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散文

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#映画

2017年は流れ星をたくさん見た

2017年は流れ星をたくさん見た

2022年を締め括ろうとする記事が、2017年の話から始まるのもどうなんだ? でも、あの年は偶然にしてはやたら多くの流れ星を見かけた。時々は願いをかけたりもした。あの頃、私には会いたくて会いたくて仕方がない人がいて、でも会いたいからといって素直に会いに行けるような自分でもなくて、いつも流れ星を見つけるたびにあの人に相応しい人間になれますようにと真剣に願うばかりだった。

偶然っておもしろい。私は偶

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かっこ悪くていいからかっこつけない

かっこ悪くていいからかっこつけない

休日のいちばんの楽しみは朝食だあ。平日の朝はごはんを味噌汁やお茶漬けの素でチャーッとかき込んで終わりだけど、休日はラジオを聞いたり映画を見たりしながら、前日に買っておいた美味しいパンを食べる。

今日はレーズンとくるみ、紅芋と鳴門金時のブレッド。昨日の残りのシチュー。

で、わたしには先延ばし癖があるので、休日の朝はやりたいことややらなければいけないことを紙に箇条書きにしておくことが多い。

猫の

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心も晴れない雨の日は

心も晴れない雨の日は

長雨でくさくさした気分になってくる。でも雨が嫌いってわけじゃない。これはこれでいいものだ。なにも考えないで、ただじっと雨を眺めている時間もけっこう好き。

それに、雨上がりの夕暮れは街が藍色になってとてもきれい。濡れた土のにおいは子供のころから変わらない。静かな雨音に包まれていると、いろんなものが胸に染む。なんだかもの悲しくなるんだけど、それに癒されたりもする。

傘をさして散歩に行こうかなーとも

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悲しみのなかにある笑い

悲しみのなかにある笑い

なんかもうムチャクチャな話だった。飲んだくれの私立探偵ニック・ビレーンが、行く先々で暴言を吐き散らし、女のケツを押さえようと追いかけ回し、ムカつく男がいればそいつのケツも蹴り飛ばす…。チャールズ・ブコウスキーの遺作、「パルプ」。

主人公ですら、「こんなダメな奴にケツの一蹴り以外何かを手にする資格があるのか?」と自問するくらい下品な話。それなのに不思議と、作品全体に哀愁を誘う雰囲気が漂っている。

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キリストの愛 釈迦の慈悲 人間の情

キリストの愛 釈迦の慈悲 人間の情

しばらく落ち込んでいました\( ö )/

春の陽気にあてられたのか、なんだか知らない間に怖い夢のなかにひとり閉じ込められてしまったように感じられ、海や空や花にさえ目を瞑りたくなり、木々のざわめきや小鳥の鳴き声にも耳を塞ぎたくなっていました。

にもかかわらず、心の奥底では自分は何があっても絶対に大丈夫なんだという確信のようなものもあって、その信仰心と、何もかもが不確かな現実とのはざまで、大混乱し

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ゆめまぼろしでも

ゆめまぼろしでも

身体の性別に関係なく、誰であれ女性性と男性性を持ち合わせているものですが、女性性の愛を求める男性性の強い思いや、精神的な飢え渇きは、特に切実なものであるような気がします。

自分自身の中であまりにも男性性や父性が強いと、前進、向上することや、規範、厳しさなどが重視され、内面生活がちょっと苦しいものになりそうです。女性性も男性性も、社会で生きていく上ではもちろん両方が大切な性質ではあるけれども、生き

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映画「ガタカ」の感想をちょっと真面目に書いてみる

映画「ガタカ」の感想をちょっと真面目に書いてみる

先日、夢から目が覚める瞬間に「ガタカ」という声が頭の中ではっきりと聞こえた。そういえば、そんなタイトルの映画があったような気がする。ということで、その日の午後にさっそく観てみることにした。

ざっくりとあらすじ。

遺伝子操作により優れた才能を持って生まれた「適正者」と、自然妊娠によって生まれた「不適正者」に分けられた世界。不適正者として誕生したビンセントは、生まれながらに大きなハンデを負いながら

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EXIT

EXIT

そうとも

失くしていくしかないものばかりさ

それはきみがこの世界の最後の人間だから

作りものの空に気づいた
作りものの言葉に気づいた

あの空の向こうに惹かれるのは
そこに真実があるからなのさ

扉を叩き続けるんだ
彼女の呼び声が聞こえてくるまで

そうとも

失くしていくしかないものばかりさ

それは手に入れたものから見えなくなるから

ほんとうの空があると気がついた
ほんとうの愛があると

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あの明晰さが続くなら

あの明晰さが続くなら

無職になって約三週間。なんだかまるで人間の生活から引退したような気分でいる。これからは静かな余生を送りたい。そんな言葉さえ浮かんでくる。まだまだこれから頑張らなくちゃいけないのに……。

最近の午前中の過ごし方。朝、顔を洗って化粧をしたら、まず植物に水をやる。ブラッサイア、ナギ、ガジュマル、サボテン、寄せ植えの花。最近は室内でレタスも育て始めた。
それから猫のトイレを掃除したり、部屋をざっと片付け

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プラスチックの翼で無限の彼方へ

プラスチックの翼で無限の彼方へ

このところ、トイストーリーのバズのことが頭から離れなくなっていた。
特別なきっかけもないのになぜ急に思い浮かぶようになったのだろうと不思議に思っている間にも、ネットでやたらバズの写真が流れてきたり、友達からスタンプで送られてきたりと、突然あらわれるバズに怯える日々がしばらく続いたので、このさい自分から歩み寄って久しぶりに映画を鑑賞してみることにした。大したことは書けないけど、一応観た感想を書いてお

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最後までよろしく

最後までよろしく

今年の八月頃、韓国映画「ビューティー・インサイド」を観た。毎日目が覚めるたびに性別も年齢も人種も全く違う身体に変わってしまう主人公のウジンと、彼が愛した女性イスのラブストーリー。ウジン役は123人の役者が演じたらしいけど、どんな姿であってもウジンの目の奥に浮かぶ表情はどことなく似ていた気がする。もう幸せはとっくの昔に諦めたというような寂しげな瞳が印象に残る作品だった。

この映画を観ている間、銀色

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