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オリジナル小説「アスタラビスタ」

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人を殺めようとした紅羽を止めたのは、憑依者と呼ばれる特殊体質の男だった。キャラが憑依し合うヴィジュアル小説!
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#連載

アスタラビスタ 8話 part7

アスタラビスタ 8話 part7

「ここだ」
 それまで番号の振ってあった扉とは明らかに違い、組織のトップの部屋にふさわしい高級感のある、重たそうな扉だった。
「本当にいいのか……?」
 扉に手をかけた雅臣が、最後の確認のように尋ねてきた。
 今まで納得していたはずだったのに、私は最後の最後で心が揺らいだ。この一歩が、私の人生を大きく変えてしまう一歩になりはしないか、と。
「大丈夫です」
 私は自分の服の裾を掴み、俯い

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アスタラビスタ 8話part1

アスタラビスタ 8話part1

 深夜、寝苦しさで目が覚めた。何か悪い夢を見たのだと思う。だが、その夢が何だったのか、思い出すことはできなかった。
 ただ涙が溢れてきた。なぜ自分がここにいるのか。生きているのか。全てを否定したくなった。
 同時に、言い表せないほどの恐怖が襲ってきた。今後、自分はどうなるのか。独りぼっちになってしまうのか。
雅臣や清水、圭がいるというのに、今の私には彼らも「何の保証もしてくれない人間」に見えていた

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アスタラビスタ 7話part9 7話完結

アスタラビスタ 7話part9 7話完結

 私と雅臣は、清水や亜理たちを道場へおいて、先に帰ることにした。

どうやったとしても、私はあの場にはいられなかったし、晃ともう一度顔を合わせる勇気なんてなかった。

 そんな私の気持ちを察したのか、「もう帰るか」と切り出したのは雅臣だった。

 助かった。私は逃げ出したくて仕方なかった。だが、自分から逃げ出す勇気もなかった。

こうして、引っ張ってもらわなければ、私は動くこともできなかった。

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アスタラビスタ 7話part8

アスタラビスタ 7話part8

 私が言ったことは間違っていただろうか。

 違う。私が言ったことは間違っていない。
ただ、私みたいな最低な人間が、あんなことを言ったことが、そもそも間違っていた。

私は間違ったことをしてきた人間だ。そんな人間が、他人をとやかく言う資格などない。

 道場の中央で楽しそうに会話している清水たちを眺め、私は道場の隅で、彼らからもらったスポーツ飲料を飲んでいた。

味なんて分からない。ただ、身体の中

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アスタラビスタ 7話 part3

アスタラビスタ 7話 part3

「本気でやりたいんだろ? 晃」
 雅臣は真顔で晃に問いかけた。何を当然のことを言っているのかという表情で、晃は頷いた。

 すると雅臣は「なら、ナンバー戦をやろう」と答えた。
 先ほどまで彼を挑発していた晃だったが、突然の彼の提案に驚いた様子だった。

「そりゃ、俺、本気でやりたいって言いましたけど……いいんですか?」
「別にいいぞ。じゃないと、俺らも本気になれないからな。なぁ、清水」

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アスタラビスタ 7話part2

アスタラビスタ 7話part2

 道場の中央に集まった雅臣と清水、亜理と晃は、互いに向かい合い、手合せをする上でのルールを確認しているようだった。

 私と圭は道場の隅で体育座りをして、彼らの様子を眺めていた。私がこの手合せを傍観するのは分かる。だが、圭も私と同じように端で見ているだけというのは、あまりにも寂しすぎる。

「あの……圭さんは」
 思い切って、聞いてみることにした。

「その、つまらなくないですか? 見てるだけだな

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アスタラビスタ 7話part1

アスタラビスタ 7話part1

「遅かったじゃん! おみおみ~!」

 道場の真ん中で大きく手を振る赤毛の彼女は、先日と変わらず元気な様子だった。隣にいる晃は、申し訳なさそうにこちらへ頭を下げた。

 彼らへと歩みを早める雅臣は、明らかに不機嫌そうだった。

「俺たちよりも先に予約を取ったのは、お前らだったのか」
 雅臣の口調は、もはや怒りに近かった。

「そうよ。私たちが貸し切りで予約を取ったの。本当は晃と憑依時の確認をしよう

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アスタラビスタ 6話part5 6話完結

アスタラビスタ 6話part5 6話完結

 私は、ただ頭の中でぐるぐると考えるしかなかった。

私の身に何が起こったのか。そして彼らの身に、今何が起きているのか。

 考えれば考えるほど、分からなくなっていく。私はどうすればいいのだろう。私はこれからも、雅臣と一緒にいていいのだろうか。

 雅臣はどう思っているのだろう。雅臣は、私に身体提供者になってほしいのだろうか。だから、私との手合せを引き受けてくれていたのか?

