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恥ずかしいだけのガチポエム

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素敵な写真とセンチなポエム。現実の厳しさに疲れた心を癒やされたいあなたに贈る、こつこつと積み上げていく世界。 心のどこかがほんのりとあたたかくなれば幸いです。 がんばって、だいた… もっと読む
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2020年11月の記事一覧

マスターに嫉妬

マスターに嫉妬

古ぼけた雑居ビルに、ぼくたちのお気に入りの店がある。夜だけ営業している店だから、なかなか行けないけれど、たまに運良く行くことができると実家に戻ったような気分になる。
仕事の愚痴を言うと、マスターが、そんなものだ、と言うようなアドバイスのような、アドバイスでは無いような言葉をくれる。普段彼女に対して言わないようなこともマスターには相談していて、いつも隣でそれを聞いている彼女はちょっと嫉妬している。マ

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なにを思うか

なにを思うか

モダンアートに慣れた目には、日本古来の美が新鮮に映る。
ぼくらは美術館をめぐりながら、思ったことを口にした。それは個人の感想の域をでていなくて、美術史的な観点なんか、かけらもなかった。
それはそれで楽しいのだ。ぼくらは、美術を楽しむというよりは、お互いがどんな意見を持っているのかを楽しんでいた。

無機質スタイリッシュ

無機質スタイリッシュ

無機質な、だけどきらびやかな空間。
そんな通路を歩くと、ぼくは嬉しくなってしまう。
彼女は無機質な空間が好きじゃないと言う。冷たい感じがするのだそうだ。
気持ちはわかる。だけど、無駄なものが一切取り除かれた、それでいてスタイリッシュな空間は、ぼくにとっては豊かさの象徴なのだ。
彼女にとっては成金趣味に感じるらしい。
ぼくたちは同じものを見ていて、同じように感じている。受け止め方が違うだけだ。ぼくは

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人気アニメを追いかけるきみを追いかけた

人気アニメを追いかけるきみを追いかけた

人気のアニメなんてと、馬鹿にしていたきみが夢中になって、制作会社が経営しているカフェにまで出かける羽目になった。夢中な人にありがちなミスで、店は定休日で、そもそも予約制だった。がっかりしたきみの姿を見て、振り回されたぼくは、謝って欲しいと思ったけれど、そこまで何かに夢中になるきみのことが羨ましくもあった。お茶でも飲んで帰ろうとなぐさめると、
「だから、お店閉まってるじゃない」
ときみは言って苦笑い

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あかり

あかり

距離がよくわからない暗闇を2人で歩いていく。前方には明かりが見えている。その明かりは、ぼくらの未来だ。
たどり着いたら、幸せなのだろうか。それとも、次の暗闇を待っているのだろうか。わからない。
それでもぼくたちは無我夢中に歩き続けるのだ。自分にそういかせて、きみの手を握った。

夜の街

夜の街

居酒屋の猥雑な空気が好きだ。
きみと膝をつきあわせて、なんてことない話をして過ごす。
そんな時間が貴重になるなんて思っても見なかったけれど。

おいしい廃墟

おいしい廃墟

いつもの散歩道を一本外れたところに古ぼけた店を見つけた。
「おいしい廃墟」
彼女がそうなづけた。
うん。悪くない。そんな感じ。
「うちも、こんなふうにしようか」
彼女がいった。
勘弁、とぼくは断った。

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中国みたいな看板

中国みたいな看板

その看板は文字が書かれているんだけど、裏側から見たから読めなかった。
ぼくたちは、それを興味深く眺めた。
やがて彼女がポツリと言った。
「中国みたいな看板だね」
ぼくは、思わず笑ってしまった。
「なにがおかしいの?」
ぼくは首を横に振った。
きみの想像力が大好きだ。

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なにげないぼくら

なにげないぼくら

ぼくたちが散歩する道はいつも決まっていた。ついでに言えば、時間も決まっていた。土曜日の午後2時。近所の公園を点5周歩く。ちょうど5キロだ。愛しい気持ちになっているときは手をつなぎ、喧嘩をしているときは少し離れて歩く。お互いがどんな気持ちだろうと、毎週欠かさず歩いていた。
素敵な時間だったのだ。今、1人で同じ道を歩いて、きみのことを感じている。隣を見たら、何気のない顔をしてきみが歩いているような気が

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センチメンタルなじかん

センチメンタルなじかん

ぼくたちにはセンチメンタルな時間が必要だった。
きみと一緒に夕焼けを眺める。そんなセンチメンタルな時間。当時はドキドキしただけだった。
何年も経った今、ぼくはふとした瞬間に、あの時間を、思い出す。思い出すだけじゃなくて、本当にあの時間に戻ってすらいる。きみの体温をすぐそばに感じて、涙ぐむ。
強く生きていくため、センチメンタルな時間が必要なんだ。ぼくはそれを与えてくれたきみに感謝している。永遠に感謝

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要塞に住もう

要塞に住もう

要塞に住みたいときみが言った。
ちょうど、新宿の都庁ビルを眺めていた時だ。
「要塞みたいだね」
ぼくは言った。
「本当に、ぼくたちは要塞に住まなきゃならないかもしれない」
ぼくたちはまだ若くて2人だけで結婚を約束していた。ぼくは貧乏で、きみはちょっとしたお金持ちの一人娘だった。まず父親が反対するだろう。
「どんなに大変なことがあっても、ぼくは平気だ」
きみはそう言って微笑んだ。

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すてきな夜空をきみと

すてきな夜空をきみと

本当の闇を知らないぼくたちは、白茶けた夜空に星を探した。
星の名前はほとんどわからない。
それはどうでもいいんだ。
きみが隣にいてくれる。
それだけで、ぼくは星を眺める時間が好きなんだ。ぼやけた夜空。それは素晴らしい夜空なんだ。

光輝く街をきみと歩く

光輝く街をきみと歩く

田舎町というほどの田舎ではないけれど、都会というほどでもない街に、ぼくたちは住んでいる。
デートをしていると同級生に出会ってひやかされたりする。手をつないでいたりしたら、それは大変だ。
ぼくは自分の度胸が試されている気がして、意を決してきみの手を握った。
きみは微笑んだ。
「今日は、街がいつもより、きれいに見える」
ぼくは顔を上げた。夕日に照らされた街は、光り輝いていた。それはきっと、気のせいだ。

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青空コレクション

青空コレクション

青空といってもいろいろな青空がある。
だけど、青空と聞いて思い浮かべるのは同じ青空だ。
きみの笑顔を思い浮かべる時も同じ。
きみはいろいろな笑い方をするけれど、ぼくが思い浮かべるのはいつも同じ笑顔。
想像力が乏しいのかもしれない。
それでもいいさ。
ぼくが思い浮かべるのは、最高の笑顔だから。

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