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何度も読み返したい素敵な文章の数々 vol.3

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#コラム

失敗は成功の素というけれど

失敗は成功の素というけれど

失敗すること、ミスをすることが、わたしは怖い。

誰しもある程度の怖さはあると思うけれど、たぶん、わたしのそれは度を超えているのかもしれないな、と思うことがある。

これは今に始まったことではない。わたしは、かなり幼いころから失敗が怖かった。

「やってしまった」と気づいたときの体の冷えかたは尋常ではないし、食欲もなくなるし、呼吸も浅くなってしまう。

そうしたこともあって、わたしははじめての職場

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好き嫌いはあったほうがいい

好き嫌いはあったほうがいい

小さな頃から食べ物の好き嫌いがないと公言している子どもだった。

好き嫌いについて聞かれると、「ないよ!」と得意げに答えていた。すると大概、大人は驚いてわたしを褒める。「えらいわね」に続いて、うちの子なんて野菜を食べなくてね、と言われることもあって、「大変なんだねー」みたいなわかった風の共感を寄せたりする、たぶん変な子どもでもあった。

10〜20代になっても「好き嫌いがない宣言」は続いた。褒めら

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「秘密」の価値

「秘密」の価値

時々、「本当に秘密主義だよねぇ」と諦めたような口調で言われる。

いつもオープンに話しているように見えて、一番大切なことだけ巧みにかわして表に出さない私の癖は、わかる人にはわかってしまう。

それでも無理やり聞いてきたりしないのが、私のまわりはみんな大人だなあ、と思うところでもある。

***

昔は比較的あれこれ話す子だったような気がするのだけど、年を重ねるごとに自分の中だけで留めることが多くな

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まるで、地球の裏側からきたような。

まるで、地球の裏側からきたような。

恋愛体質な人と恋愛の話をするのが苦手なのは、哀れみの目で見られることが面倒だ、という理由が大きいように思う。

「(私みたいに)すごく好きになれる人が現れるといいね!きっといるよ!」

という励ましの言葉も、30年近く言われ慣れるともう反論する気も起きない。

恋愛体質であることは、そんなに偉いものなのだろうか。
人生において絶対的な正義だと、無邪気に信じるべきものなのだろうか。

「好き」より「

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晩婚家庭に生まれて

晩婚家庭に生まれて

働き方や生き方が多様になって、ある程度歳を重ねてから結婚する人も増えてきた。

実際、私はもういい年齢で、大学の同級生たちには「きみに結婚願望なんてあるの? 絶対ないでしょ」と笑われる。こういう選択肢を臆せず選べる時代になった恩恵に甘えて、徒らに日々を過ごしている。

人生訓を述べる資格はない。でも、「今後、子どもを持ちたいな」という人に向けて、ある記録を残しておこうと思う。

晩婚家

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「特定の誰か」に向けて書いてみる

「特定の誰か」に向けて書いてみる

元クラシコムの長谷川さんが、こんなnoteを書いていた。

そのnoteでは、こんなことが書かれている。

ぼくは以前にいたクラシコムという会社で、「たったひとりに刺さるコンテンツは、きっと多くの誰かにも届く」というスタンスを教わった。そのひとりが「記事を作っている自分」ということもある。

多数の人に受け入れられているものでも、顔が特定できるほどの「あの人」だったり、とても狭い範囲の「誰

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"あなたって◯◯だよね"っていう呪い

"あなたって◯◯だよね"っていう呪い

最近出会って2回目でご飯に言った方に"かなこちゃんって、頑張りすぎちゃうところあるよね。"って言われて。

"いやー、そうなんです、自分の限界の把握とか、今しんどいですって言うのとか、苦手だったりします。"ってその時は笑顔で"てへっ"てかんじで答えたんだけど、なんか心の中ですごく疲れてしまったなぁ。

