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【読書感想文】芥川龍之介「鼻」

こんばんは~
先週書いた読書感想文が、思いのほか好評で湧いた男、小栗義樹です!

そうなんですよ! 昨日も少し書きましたけど、先週書いた、夏目漱石の「こころ」を題材にした読書感想文、これが思いのほか好評だったんですよ!

嬉しいですね(笑) 読んで下さった皆様、本当にありがとうございます!

スキは沢山つくし、コメントやお問合わせも頂けたし、想像以上の反応だったのでビックリしました。

今、完全に味をしめています(笑) この流れ、読書感想文を書くしかないだろうと思ってます(笑)

お問合わせを頂きました。

この記事を読んで、こころを読んでみようと思いました。他にも紹介してほしいです。

要約するとこんな感じです。

お問合わせ、コメントによるリクエストには、なるべく応えようでおなじみの僕です。当然、今回のリクエストにもしっかり答えていきます。

題材は悩みました。お問合わせをくれた方とも、少しだけやり取りさせて頂きました。

そんな中、今回は「鼻」です。こちらは、芥川龍之介が書いた短編です。芥川龍之介の出世作と言われるこの「鼻」 今日は、こちらの作品を使って読書感想文を書いていこうと思います!

実は僕、夏目漱石よりも芥川龍之介の方が好きです。どちらも好きなんですけど、どちらか選べと言われれば、芥川龍之介の方がいい。何故かというと、芥川龍之介の方が琴線を刺激してくるからです。これは好みの問題かもしれません。僕からすれば、確実に・思いっきり・激しく、僕の琴線を揺らしてきます。

芥川龍之介は、生涯で沢山の短編を書き、そのほとんどが評価された作家です。代表的なところで言えば「羅生門」「鼻」「地獄変」、僕が好きなところで言うと「蜜柑」「秋」なんかがあります。晩年の作品では「河童」とかが有名でしょうか。

何を題材にするかはすごく悩みました。なにせ、嫌いな作品が1つもないのですから。

多くの作品の中で「鼻」を選んだ理由は、やはり好きな作品だったからということと、この作品が「こころ」の後に扱う題材として、100点だろうと思ったからです。

芥川龍之介は、夏目漱石に見いだされて人気作家になった人です。晩年の夏目漱石門下に入り、夏目漱石に「次の時代の名作家は君だ」と言わしめた男。そんな夏目漱石が、芥川龍之介の才能を見出した作品、それこそがこの「鼻」なのです。

こころは、明治から大正への移り変わりを物語に落とし込んだ最高の作品です。夏目漱石は、時代を写したり、時代を切り取ったり、その時代を生きた人を描写したり、そんな難しいことを完璧にやってのけた作家だと思います。夏目漱石の最大の能力は、時代を正確に読み取ることだと思っています。その夏目漱石が、次の時代は君だと言い、その作品を絶賛された人こそ、芥川龍之介なのです。

「鼻」という作品は、鼻が長いお坊さんの話です。そのお坊さんは周囲の人から、鼻をいじられていつも笑われています。弟子に、鼻を箸でつまんでもらわないと汁物が飲めません。鼻がお椀に入って、汁物に浸っちゃいますからね。ある日弟子が、そのお坊さんの鼻を短くする方法を聞き、当人に伝えます。その方法を実践したお坊さんの鼻は、少しだけ長い程度にまで縮むのです。お坊さんは、これでもう笑われることはないと思いました。ところが、鼻が短くなったお坊さんを見た人々は、今まで以上にひそひそ話を始め、くすくすと笑いだします。お坊さんはビックリしました。なぜ?と思ったのでした。しばらくすると、お坊さんの鼻は元の長さに戻りました。お坊さんは安心しました。これでもう、ひそひそとバカにされなくて済むと。

そういうお話です。

どうです?嫌な話でしょ?

僕が初めてこの作品を読んだのは、高校生の時でした。そこから何度も読み直しています。夏目漱石の「こころ」とは違い、すぐに共感し、すぐに素晴らしい作品だと認識しました。

この話には、コンプレックス・人の醜さ・憤りなどの要素が詰まっています。誰もが抱えているであろうコンプレックスと、それを指摘する容赦ない人間の反応が、きれいかつ的確に描写されています。

僕は夏目漱石のこころを、自己啓発というジャンルで紹介させてもらいました。それに対し芥川龍之介の「鼻」は、コミュニケーションというジャンルに位置付けています。

芥川龍之介の作品には、対人関係や人の性格、人間らしさが詰まっていると思います。特に「鼻」は、いじめという問題のど真ん中を突いた、画期的な作品です。

僕がこの作品に共感し、大きな愛着を持っている理由は、幼少の頃に経験したいじめと同じものを感じるからです。僕が、過去の自分の体験を、鼻になぞらえて小説にするのなら、そのタイトルは「腹」とか「デブ」になるでしょう。

芥川龍之介も夏目漱石と同じで、人間を描写するのが異常に上手いと思います。ただ、芥川龍之介の場合は、同じ人の描写でも圧倒的に暗い部分、醜い部分を描写することに長けています。だからこそ夏目漱石よりも、読み手を共感させやすいのです。

僕はこの「鼻」を読んで、本当に救われました。僕だけじゃないと思ったんです。世の中には多くのコンプレックスがあり、そのコンプレックスのせいで、他者に苦しめられている人がいる。人間は所詮、そんな風に変を突かないと生きていけなくて、そういう人間が社会を形成しているんだと思うと、世の中を素晴らしいものだと思う必要はない。当時、そんな事を思いました。人間は弱いから、無理に立派でいようと思わないでもいいと思えたんです。肩の力が抜けた瞬間でした。思春期の終わり間近に、こんな作品に出合えたことを本当にうれしく思ったし、自分の今後のライフスタイルを決める、素晴らしい教材に巡り合えたと思ったんです。

鼻には人が纏わりついています。それも、むき出しになった人の本能がです。世界中にある、沢山の明るい作品とバランスを取るかのように、人間にはこういう嫌な一面だってあるじゃないかという問題提起を担い続けています。

風化するわけないんですよね。だって今でも、こうした問題は起こり続けているじゃないですか?

人が社会を形成し、集団で生活しようとすれば、変を突くという行動は必ず生まれます。鼻は、そういう社会の歪さを物語に落とし込み、読み手にある種の不快感を与えることで、人間の至らない部分・社会の灰汁みたいなものを疑似体験させてくれます。その不快な部分こそが、社会における自分のポジションを確認させ、自分を律しようという気持ちを呼び起こしてくれるのかもしれません。

素晴らしい作品なので読んでみてほしいです。短編なのでとても読みやすいと思います。人間を観察し、人間について考えようと思わせてくれるお話、それが「鼻」です。弱さや醜さに目を向けることで、その後の人生が大きく変化します。間違いないです。

ぜひお近くの図書館、古本屋で、鼻を探してみてください。



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