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『しらなみのかげ』

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こは、日々つらつらと念ひしことのとみに濫れてはすぎゆくに、浦によする沖つ白波の八重をりて、ささなみの下にあまたうたかたの浮かぶがごとく、そのかたちの成りては千々に消ゆるさまを、よ…
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#日記

【しらなみのかげ】没落しようと何度でも #32

【しらなみのかげ】没落しようと何度でも #32

この雑記帳「しらなみのかげ」を書くのも、随分と久しぶりのことになる。

過去のアルバムを見返すように、自分のnoteアカウントを開いてみる。最後の更新は一昨年の夏だ。『シン・ウルトラマン』を「新しき神話」として読み解く文章である。2022年7月22日というその日付を見て、この後間も無く、当時世界を覆っていた新型コロナウイルスに罹患したことを思い出す。目立った症状としては、二、三日の間、高熱と激しい

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【しらなみのかげ】ウルトラマンという新しき「神話」 #31

【しらなみのかげ】ウルトラマンという新しき「神話」 #31

これは、書きさして放置していた稿を徐ろに思い出し、書き上げたものである。


文月になって三日のことである。母方の御墓参りに行って親族と食事をした後、遅ればせながら庵野秀明が手掛け、樋口真嗣が監督となった『シン・ウルトラマン』を観に行った。


『シン・ウルトラマン』。毀誉褒貶相半ばするこの作品であるが、結論から言えば私は或る面においてとても良いと感じた。その余りに軽妙な、時に軽薄にすら思

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【しらなみのかげ】思想としての保守主義とは何か #28

【しらなみのかげ】思想としての保守主義とは何か #28

よく言われる話がある。
それは、保守主義には固有の理想や理念がない、ということである。


例えば、その対極である共産主義には、私有財産を廃止し、生産手段を社会化することで「能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」社会を実現するという、これ以上無い程の明確な理想がある。それよりは広義に用いられる概念である社会主義も又、私有財産の廃止乃至は制限により多かれ少なかれ生産手段の社会的共有を実現すると

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【しらなみのかげ】誕生日あたりのことども #27

毎日更新を始めると言いつつ、三日も更新をサボってしまった。
というのも、三日はかなりイレギュラーな日程を送っていたのである。


六月四日、僕は三十二歳の誕生日を迎え、ビストロとバーに行って親しい友人達に祝って頂いたのだが、その日は何と昼下がりから夕方に二、三時間しか寝ていなかった。というのも、その前日の夜からずっとTwitterのスペースにて、十五、六時間位、次々とやってくる人達と徹夜で喋り

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【しらなみのかげ】日本近代の正統としてのキリスト教 #26

【しらなみのかげ】日本近代の正統としてのキリスト教 #26

河上徹太郎の『日本のアウトサイダー』(中公文庫、1978)を読んだ。何でこの書をもっと前に読まなかったのか、と後悔させられた。蓋し、魂を震わせてくれた本物の名著である。この書の周囲を巡って、再び様々なことを考える機会があるだろう。そう思わせられた。


併し今や、河上徹太郎という名前を識っている人も少なくなってしまったのではないか。今では読まれたり参照されたりすることも少なくなってしまったが、

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【しらなみのかげ】皆もすなる日記といふものも、私もしてみむとてするなり #25

【しらなみのかげ】皆もすなる日記といふものも、私もしてみむとてするなり #25

今日は六月の一日である。更新するのは日付が変わって二日になるが、その様な厳密な時刻に関係無く、私は眠りに就いて起きた時に初めて日付が変わるという認識で生きている。大凡は、朝になり太陽が完全に上ってしまう時刻位まではその日の内であると見ている。抑も零時よりも前に寝ることなど千に一つ程で、後は勉強に勤しんだり一人酒を飲んだり酒場で歓談していたりするのだから、こうした認識の方が生活に合っている。だから、

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【しらなみのかげ】鋼鉄の嵐の起こる前で−世界の「19世紀化」について #24

【しらなみのかげ】鋼鉄の嵐の起こる前で−世界の「19世紀化」について #24

全ては蛮行により塗り替えられた−この日より、世界秩序の全てが変わった。



2月24日、ロシアは突如、ウクライナに侵攻した。

ロシアが、ウクライナ東部にある親露派分離独立派のドネツク人民共和国ならびにルガンスク人民共和国の独立を21日に「承認」してから間も無い出来事であった。



両共和国共に、2014年にロシアがクリミアを一方的に併合した折に、ドンバス地方の武装勢力が一方的に独立を宣言

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【しらなみのかげ】 頭でっかちな「世間知らず」達の暴走 #23