なんだかなーって思ってたら、似たような疲れ方、私前にもしたことあるなぁと思い出した。昔おつきあい

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どこかの誰かの経験談が、どこかの誰かの心に響く。

どこかの誰かの経験談が、どこかの誰かの心に響く。

基本的に私は他人への興味が薄いというか、他人と自分の間にくっきり線を引いていて、あまり悩みを人に相談したりするタイプでもない。一番身近な存在である恋人に対しても、「私は私、あなたはあなた」という考えがベースにあり、たまに周囲の人から期せずして「それ許しちゃうの?」「心が広いね」などと言われて驚くことがある。

その「私は私、あなたはあなた」精神のためか、世の中にあふれる『〇〇するための10の法則』

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考え続けること

考え続けること

ここ最近、今後の仕事のことや結婚や、将来子どもが欲しいのか/欲しくないのかということについて、しばらく考え続けていた。自分がどうしたいかを見極めたいのに、なかなか考えがまとまらなくて、「どうしようかなぁ…」と思案するばかり。答えなんて出せないんじゃないかと思うくらい、考えは進展せず、モヤモヤが続いていた。

それが不意に、自分の中でするっと決着がついた。その意識の変化があまりになめらかで、あまりに

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地下鉄の窓ガラスに映った自分

人が黒歴史としてしまい込み、蓋をしている思い出の箱をうっかり開けてしまうことがある。
例えば、ある英語が得意な人が結婚したばかりの頃のこと。当時は、奥さんとのラブラブ過ぎるエピソードをこんな風に語っていた。
「結婚前からよく妻に英文でラブレターを書いている。すると妻が、『ここがどういう意味かわからないんだけど……』と質問して来て、それに答えてあげる時間が楽しい」

それから月日が流れ、何かの拍子に

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トドメのひと言

トドメのひと言

ずいぶん前に友だちから聞いた話です。

彼女が勤め先を辞めて、失業給付を受けながら次の仕事を探していたときのこと。
失業認定を受けるには定期的にハローワークに出向く必要があり、その日時はハローワーク側から指定されます。
彼女が決められた時間に出かけていくと、ハローワーク内は大勢の人でごった返していた。
PCのトラブルがあって、ある時間帯の人たちのデータの処理が滞ってしまい、解決しないうちに次の時間

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相手を自由にすることば

相手を自由にすることば

敬語は、慣れてしまうととても楽なものだ。

もちろん相手への敬意を示すものではあるのだけれど「敬語を使っていれば間違いない」という気持ちから敬語を使っていることが、わたしはよくあった。「逃げの敬語」というか「消極的な敬語」みたいな感じだ。

それもあって、相手が年下だったり「必ず敬語を使わなくてもいい」という状況のときも、どうも敬語をずるずる使ってしまっていた。

敬語を使うこと自体は悪いことでは

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ガマンの鎧を着ている人の話

ガマンの鎧を着ている人の話

自分が「ガマンの鎧を着た人」だと気がついたのは30歳だった。

もちろん生きていれば誰もがガマンをした経験はあるし、「わたしは誰よりもガマンをしてきたのよ!」と不幸自慢をしたいわけではない。むしろ他人から見たら「さんざん好き勝手にやってきたじゃないか」と言われるくらいだと思う。

自分では選べないような家庭環境や経済状況でガマンすることは少なからずあったし、生まれ持った見た目や体質で他人を羨ましい

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なぜ、最近はみんな「おすすめは?」と言うのか、考えてみました

なぜ、最近はみんな「おすすめは?」と言うのか、考えてみました

飲食店で働いている人はみなさんご存じかと思いますが、今、お客様ってみんな「おすすめは何ですか?」って質問してくるんですね。

「旬のお魚を扱っているお寿司屋さん」なら「今はやっぱりブリだね」とかあるかもしれないのですが、普通、飲食店は「どのメニューも自信を持っておすすめ」なんです。

「うーん、カツカレーはあんまりおすすめじゃないなあ。だったら、きつねうどんの方がおすすめですよ」なんてことはありえ

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