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2021年6月の記事一覧
毎日読書メモ(29)『「色のふしぎ」と不思議な社会 ――2020年代の「色覚」原論』(川端裕人)
学術と文芸の狭間に立つ作家川端裕人さんが書いた『「色のふしぎ」と不思議な社会 ――2020年代の「色覚」原論』(筑摩書房)を読んだ。
たまたま、身内で色覚障害を持つ人がいなかったため、今まで深く考えることなく暮らしてきたが、色覚に障がいのある人も一定数いるし、本人は障がいがなくても、遺伝子に入っていて、自分が生んだ子どもが障がいを持つ可能性のある人も一定数いる。その人たちの苦しみについて考えさせ
毎日読書メモ(28)『オリンピックの身代金』(奥田英朗)
奥田英朗『オリンピックの身代金』(上下・講談社文庫)
上巻:読書会をやることになって読んだ。面白かった。東大で経済学を学ぶ島崎国男が、建設現場で働いていた兄の事故死をきっかけに変わる。オリンピック開催間近の昭和39年夏の東京。この小説の主人公は島崎ではなく、昭和39年という時代そのものだと思った。突貫工事で作られる競技場、モノレール、開通したての新幹線。輝かしい都市開発の裏で激しい貧富の差、生活
毎日読書メモ(26)『火星に住むつもりかい?』(伊坂幸太郎)
伊坂幸太郎は、いつ読んでもはらはらして、でも最後で必ず落としどころがあって、じわっと泣いて終わる。カタルシス小説。カタルシスへの道のりがちょっと性急で疲れることがあるけれど。引っ張りすぎ...では?
伊坂幸太郎『火星に住むつもりかい?』(光文社、現在は光文社文庫)。
図書館半年待ちだったのに、大変暗い話で、なかなか読み進められないうちに年を越してしまった。平和警察が密告と冤罪で犯罪者をでっちあ
毎日読書メモ(24)『開かせていただき光栄です』(皆川博子)
皆川博子『開かせていただき光栄です』(ハヤカワ文庫JA)、時代感が日本人にはわかりにくいのでは、と思ったがなんのなんの。一気読みの興奮本でした。続編『アルモニカ・ディアボリカ』(ハヤカワ ミステリ・ワールド)も是非。
時代小説家だと思っていた皆川博子が、もっとぶっ飛んだ人だという噂はかねがね聞いていて、読もうと思って何年も寝かせてしまったこの本を読んでみたら、本当にぶっ飛んだ! 1770年ロンド
毎日読書メモ(23)『東京スリバチ地形入門』(皆川典久、東京スリバチ学会)
ブラタモリ的な、東京再発見の書。意識して街を歩くと、とても楽しい。
皆川典久、東京スリバチ学会『東京スリバチ地形入門』(イースト新書)
東京の各地に散らばる、スリバチのような地形。両側に急坂のある谷のような三級スリバチ、水源を囲んで一方だけ流路のところが開いている二級スリバチ、そして、完全に周囲を高台で囲まれた一級スリバチ! それぞれのスリバチに成立の経緯があり、地学的に文化人類学的に考察する