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白石一文『見えないドアと鶴の空』(毎日読書メモ(398))

過去日記より、白石一文の初期作品の感想。

白石一文の新刊『見えないドアと鶴の空』(光文社)を読む。平たく言ってしまえば、友人同士の2人の女性と、その片方の夫がもう片方と結ばれていく、三角関係の本なのだが、読み進めていくにつれ、物語はどんどんスピリチュアルな方向へ進み、きっ君はよしもとばななか!、というような状態に。本の終わりに自分の著作全般についての作者のメッセージが書かれていて、そこには「洒落た会話や思わせぶりな設定で愛や苦しみ、やさしさやジョークをお手軽に書き散らしただけの小説はもう必要ありません。自分が一体何のために生まれ、生きているのかそれを真剣に一緒に考えてくれるのが本当の小説だと僕は信じています」とあるのだが、確かにこの本の中でも、主人公の男は必死で自分は何のために生まれ、今こうして生きているのかを考えている。そして、自分が周囲の人間の思いに大して真剣に目を向けていなかったことを悔やんだり申し訳なく思ったりしているのだが、そうした一貫した作者の態度に、なんでこんなに超常現象っぽいことを絡めなくてはならないのか? そういう意味で、今までの白石作品ほど、人間と人間の関係について、純粋に堪能することが出来ず(なんか怨念の決算みたいな感じになっちゃってさ)ちょっと残念。(2004年3月の日記より)

#読書 #読書感想文 #白石一文 #見えないドアと鶴の空 #光文社

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