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毎日読書メモ

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2022年8月の記事一覧

ウポポイ(民族共生象徴空間)

ウポポイ(民族共生象徴空間)

北海道マラソンに行ったついでに、白老町にあるウポポイ(民族共生象徴空間)に行って来た。アイヌ文化振興のために作られたナショナルセンターで、2020年7月から一般公開されている。アクセス的には、新千歳空港から苫小牧に出て、室蘭本線で5駅。白老は札幌~函館間の特急列車の停車駅なので、列車の本数はそこそこある(1時間に1本以上)。白老駅から徒歩10分弱。白老駅にコインロッカーあるので、旅行中でも大荷物を

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白石一文『見えないドアと鶴の空』(毎日読書メモ(398))

白石一文『見えないドアと鶴の空』(毎日読書メモ(398))

過去日記より、白石一文の初期作品の感想。

白石一文の新刊『見えないドアと鶴の空』(光文社)を読む。平たく言ってしまえば、友人同士の2人の女性と、その片方の夫がもう片方と結ばれていく、三角関係の本なのだが、読み進めていくにつれ、物語はどんどんスピリチュアルな方向へ進み、きっ君はよしもとばななか!、というような状態に。本の終わりに自分の著作全般についての作者のメッセージが書かれていて、そこには「洒落

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保坂和志『カンバセイション・ピース』(毎日読書メモ(397))

保坂和志『カンバセイション・ピース』(毎日読書メモ(397))

昔の日記から読書に関する記録を拾っている。保坂和志『カンバセイション・ピース』(新潮社、現在は河出文庫)の簡単な感想。芥川賞をとった『この人の閾』(新潮文庫)とかも結構好きだったな。『カンバセイション・ピース』と、江國香織『間宮兄弟』(小学館文庫)を続けて読んで、おお、横浜ベイスターズ小説!、と思った記憶があるのも懐かしい。権藤監督だってさ…。

通勤中の電車で保坂和志『カンバセイション・ピース』

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伊坂幸太郎『ペッパーズ・ゴースト』(毎日読書メモ(396))

伊坂幸太郎『ペッパーズ・ゴースト』(毎日読書メモ(396))

ようやく順番の回ってきた、伊坂幸太郎『ペッパーズ・ゴースト』(朝日新聞出版)を読む。書き下ろし作品。充実の読書。

図書館の本だが、元々本に挟み込んであったと思われるハガキを見返しに貼りつけてあった。自分が気になることを、良いことも悪いこともすべて盛り込んで、構築した小説ってことなのかな。そして、大きな主題はニーチェ。ニーチェはわからないな、読んだことないし、と思って読み進め、登場人物たちも、わか

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ゼイディー・スミス『直筆商の哀しみ』(毎日読書メモ(395))

ゼイディー・スミス『直筆商の哀しみ』(毎日読書メモ(395))

昔の日記をぱらぱら読んでいたら、ゼイディー・スミス『直筆商の哀しみ』という本の感想が出てきた。すごく心惹かれて読んだ様子が書いてあるのに、読んだことをまるっと忘れている衝撃。そもそも、この本購入しているのに、どこに行ってしまったんだろう? 我が家のカオスの中にあるのか、誰かにお勧めして貸したままになっているのか? 検索してみたら、残念ながら絶版になっているらしい。

職場に行く途中の電車でようやく

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舞台「エレファント・バニッシュ」@世田谷パブリックシアター

舞台「エレファント・バニッシュ」@世田谷パブリックシアター

2003年と2004年、サイモン・マクバーニー演出の演劇「エレファント・バニッシュ」が世田谷パブリックシアターで上演された。村上春樹の「象の消滅」(短編集『パン屋再襲撃』所収)と「パン屋再襲撃」(同)と「眠り」(短編集『TVピープル』所収)の3作を原案としていて、大好きな高泉淳子が出演しているので見ない選択肢はなかった。そして、ブレイク前の堺雅人に感銘を受け、吹越満もこの舞台をきっかけにソロ舞台ま

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平安寿子『もっと、わたしを』(毎日読書メモ(394))

平安寿子『もっと、わたしを』(毎日読書メモ(394))

昨日、平安寿子の本の感想文を書いた後、それよりもう少し古い時期の日記を検索して、『もっと、わたしを』(幻冬舎、のち幻冬舎文庫)の感想を発見。

図書館から電話がかかってきても「○○様が2月24日にリクエストされました本が入りました」と言うだけで(自分が電話に出ても、留守電でも同様)、本のタイトルは言わない。2ヶ月前にリクエストしたのって何の本だっけな、と思いつつ図書館に行くと、平安寿子『もっと、わ

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平安寿子の小説幾つか(毎日読書メモ(393))

