5大総合商社の2020年度決算
こんばんは!
先日、5大総合商社の決算発表がありましたね。
各社の決算発表スケジュールは以下の通りでした。
【決算発表スケジュール】
4月30日14:00 三井物産
5月6日 14:30 丸紅
5月7日 12:30 住友商事
5月7日 13:45 三菱商事
5月10日13:00 伊藤忠商事
まずは、第3四半期決算までのおさらいをしてみます。
1Qより伊藤忠が独走状態で、豊富なキャッシュフローに強みを置く三井物産がそれに続く形でした。
丸紅は好調で上方修正を行い、三菱商事、住友商事はそれぞれ三菱自動車・マダガスカルのニッケル鉱山で大きな減損を計上していましたね。
四半期ごとの記事も貼っておきます。
さて、2020年度の通期決算はどのような結果になったのでしょうか。
5大総合商社各社のパフォーマンスを解説していきたいと思います。
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5大総合商社の2020年度決算
5大総合商社の2020年度決算を分析していきます。
純利益、キャッシュフロー、来年度見通し(目標)、株価の変動
全4つの指標で5社を比較した後で、各社の状況を細かく見ます。
20年度純利益
まず一番最初に見るべきは、純利益ですよね。
シンプルに各社の成績が分かる損益計算書における指標です。
日経新聞でも7大商社の純利益比較がなされていました。
表の通り、第3四半期に3,643億円の純利益を記録した伊藤忠商事が
リードを守り切り一位に輝きました。
伊藤忠が首位となるのは、5年ぶり2回目です。
市況に左右されづらいB2Cの事業を拡大してきた結果ですね。
食料やコンシューマー分野が堅調でした。
2位になりましたのは、第3四半期と同様に三井物産。
第3四半期時点では、1,700億円程度あった差を最後にぐっとつめて、
伊藤忠から700億円ビハインドで着地しました。
これはかなりのサプライズだったのではないでしょうか?
市況が上向きになったことから、金属資源分野で1,799億円の利益を出しています。
さすが「資源の三井」といったところでしょうか。
3位もまたサプライズで丸紅です。
第3四半期時点では三菱商事と競っていたのですが、第4四半期も堅調に純利益を伸ばし、2,253億円でした。
これは同社歴代で2番目の純利益となります。
4位は一気に失速した三菱商事。
ローソンでの減損、第1四半期から続く三菱自動車の減損を中心に、
通期で1700億円ほどの一過性損失を吐き出しました。
純利益の表で、三菱商事が4番手にいるのは、相当な違和感があります。
5位は第3四半期と同じく、住友商事です。
3Qの時に発表された20年度見通しは-1,200億円でしたので、
-1,500億円の着地はさらに300億円の一過性損失があったことを表します。
マダガスカルのニッケル事業に加えて電力EPC案件などでも減損が計上されています。
1位伊藤忠、2位三井、3位丸紅、4位三菱、5位住商
という順位に驚いた方も多いのではないでしょうか。
自動車や市況の影響を受けやすい商材に注力していた商社が
コロナ禍の向かい風によって沈んでいった印象です。
20年度キャッシュ・フロー
はい。やってまいりました。
私の大好きな基礎営業キャッシュ・フローの分析です。
毎回説明していると思いますが、定義は以下です。
基礎営業キャッシュ・フローとは?
営業キャッシュ・フローから営業資⾦、運転資本の増減等を控除した数字をいい、5大総合商社ではよく用いられる指標です。
損益計算書での純利益と違い、営業キャッシュ・フローは売り上げや仕入れなど会社の本業で稼いでいる"お金の量"を表します。利益ではなく、企業が実際に保有するお金で測るのがポイントです。
"企業の財布の中身"と言い換えることができます。
なぜ大好きかというと、商社の成績を掴むうえで大事な数値だからです。
総合商社業界は子会社が多いため、減損をいつ出すかによって純利益が変化してしまいます。そのため、
「減損を大きく出したが、稼ぐ力は充分残っている」
というケースもあるのです。
キャッシュ・フローで見てみると、三井→三菱→伊藤忠→丸紅→住商の順番です。
言えることは3つあります。
まず3Qから続いて三井のキャッシュフローは素晴らしく安定しています。
キャッシュ・フローが多い=お財布に沢山お金が入っている
という意味ですので、来年度の取り組みに注目が集まります。
DXの推進にお金をかけていったらかなり強いですね。
次に、三菱の純利益低下はそこまで問題ではないということ。
キャッシュ・フローで見ると二番目で、稼ぐ力はあるため、そこまで悲観視しなくても良いかもしれません。
最後に住商は少し危険なのでは?という印象を受けました。
キャッシュ・フローが圧倒的に少なく、来年度も投資できる額に限界がありますよね。
ちなみに、昨年度丸紅の純利益は-2,000億円ほどでしたが、
キャッシュ・フローは3,600億円ほどありました。
投資家の方々、就活生の方々
ぜひ総合商社業界を分析する際はキャッシュ・フローも併せて見ていただけると良いかなと思います。
21年度純利益見通し
次に今年度の21年度の純利益見通しですね。
見通しとは目標額のようなものです。
今回の決算を受けて、各社目標(意気込み)を発表しています。
たまげてしまったのは、伊藤忠商事の5,500億円!!
