごいお金が動いて
ゲンバノミライ(仮)第50話 時代遅れの朝子さん
「こんにちは。注文の品をお届けにあがりました」
最後の品が来た。予定よりも少し遅い。急いで袋詰めをやらないと間に合わない。
「はーい! 向こうの会議室に運んでください。一緒に行きますね」
この街の復興事業を一手に担うコーポレーティッド・ジョイントベンチャー(CJV)で事務職員として働く明石朝子は、大きな声で返事をして立ち上がると、配達に来た酒屋の平川哲也と一緒に会議室へと急いだ。
今日の夕方、全
ゲンバノミライ(仮)第28話 境界線上の森田社長
ようやく最上階まで立ち上がってきた。設備や内装の工事はこれからなので完成にはまだ時間はかかる。最初の1棟ができても、周辺は更地のまま。だが、復興に進んでいることが見えてきただけでも大きな進歩だ。
森田真知子は、復興プロジェクトを包括的に手掛けるコーポレーティッド・ジョイントベンチャー(CJV)の下請企業で社長をしている。3代目続く小さな総合建設業の会社として若くして家業を継いだ。社長としての肩書
ゲンバノミライ(仮) 第3話 休日の西野所長
土曜日の夕方、西野忠夫の携帯電話が鳴った。
久しぶりに土曜休みをとって、現場から家に戻り、家族と街に出かけていた。隣にいる高校卒業を間近に控えた娘の手には、2時間悩んだ末にようやく決めた入学式用フォーマルコートが包まれた紙袋が揺らめいている。穏やかな春の日。買い物を済ませて、これから食事に向かうタイミングだった。
B工区を任せている高崎直人の名前が表示されている。
通常であれば、連絡調整アプ