心も晴れない雨の日は
長雨でくさくさした気分になってくる。でも雨が嫌いってわけじゃない。これはこれでいいものだ。なにも考えないで、ただじっと雨を眺めている時間もけっこう好き。
それに、雨上がりの夕暮れは街が藍色になってとてもきれい。濡れた土のにおいは子供のころから変わらない。静かな雨音に包まれていると、いろんなものが胸に染む。なんだかもの悲しくなるんだけど、それに癒されたりもする。
傘をさして散歩に行こうかなーとも思ったけど、こういう日はどこかに行くより、自分の足元を掘って楽しむのがいいかもしれない。
そういうわけで、朝から木の実と種をぽりぽり食べながら、最近お気に入りの映画「チア・アップ!」をみた。シニアタウンで静かな余生を送るつもりだった主人公マーサ(ダイアン・キートン)が、クラブを結成してチアをはじめるというストーリー。
ダイアン・キートン、なんて素敵な女性なんだろう。
彼女の主演作品は「ロンドン、人生はじめます」「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」「最高の人生のつくり方」をみたけど、どれもとってもいい映画だった。
自然体なのに仕草や佇まいがかっこよくて、何気ないシーンでも絵になるダイアン。生き方が瞳や表情にあらわれていて、知的な雰囲気。上半身の重心がちょっと後ろに傾いたような、あの歩き方を真似したい。
午後はちゃちゃっと部屋の掃除をして、次の映画をみる準備。ポップコーンと、にんじんとりんごのスムージーをつくった。摘みたてのミントの香りが嬉しい。
ポップコーンをつくると、家中が映画館のにおいになってなんだかいい気分。味つけはオリーブオイルと塩だけ。
映画は前から気になっていた「人生、ブラボー!」
(邦題に「人生」とつく映画に惹かれる節がある…)
693回の精子提供の結果、533人の子どもが生まれたデイヴィッド。正体を隠して子供たちと会ううちに、自身の父性と愛情に気づいていく。大問題のさなかにあっても、人の善意や優しさを見つめようと思えるような、温かい作品だった。
最近は難しい映画をみる気がしない。ハートウォーミング系の、鑑賞後に爽快感が残る作品ばっかりみてる。たぶん純粋に人生を楽しもうと思えるんだな。そういう映画をみてると…。
チア・アップ!の主人公マーサも「シンプルに生きたくなった」と言っていたけど、そういう気持ちが、今はとてもよくわかる。
何年ものあいだ、私は自分を広げすぎていたような気がする。
この一年半、仕事やライフスタイルにいろいろな変化があった。その変化のなかにいるときは、自分がどんどんしぼんでいって、小さくなってしまうような気がしてすごく怖かったんだけど、いざ等身大に近いサイズにまで縮んでみると、けっこうそのサイズに安心している自分がいる。
しぼんでいく最中は本当に寂しかった。私は人間としてこうあるべきなんだ、と掲げていた理想から、止めようもなく遠さがってしまうような気がしたから。
どこまで小さくなるんだろう?このまま消えてしまうんじゃないか?なんて思ってたけど、これはむしろ、少しずつもとの自分に戻っているってことなのかもしれない。
今はなるべくシンプルに、ただ生きるということを楽しみたい。いつ穴に落ちるかわからない、戦々恐々とした気分を心のどこかに抱えながら、そんな日々もあるがままに、ただ純粋に生きられたらいいなと思う。
昨日はあしたも雨か…なんて思ってたのに、実際は摘みたてのミントでハッピーな気分になったり、朝の洗顔後にふかふかのタオルを使えて嬉しくなったり。
それはシンプルを通り越してすんごい些細なことなんだけど、なんだかんだでそれに勝る幸せはなく、いざというときに支えてくれるのも、そういうたくさんの小さな幸せなんだな。
どう締めていいのかわからないけど、とにかく今日は、そんな静かな雨の日だった。
あしたは少し晴れるみたい🌞
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