過去に学ぶ(【麻疹】2016年Justin Bieberライブクラスター)&BUMPファンの方へ

2016年8月14日に幕張メッセで行われたJustin Bieberライブに麻疹を「発症中」の19歳男性が参加し、クラスター源となった事例がある。

現在27歳くらいのこの男性は、海外旅行から帰国後、よりによって「発疹が出ている状態」で兵庫県西宮市からはるばる幕張まで遠征してきていて、ライブ日を挟んで3日間首都圏に滞在し都内や神奈川等で遊び回っていた(ライブ日には高熱&発疹の状態だった)という。その後19日に地元西宮市の医療機関を受診し麻疹と確定した。

その後

8月25日に主催者が感染者のライブ参加を公表

8月30日に関西エアポート株式会社が関西国際空港のスタッフが複数人麻疹に感染しているもしくはその可能性がある状態だと公表

と展開していく。

クラスター源の男性が幕張までの往復に何(陸路と空路のどちら)を利用したのかは不明であるものの、発症してもなおライブ遠征、だけでなく旅行の3日間をフルに遊び倒すなど活発に動き回った結果、その後の国内流行の山を作ったことになる(2016年のグラフでは33週辺りで突如山が発生している)。

この事例は現在と今後の状況を考察する上で非常に示唆に富んでいる。
まず、クラスターが起きた時期は学生の「夏休み」であり、その間に「海外」へ旅行などで行った際のお持ち帰り感染を、若くて体力もあり無理もきく「学生もしくは若者」が、自らの「娯楽のため」に「体調不良を押して」、国内においても「長距離移動」を行い、さらに「ライブ」に「観光」にと(当然外食も含まれるだろう)広範囲かつ大勢の人間にウイルスを振り撒くこととなった。
現在も同じく学生の「春休み」であり、エティハド航空クラスター源の20代男性も、名古屋の麻疹姉妹(発症後に学習塾バイト、その他屋外バイトや公衆浴場施設利用あり)も、新大阪→品川に新幹線移動し日比谷で「カムフロムアウェイ」(ミュージカル)観劇後銀座のオイスターバーで長時間飲食し翌日入院した20代女性も、感染のきっかけは「海外旅行」&「飛行機」だということ、加えて、年代的にもさらに性格的にも「行動派で活発」に人と接し外や遠方にも出ていくタイプの層が、「発症後もしくは保健所による健康観察期間に」「人を感染させる行動を行なっている」ということをまずはふまえなくてはならない。
次に、「カムフロムアウェイ」の20代女性も、BUMP OF CHICKEN大阪城ホールライブ参加の30代男性も、(2016年の幕張Justin Bieberライブクラスター源の19歳男性も)皆、(ライブ回数が少ない、チケットを取りにくい、公演初日など)「貴重な公演」だからこそ、(長距離)移動を伴っても、自分がキャリアである可能性があったとしても、欲求を抑えきれずに通してしまった可能性が高いということ。
BUMPについては明日明後日、広島公演が行われる。BUMPはコアファンも多いしライブ本数もそれほど多くはない。チケット確保が難しいものの、おそらく前回の大阪へ通った層の一定数は連続参加するのではないかと思う。また、全国各地からの遠征もあるだろう。明日が祝日だということも大きい。

主催者が「対策を講じる」と公表している状態なので、少なくともメンバーやスタッフについては抗体検査やMRワクチン接種を行なっているのでは、と、思いたい。


だからここで大事になるのは、「6日に大阪城ホール公演に参加し、さらに広島公演にも参加するファンが、二次感染を生まないこと」だ。
ライブは大人数が高密度で集まる場で長時間行われるものなので、非常に感染リスクが高い。
空気感染を防ぐのは非常に困難であるものの、感染者がきちんと(少なくとも不織布)マスクで鼻と口周りを隙間なく覆っていれば、飛沫感染のリスクはだいぶ下げられるし、マスクにより感染者から空気中に放たれる飛沫ウイルスの量を低減できれば、それがairborneとなって空気感染を起こすリスクも幾分かは下げられ、感染までの時間稼ぎができるようになる。感染したくない者がマスクをしている場合にも、不織布であってもきちんと隙間なく装着できていれば飛沫についてはだいぶブロックできるし、airborneについても、全てを長時間ブロックすることはできないが、ある程度は静電気でとらえることができ、感染までの時間稼ぎをすることができる。

ーーー広島公演に参加するBUMPファンの方へーーー
是非、自分、メンバー、BUMPファンを守るために、「当日体調が悪くなかったとしてもマスクをして」ライブに参加してください。麻疹は発症前日から感染能力を持つので、ライブ時に元気だったとしても翌日発症でライブでも感染を広げてしまっていたということがいくらでもあり得ます(「カムフロムアウェイ」観劇の女性がこのパターンです)。
麻疹は感染者の行動歴や感染経路が公開されるので、広島でも感染が出て、それが「城ホール参加者(BUMPファン)が持ち込んだもの」だとわかると、その経緯も公表されます。その場合、広島公演に先立って「対策講じる」と発信していた主催者、そしてメンバーの対応までもが問われることになります。
メンバーが矢面に立たされることがないよう、今後も安定的にライブを続けられるよう、周りを思いやって、マスクをしてください。(ライブで参加者にできる対策はこれしかありません。マスクだけで感染を完全に防ぐことはできませんが、参加者の多くがマスクをしていれば、感染リスクは大幅に下げられます。)