平安寿子の小説幾つか(毎日読書メモ(393))

こまめに読書記録をつけていた10~15年位前、平安寿子の小説が好きで結構読んでいたな、と思い出したので、ぱっと出てきた感想を何冊か紹介したい。でも夢中で読んだのはもう少し前だったようで、一番面白いと思った『素晴らしい一日』(文藝春秋)、『グッドラックららばい』(講談社)、『なんにもうまくいかないわ』(徳間書店)あたりの感想が残っていない。残念。
2016年位から新作が出ていない模様だが最近はどうさ

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原田ひ香『ランチ酒 今日もまんぷく』(毎日読書メモ(392))

原田ひ香『ランチ酒 今日もまんぷく』(毎日読書メモ(392))

原田ひ香『ランチ酒 今日もまんぷく』(祥伝社)を読んだ。『ランチ酒』
『ランチ酒 おかわり日和』に続く、シリーズ第三作。見守り屋として、夜~朝、クライアントの家を訪れ、家事でも介護でも保育でもなく、ただ寝ずの番をする、犬森祥子が、仕事明け、帰宅して寝る前に、仕事場の近くで美味しそうな食事を提供する店を見つけ、食事を堪能し、あわせて、その食事に合った酒を少量、くいっと飲む。
クライアントは移り変わる

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木内昇『地虫鳴く』(毎日読書メモ(391))

木内昇『地虫鳴く』(毎日読書メモ(391))

木内昇『地虫鳴く』(河出書房新社、のち、『新選組裏表録 地虫鳴く』として集英社文庫)の読書メモ。

いつもながら木内昇読むには気力体力がいることである。新撰組の傍系のエピソードでした。どうしても、わたしは新撰組ものを読むと三谷幸喜の大河ドラマのキャストが頭に浮かんできてしまうので、伊東甲子太郎というと、あの俳優さんの顔が頭に浮かんできてしまうのだが、近藤・土方と袂を分かった側の心持ち、みたいなもの

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エーリヒ・ケストナー『エーミールと探偵たち』、『エーミールと三人のふたご』(毎日読書メモ(390))

エーリヒ・ケストナー『エーミールと探偵たち』、『エーミールと三人のふたご』(毎日読書メモ(390))

読書の入り口が岩波書店の児童書だったので、リンドグレン全集、「ドリトル先生」シリーズなどは何回も読んだし、エーリヒ・ケストナーも、『ふたりのロッテ』、『点子ちゃんとアントン』、『飛ぶ教室』あたりは何回も何回も読んだのに、何故か、エーミールものだけ読まないまま大人になってしまった。50歳近くなって初めて手に取って、勿論手に汗握りながら読んだ。何年に1回かは、ケストナーを読み返した方がいいと思う。死ぬ

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梨木香歩『水辺にて』(毎日読書メモ(389))

梨木香歩『水辺にて』(毎日読書メモ(389))

梨木香歩『水辺にて on the water / off the water 』(ちくま文庫)の読書メモ。新作が出ているのに気づいたら出来る限り読むようにしている作家の一人である梨木香歩。静かに息をして、肩に力を入れず、すーっと受け止めたい、そんな作家。

アーサー・ランサムへの言及から始まる、親水性の高いエッセイ。自らカヤックを買い、車の屋根に積んで全国の水辺を訪れ、漕ぐ。想像も出来ない生活だが

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池澤夏樹『スティル・ライフ』(毎日読書メモ(388))

池澤夏樹『スティル・ライフ』(毎日読書メモ(388))

前に、「わたしの本棚」というお題のタグをつけて、実家の本棚の話を書いたことがあったが(ここ)、実家で塩漬けになっていた本の中に池澤夏樹『スティル・ライフ』(中央公論社、現在は中公文庫)の初版本、しかもサイン本があったのを、家に持ってきて、三十数年ぶりに読んでみた。「スティル・ライフ」(1987年発表)と「ヤー・チャイカ」(1988年発表)の2編。「スティル・ライフ」で、1988年に芥川賞受賞。わた

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原田ひ香『三人屋』(毎日読書メモ(387))

原田ひ香『三人屋』(毎日読書メモ(387))

原田ひ香『三人屋』(実業之日本社、現在は実業之日本社文庫)を読んだ。読み始めて、あれ、この設定知っているぞ、と思ったが、大筋の物語自体は初めて読んだ。何かアンソロジーとかに入っていたかと思ったがそうでもなさそうだし、続編『サンドの女』(実業之日本社文庫)を先に読んじゃった、という訳でもない。謎は解けないまま読了。

東京郊外の街のラプンツェル商店街にある飲食店「ル・ジュール」、亡くなった父の遺した

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