なぜ、最近はみんな「おすすめは?」と言うのか、考えてみました
飲食店で働いている人はみなさんご存じかと思いますが、今、お客様ってみんな「おすすめは何ですか?」って質問してくるんですね。
「旬のお魚を扱っているお寿司屋さん」なら「今はやっぱりブリだね」とかあるかもしれないのですが、普通、飲食店は「どのメニューも自信を持っておすすめ」なんです。
「うーん、カツカレーはあんまりおすすめじゃないなあ。だったら、きつねうどんの方がおすすめですよ」なんてことはありえないんです。
でも「おすすめは?」って言われるんです。
これ、ほんとここ5年、あるいは7、8年の現象だと思うんですね。昔はこんな会話、いっさいなかったんです。
これ、やっぱり「インターネット」が原因ですよね。
まあとにかく「おすすめ」が出てきますから。
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僕、一度、キンドルに手を出したんですけど、どうも「自分が読みたい本」に出会えなくて、やめてしまったんですね。
僕としては、本屋さんにいって、棚を眺めて、「あ、この本、面白そうだなあ」って感じで手に取る感じで、本を選びたいんですね。
でも、キンドルってそんな感じじゃないんです。
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あるいはネットフリックス的なものに入会して、映画はダウンロードして観る方が「レンタルショップにDVDを返しに行かなくていいから」便利なのはわかっているんです。
でも、TSUTAYAで棚を見て、「あ、これ観てみようかな」っていうのができないから、ネットフリックス的なのには入会しないんですね。
アップルミュージック的なサービスも同じです。
僕、レコード屋に行って、ぼんやりと棚を見て、「お、これ!」っていうのが好きなんです。
「誰かのオススメの映画や本や音楽」って、参考にはするけど、あんまりしっくり来ないんです。自分で選び取りたいんです。
でも、今はお店で本当に「おすすめは?」って言われるんです。
これに関しては「まあ世代が違うんだなあ。こういうことって時代で変わっていくからなあ。こんな図式かなあ」って考えているんですね。
【大昔】その季節に収穫できる食材は決まってて、選ぶことなんて出来なかった
【ちょっと前】流通や商品開発が進み、大量の食材や料理があふれ、そこから「自分ならではのチョイス」で選ぶのがお洒落になった
【今】もう世界中のありとあらゆるモノが手に入るようになって選びきれないから、DJやソムリエといった専門家に選んでもらうのが「確実に効率よく満足が得られる」から、「おすすめ」してもらう
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でも、「それだけじゃないなあ」と感じることもありまして。
例えば、bar bossa、季節の果物のカクテルというのをやってまして、季節ごとに桃とかぶどうとかを用意して、生のジュースを作って提供しているんですね。
で、毎回、2種類、選択肢を用意しているんです。
今なら「なし」か「りんご」を用意していまして、「なしとりんご、どちらが良いですか?」ってお客様に質問してるんですね。
これでも、「おすすめは?」って言われるんです。もうしょっちゅう言われるんです。
ええと、なしかりんごの選択くらい、誰でも出来ますよね。頭の中で「どっちが今、欲しいかな?」って味を想像すればいいのですから。
でも「おすすめは?」って言うのを考えると、たぶん「おすすめされる」というのが嬉しい、楽しい、って感じているんだなということが判明しました。
たぶん、「取りに行く、選び取る、能動的な行為」より、「すすめられる、受動的な行為」が気持ちいいと感じ始めているのではと思います。
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ちなみに、この文章、僕、1週間前に書いたのですが、りょかちさんが、本当に偶然、同じテーマで書いています。りょかちさんは「決めるのに疲れている」と分析しています。なるほどです。
お酒やバーについての僕の本です。『バーのマスターはなぜネクタイをしているのか?』 https://goo.gl/QGdp48
bar bossaに行ってみたいと思ってくれている方に「bar bossaってこんなお店です」という文章を書きました。
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