ちなみに私は「ユグドラシル」が好きでよく聞いていました。BUMPで好きな曲は"K"、「乗車権」、"Supernova"等です。
私も音楽が好きでライブが好きです。その場が貴重であることは身をもってわかります。
でも、せめて発症している時には、今回は見送ってください。あなただけでなくメンバーのためにも。メンバーが活動を続けてくれればまた次の機会があります。あなたがメンバーの楽曲製作やツアーの可能性を奪うことがないように、踏み留まれるようにと願います。
そして、体調不良がなく参加される方は、繰り返しになりますが、たとえその時症状が無かったとしても翌日に出てくる可能性もあるので、会場内での感染リスクを下げるため、自分のため、周りのファンのため、何より「メンバーのため」にマスクをしてください。
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さて、2016年よりも現在はさらにまずい状態にあると言える。
第一に、今は学生の「春休み」でありかつ「年度末」である。特に大学卒業と絡んだ「卒業旅行」による持ち帰り感染→「卒業式・懇親会」その他送別会の流れで学内へ、その後「就職」→「歓迎会」等を経て就職先や社会へ、特に新社会人周辺で感染連鎖が起きることが予測される。
また、これ以外にも、大学生や20代を中心とする、高校卒業後結婚前で自分の時間や生活をフルに楽しみたい、若さと元気とある程度の自由になるお金があり活発に動く層が、海外でも国内でも大きく動き、リスクの高い場でリスクの高い行動を(必要な防除配慮を排して)とり感染を拡散している傾向がこれまでの事例から伺える。この傾向は今後も続くことが予測されるため、新年度はやはりまず大学が、感染の渦に巻き込まれることになるだろう(やはり、若年層への啓蒙アプローチが急務である)。
第二に、現在麻疹流行にはコロナ感染による免疫破壊で過去に接種したワクチンで獲得した抗体価が下がっている者が増えていることが背景にある可能性がある。コロナパンデミックからのノーガード化後、特に昨年からインフルエンザ、アデノウイルス、溶連菌、ロタウイルス、RSウイルスと、ひっきりなしに複数の感染症に罹患する者が増えているが、麻疹の流行もこの一環で、コロナ感染をきっかけに過去に獲得したはずの免疫が効かなくなることがあるので、特に「MRワクチン2回接種」が貫通されてくる可能性が上がっている(自然感染歴がある場合はワクチンによるものよりも免疫が長く続く可能性が高い)。「MRワクチン1回接種」でさらに接種からの時間があいている場合には抗体価が足りなくなっている可能性がより高まる。免疫があるものの不十分な場合には「修飾麻疹」になるので、この場合、症状は軽くなるものの、病院でも適切な診断がつかないケースが増え(BUMPライブの30代男性も、今日発表された都内男性もおそらくこれ、いずれも接種1回)、自分も医者も「麻疹」と気付かないまま感染を広げ続けるということになってしまう。

おそらく既に起きていて今後も連鎖する感染の多くは「修飾麻疹」であろうと私は推測している。そして、だからこそ追いきれなくなり、重症化しにくいということも相まって、コロナと全く同じように全数把握→定点観測のノーガード化の道を歩むことになるだろうと。見えないもの軽視される

今後、コロナと麻疹は互いを補完しながら、大半の人間を感染の渦に巻き込み免疫を破壊して、現在は顕在化していない過去に封じ込めたはずの感染症や新たな感染症リスクを与え続けることになるだろう。

一見「ただの風邪」で大したことないように思えるものを軽んじ、特に「人に移さない」ための対策を否定するようになった人間ばかりの社会に、今起きていることを止めるのは到底不可能だ。
先には"NO HELP. NO TREATMENTS. NO CURE."の世界、絶望が待っている。


2016年に書かれた以下の記事は(時期的に麻疹が起こす免疫健忘については触れられていないものの)非常に参考になるところが多い。

「麻疹抗体が消える理由と「マスギャザリング」の恐怖」
https://mainichi.jp/premier/health/articles/20160921/med/00m/010/004000c

クラスター発生後、それが報道に乗ると一気にワクチンが枯渇したところなど、まるで今のことのようだし、その他にもワクチン接種と抗体価減衰、マスギャザリングのリスクとマスク着用の意義、「修飾麻疹」についてなど、今そして今後のために把握しておくべき情報が多く含まれている。

過去に学び、今後の麻疹大流行を少しでも食い止められる、ための適切な方策がとれる人が、少しでも増えればと思う。

絶望を知る者として、そんな世界に足をとられることは絶対に勧めないと、こればかりは強く、何度でも言う。
決して届かないとも知っているけど。

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