 もし身体提供者にな

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アスタラビスタ 6話 part4

アスタラビスタ 6話 part4

 突然、部屋中にブザーが鳴り響いた。身体が固まった。電話や玄関の呼び出し音ではない、明らかに警報音だった。

どこで鳴っているのか目で追うと、パソコンの置いてあるデスクの奥に、小さな赤いライトが点滅する機械を見つけた。おそらく、その機械からブザーが鳴っている。

 ソファーで眠っていた雅臣は、ブザーで目を覚まし、飛び起きた。掛けていた毛布が舞い上がるほどの勢いだった。ぼさぼさの前髪は目にかかり、表

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アスタラビスタ 6話 part3

アスタラビスタ 6話 part3

「紅羽ちゃんが雅臣と初めて手合せをした時、俺は紅羽ちゃんの強さに驚いたんだ。雅臣が俺に憑依した時、攻撃は俺の意識が、防御は雅臣の意識が担ってる。その雅臣の守りを破って、君は勝ったんだ。それは、憑依者としての俺と雅臣に勝ったことと同じだ」

 違う。私はただ雅臣と手合せをしただけ。ほとんどお遊びのような、ルールもろくにない、当事者たちだけが満足する手合せだった。

そこには彼らの世界の、憑依者や身体

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アスタラビスタ 6話 part2

アスタラビスタ 6話 part2

 どちらかが起きているようにしてる? 

いや、それはおかしい。私は雅臣と清水が昼間、一緒にいるのをよく見る。それに雅臣は昼間、私と稽古しているじゃないか。

「雅臣は紅羽ちゃんと稽古するようになって、昼間も起きているようになったんだ。もともとショートスリーパーだったんだけど、最近はまともに寝てなかったみたい。だから寝かせてあげて」

 清水の口から、自分の知らなかった事実を語られ、頭の中が罪悪感

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アスタラビスタ 6話 part1

アスタラビスタ 6話 part1

 目が覚めると、時計は午後一時を指していた。

 近頃、雅臣との手合せで筋肉痛がひどく、起き上がると身体が軋む。だが、そのおかげで少し体重が増え、体力もついた。

病弱そうに細かった身体は、いくらか健康体に近づき、心も以前に比べて元気になった。

 ただ、独りで部屋にいると、未だに寂しさに襲われる。

特に夜。

昼間、雅臣たちと楽しく過ごした反動から、途方もない孤独に心が潰れそうになる。

 そ

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アスタラビスタ 5話 part6

アスタラビスタ 5話 part6

 彼らはまるで嵐のようだった。こんなエネルギーを間近で感じたのは久しぶりだったため、どっと疲れが襲ってきた。あれが若さというものなのか。

 ふと冷静になった私は、「食糧は多くない」という、先ほどの雅臣の言葉を思い出した。

彼らは貧乏だと言っていた。どの程度なのかは分からないが、こんな広いマンションに住んでいるのだから、それほど苦しいわけでもないのだろう。

 いや、この部屋を借りるために、彼ら

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アスタラビスタ 5話 part5

アスタラビスタ 5話 part5

 亜理の喜ぶ様子を見ていた晃は、彼女の洋服の裾を軽く引っ張った。

「亜理、目的だった資料は渡せたの?」

 そうだ。彼らが来たのは、雅臣の忘れた資料を届けることだったように思う。結果的には雅臣のものではなかったが。

「雅臣の資料だと思ったやつ、ただの余りだったんだって」
「なんだ、そうだったの」

 晃は「それなら」と呟くと、私へ一瞬目を向け、亜理の手をつかみ「そろそろ失礼しよ

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