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2021年11月の記事一覧

雨に歌うジョーカー

夜更けの雨の中を
歌いながら歩くジョーカー
スチレットナイフと
Ⅿ1911を隠し持ち
喧噪の中へと消えて逝く
悲惨なニュースを待ち望む
大衆の乾いた心に
喜劇に似た悲劇をもたらし
今日も誰かの命を奪う
雨傘を差す事などせずに

回転花火

白けたこの街に
回転花火と言う
殺し屋の話が広まる
女子供も容赦無く
撃ち殺すとか
札束を積めば助かるとか
根も葉もない噂が
巷に溢れ返った
何時だって本当の事は
何一つ知らない癖に
何でも知ってる振りをする
人の性に振り回され
直ぐに忘れられるだろうよ
本物が目の前に現れても
信じられずにおどけながら

青い刀

青い刀で
公道を駆けるジプシー
まるで手足の様に
単車を操り
誰も追い付けない
夢の様な日々は
直ぐに過ぎ去り
彼は居なくなった
夏の嵐の後で

無辜

神に祈る無辜の民
報われないと知りながら
信仰を守り続ける
幾つかの血が流れ
幾つもの年を越えたなら
皆許されるだろう
生まれ落ちた罪からも

寒がりなβ

雪が積もり
行く当ての無いβは
独り寂れた路地裏で
その羽を丸め
今をやり過ごす
吹雪に為れば
脆い體は耐えられず
凍え死ぬだろう
誰にも気付かれない儘

バクラヴァを焼く

週末にあの娘が
バクラヴァを焼く
僕は嬉しくて
夢を喰い尽くす
世界は今日も
哀しみに溢れ
今にも狂いそうだ
あの娘はアイスティーを
綺麗なグラスに注ぐ
僕は喜んで
太陽を盗んでしまう
明日の事なんて
分かりはしないから

散開

ドエトフスキーの
罪と罰を読む
左目のジュリー
人とは誠に複雑で
分かり合えない物だと
痛感しながら
心が散開して逝った
11月の凍れる夜に

黒イ雨

黒イ雨ガ
降リ続ク街ヲ
彷徨イ歩イタ
幽霊ノ群レガ
徒党ヲ組ンデ
爛レタ皮膚ヲ
ブラ下ゲナガラ
毒ノ水ヲ求メ
間ニ合ワズ
沢山死ンデ逝ク
私ハ貴方ヲ
探シナガラ
黒イ雨ニ
打タレ倒レタ
貴方ノ待ツ場所マデ
辿リ付ケズニ

狐狩り

狐と言われた
罪人を追うマーロウ
拳闘士崩れが
逝く手を阻んでも
ジャッキで手首を折り
地面へ蹴り倒す
無数の顔を持つ狐は
ドラックをばら撒き
多額の富を掴んで
海外への切符を使い
外へ消えようとした刹那
狐を拳銃で撃ち
冷たい海へと帰すマーロウ
二度と起きれない様にと

スイートレディ

甘い夜明けが
過ぎたなら
夢から醒めた
幼子の様に
泣いてくれないか
美しい人よ
その心の向こうまで
僕に見せておくれ
何も恐れずにさ

オリーブ

気怠そうに赤い髪を
かき上げて彼女は
退屈だわと言って
部屋を出て行った
オリーブの香りだけが
落ち込んだ人を慰めるなんて
嘘を付くのは止めてくれ
何も感じやしないから
もうすぐ季節が変わり
また街に雪が降る
遠い故郷と同じ色をした

沈黙の槌

騒がしい街に
槌が振り下ろされ
皆言葉を失い
路頭に迷う
沈黙を破れば
等価の罰を受ける
裁判も無く
そのまま死刑台へ

何も知らなかった

ブルーズが
悲しみだとは
知らなかった
人は何れ
死ぬんだと
知らなかった
僕は何も
分からないで
生きて来たんだね
そうだろうマザー
語り掛けても
返事は返ってこない
目を伏せていた
貴方が居ない事からも

溢れ出す愛を

脆弱なこの国が
音を立てて崩れ逝く
皆それを知りながら
何も見えない振りをする
傍らから溢れ出す愛を
掌ですくい切れず
地面へと零してしまうよ
余り過ぎた全ての愛を