更に他商社に差をつけていくのでしょうか。
37%の増加率を見込んでいます。
三菱商事は今年度の2.2倍の3,800億円を目標に置いていますが、
それでも伊藤忠には届かず。。。
三井物産も同様ですね。
丸紅は2%増ですが、20年度多くの上方修正を繰り返してきたので、控えめな数字で設定している可能性が高いです。
住商も見通し2,300億円ですので、4位争いが激しくなっていきそうです。
19卒に巨額減損を吐き出した丸紅 VS 20年度に吐き出した住商による
フラットな戦いが始まりますね。
決算前後 株価の変動
決算前と後で各社の株価がどのように変動したのかを見ていきます。
良い決算だからと言って株価が上がるとは限らないもの。
伊藤忠は4,000億円以上の純利益をマークしたものの、既に株価が上がり切っていたこともあり、横ばいでした。
サプライズ決算で1位との差をぐっと詰めた三井物産が10%株価を上げたのは納得がいきます。物産は自社株買いを進めることを表明したのもプラス要因だったのかもしれません。
丸紅も堅調に上がり、見通しへの期待から住商も微増しました。
一方、三菱商事は5%程度の下落。
伊藤忠に1位を取られてしまったこと、今年の見通しでも1位に返り咲くのは難しいことが原因ですかね。
重要な指標の分析はここまでにして、最後に各社の分析をしていきます。
5大総合商社 各社の分析
伊藤忠商事
・一株当たりの配当金は85円から88円に増配
・4Qの基礎収益は金属、電力・環境ソリューション、化学品、情報・通信が牽引して4Qでは過去最高を更新
・通期で見ると稼ぎ頭は、金属カンパニーの1,380億円。
鉄鉱石価格の上昇が主要因
その他もBtoC分野を中心に好調なセグメントが多かった。
・通期での減損額は940億円。機械、エネルギー・化学品、食料での減損が大きい。
・中期経営計画では2023年度までに純利益6,000億円達成を目指す。
三井物産
・一株当たりの配当金を19年度の80円から85円に5円増配
・来年度最大500億円の自社株買いを実施
・純利益における稼ぎ頭は、金属資源の1,799億円。豪州鉄鉱石事業における販売価格上昇と配当増が影響。他の分野でバランスよく収益を構成。
・金属資源、機械・インフラ分野にて合計1,000億円以上の一次損失を計上。
丸紅
・一株当たりの配当金を前回予想の1株当たり28円から33円に5円増配予定
・上位2社と同様に金属の614億円が純利益の柱。他、食料やアグリ事業が好調。
・19年度の減損で懸念されていたDEレシオが、1.16倍から0.88倍に低下
三菱商事
・一株当たりの配当金を132円から134円に2円増配。21年度も同額を予定
・稼ぎ頭は金属資源の658億円。
・主な減損はローソンの836億円、三菱自動車を始めとする自動車モビリティ事業で526億円。
→21年度もこの2つをどこまで建て直せるのかが鬼門になりそうです。
住友商事
・一株当たりの配当金は19年度と同様の年間70円。
・国内の主要事業会社(JCOMなど)の堅調を背景にメディア・デジタル部門で増益。443億円の純利益プラス
・総減損額は1,980億円。
✔マダガスカルニッケル事業 -550
✔欧米州青果事業 -380
✔電力EPC -280
✔豪州発電事業 -250 など
・新中期経営計画では23年度に3,000億円以上の純利益を目標に置く。
まとめ
今回は5大総合商社の決算発表をまとめてみました。
第3四半期決算と同様に、首位 伊藤忠と最下位 住商は変わらず、ゴールとなりました。
三菱、三井の見通しが伊藤忠に追いついていないことから、21年度も伊藤忠優勢になっていきそうです。
また、19年度に減損を出した丸紅と20年度に減損を出した住商の対決にも
注目が集まります。
コロナの不況から少しずつ回復してきた総合商社業界。
21年度はどのような順位になるのでしょうか。
今後も四半期ごとの決算で、記事を書きますのでお見逃しなく!!
ぜひフォローとスキ宜しくお願いします。
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