【しらなみのかげ】 頭でっかちな「世間知らず」達の暴走 #23

いつの日からか、私はジャパニーズ・ヒップホップが大好きになった。特に、ギャングスター・ラップが大好きになった。



元々音楽好きで、あらゆるジャンルを摘み食いしながら聴いてきたつもりだが、このジャンルが取り分け好きになっていった時期があった。



昼は大学で授業を受けたり研究に勤しんだりし、週の内二、三日は夜の街で働いて日銭を稼ぐ生活を長く続けていた最後の頃だったと思う。大学の籍が無くなっ

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【しらなみのかげ】 北京2022年五輪開会式を観て #22

【しらなみのかげ】 北京2022年五輪開会式を観て #22

(これは二日前の2月4日に書き掛けたものに加筆・推敲を加えたものです。)



今日は立春であり、冬季北京オリンピックの開会式の日である。

実の所、開会式より二日前から幾つかの競技は予選が始まっている。男子フィギュアスケートの宇野昌磨選手が団体予選で自己ベストを更新したという速報を目にしたのは、つい昼頃のことであり、その時既に五輪が始まっていることに気付かされた。



昨年の東京オリンピッ

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【しらなみのかげ】 節分−円環的な時を分節すること  #21

【しらなみのかげ】 節分−円環的な時を分節すること #21

(この記事は2月3日に執筆したものですが、仕事の都合で一昨日出せず、昨日から今日に掛けて推敲・加筆したものです)

今日は節分である。



私の住む京都では、吉田神社、壬生寺、そして八坂神社などで節分祭が行われる。今年は新型コロナウイルスのオミクロン株が大流行を見せている為に、今年は多くの寺社では節分祭を相当に制限して行っているようである。追儺の祭が、まさに疫病によって阻まれるというのは不幸な

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【しらなみのかげ】 戦いにあっても、いつも心にオアシスを #20

【しらなみのかげ】 戦いにあっても、いつも心にオアシスを #20





此の所、我が身に降り掛かってきた「戦い」のことしか考えられなくなっている。



「戦い」に如何に勝つのかを考えている時のみ、アドレナリンが次々と脳内で放出されていることが分かる。私は勿論、戦争になど行ったことがないが、戦闘状態に於ける一種の興奮状態の如きものはやはりあるのだろうと今の我が状態を省みるに思わされる。それ以外の時はどうかと言えば、恰も軽度の鬱症状の様な状態になってしまう

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【しらなみのかげ】 今、〈解釈権の独占〉へとひた走るのは誰か  #19

【しらなみのかげ】 今、〈解釈権の独占〉へとひた走るのは誰か #19

昨日(正確には30日付の深夜未明)に上げた「「オープンレター」講解」は、15000字に及ぶ長文であるにも拘らず、お蔭様で多くの人に読んで頂けた。御読み頂きました方々には改めまして厚く御礼申し上げます。





物議を醸し続けている「オープンレター:女性差別的文化を脱するために」に対して逐文解釈的に内在的読解を施すという試みは恐らく初めてだろう。この試みにおいて、呉座勇一氏の名前を連呼し、呉座

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【しらなみのかげ】 下品なことを言う自由について #18

【しらなみのかげ】 下品なことを言う自由について #18

皆さんはシャルリ・エブド事件を覚えているだろうか。



フランス、そして世界を震撼させた、あの大事件である。



2015年1月7日午前、フランスのパリ11区にある週間風刺新聞『シャルリ・エブド』本社を、覆面をして武装したアルジェリア系フランス人のサイード・クアシとシェリフ・クアシの兄弟が「アッラーフ・アクバル」「預言者の復讐だ」などと叫びながら襲撃し、編集長、風刺漫画家、コラムニスト、警

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【しらなみのかげ】  単にそのようである世界をまずは認めること #17

【しらなみのかげ】 単にそのようである世界をまずは認めること #17

(二日前、1月13日に書いたテクストです。夜は仕事をし、その後は降り積もる雪の中、行きつけのバーに挨拶に行ったら朝まで飲んでしまい、昨日少しづつ改稿や校正をしていたら、出すのが本日になってしまいました。)



私は最近、人生を生きていくに当たって、「単にそのようである世界をまずは認めること」が何よりも重要ではないかと考えている。



嘗て、福田恆存はその有名な『私の幸福論』の最初の章「美醜

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