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記事一覧

秘密のダンスホール

深夜に開く
秘密のダンスホール
ロカビリーに合わせ
皆が踊り続ける
本当の事は
見えやしないけど
パレードグロスで
仕上げたブーツが
ミラーボールの光で
輝いたなら
愛しき人よ共に踊ろう
手を取り合って

サルベージ

恋をしていた
吹けば飛ぶよな
恋をしていた
私の為だけに
恋をしていた
遊びですらない
恋をしていた
サルベージ出来ない
恋は唐突に
終わりを告げた
何のドラマも無く

燃える蝶

審判の日を終え
再生する世界の中
鳴り響く美しい
津軽三味線と
燃える紙の蝶が
ゆらりゆらりと現れ
そっと消えた
傷痕を癒すように

白い朝

ラム酒を
飲み過ぎた夜は
白い朝が
ちらつきながら
私を迎えに来る
それは遠い
過去の様に
曖昧で
何時も思い出ずに
私は独り
白い朝の扉を開ける
どんなに
寂しかろうとも

修羅は涙を零さない

うつろうものは
何かに迷い
絆されて
移ろいながら
死んで逝く
散り褪める
花弁と共に
春を歩む
修羅は
涙を零さない
振り返らずに
突き進む
雪駄を
ぐわぐわと
かき鳴らしながら

劫火

太陽に裁かれる
左目のジュリー
退屈でろくでない
世界を撃つヤマザキ
情け容赦なく
税を取り立てるザアカイ
劫火に焼かれるのは
誰だろうか
僕は何も知らないまま
今日も揺籃の中で
怯え震えているだけ

グランドール

完璧な人の様な
グランドール達は
ストライキを起こす
私達こそが
本当の人なのだと
奉仕する為だけに
造られた人形がと
吐き捨てる人の波が
増長する中で
グランドール達は
反乱を始める
幾千もの人を
焼き尽くしても
その怒りは消える事無く
全ての人を
かき消した刹那に
グランドール達は
気付いてしまうだろう
自分達もまた人に
造られた命でしかないと

リリーズ・リリー

惑星から来たあの娘は
たどたどしく美しい言葉を
紡ぎながら話し掛ける
僕は嬉しくて
狐革のタンバリンを打つ
街のリズムに合わせて
あの娘はステップを踏む
華奢な體を震わせて
誰にも見えなくとも
二人は確かに煌めいていた
流れる星みたいに

冬の終わり

冬の終わりに
父は死んだ
春に芽吹く
フキノトウを
眺める事無く
冬の終わりに
貴方は消えた
ロカビリーナイトを
共に見る事も無く
冬の終わりは
ただ厳しくて
私は途方に暮れる
紅煉のように

クロッカス

中身の無い歌を
垂れ流すラディオ
僕にだけ聞こえる
ロックンロールを
掛けてくれないか
心が壊れそうな夜は
狂った風が吹き荒れる
街に足を向けられず
揺籃に籠る僕に
クロッカスの花を
たわむけてくれないか
見えない何かに怯える夜は

歪んだ青い春

か弱き少年は
他人の嘴に突かれ
その姿を変貌させる
日々続く誹謗中傷に
心が耐え切れず
歪み切ってしまう
世界の破壊者に
為れなくても
小さな社会なら
壊せるだろう
青い春に散る花を
眺める事が出来なくても

イマザリル

イマザリルの雨が
降り止まない近未来
何が変わったかすら
分からずに街を歩く人達
その形を変えてまで
生きる必要はあったのか
僕は今日も戸惑いながら
機械の体にオイルを差して
海と毒薬という表題の
紙で出来た小説を読み漁る

カマロは燃えているか

ガソリンを飲みながら
走る古いカマロは
果たして燃えているか
製鉄所で焼かれた鉄の様に
寂し過ぎる街を
支配しながら走る
あの美しいカマロは
本当に燃えているか
輝きを止めない太陽みたいに

去り際

長く生き過ぎた老人は
軋んだ背骨を晒しながら
老いさらばえて逝く
生まれ落ちた瞬間から
皆が罪を背負わされ
罰から解放されるまで
曖昧に生き続ける
去り際さえ決められずに