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アイノテ。手話ができるニホンザルの「あいちゃん」と大場さんが叶えたい夢とは?

こんにちは、翼祈(たすき)です。
皆さんは手話にどんな想いを持っていますか?最近は手話通訳士もテレビなどで見かけるケースも多く、以前より少しでも身近になったのではないでしょうか?

そんな手話ですが、実は「合いの手」や「愛の手」にちなみ、『アイノテ』という、ニホンザルの「あいちゃん」と、トレーナーの大場由佳さんがコンビを組み、手話を披露しているという話が、耳に入って来ました。

どうして「あいちゃん」は手話ができるニホンザルになったのか?それは大場さんが経験した悲しい出来事から始まったそうです。

今回は「あいちゃん」と大場さんの『アイノテ』結成秘話、2023年8月に聴覚支援学校に訪問し、手話を披露したエピソードなどをご紹介したいと思います。

『アイノテ』が結成された経緯

画像・引用:ニホンザルのあいちゃんが手話に挑戦! Kiss PRESS

ヒトと同じ手話を披露する猿がいます。猿まわしを披露する大阪府中央区にある「二助企画」に所属している「あいちゃん」です。トレーナーの大場由佳さんと一緒に、2023年7月から日本各地を巡回し手話を披露します。同「二助企画」は「猿まわしで手話を披露する猿は、おそらくどこを見てもいないと思います」といいます。

褒められると嬉しい甘えん坊な「あいちゃん」と、幼い時から動物好きの大場さんがコンビを結成し、毎日の稽古や路上公演で技術を磨いてきました。

大場さんが生まれ育ったのは大阪府泉南市です。物心ついた時から動物が大好きで、母が「動物について勉強できるよ」と教えてくれた大阪府堺市美原区にある府立農芸高校に進学しました。

なぜ手話ができるの?」とよくお客様から聞かれます。大場さんは健聴者で、身内に手話が必要な人はいないといいますが、手話とは不思議な縁があったといいます。

大場さんには、子どもの頃、仲良しの姉妹がいて友達でした。

ある日、公園で一緒に遊んでいた時、姉妹の1人が怪我をして泣いていました。「大丈夫だよ、どこか痛いところはない?」。そんな言葉を投げかけたかったのですが、そのことを伝えられませんでした。小学校では、手話通訳の先生を介して会話していたからでした。姉妹は聴覚障害があって、耳が聞こえませんでした。

幼い頃から指で五十音を表す「指文字」には慣れていましたが、手話まではできず、ただ立ち尽くすしかできませんでした。

その後、姉妹は特別支援学校に進学し、大場さんは動物の飼育員を目指して府立農芸高校に入学しました。通学途中の電車内で姉妹を見かけたこともありましたが、やはり姉妹に声をかけられませんでした。

いつか、あの姉妹と会話したい

そんな想いが常に頭から離れず、手話講座に入学し、手話のできる先生に出逢い、見よう見まねで手話を勉強していきました。いつしか、動物の良さを手話で伝える仕事を探す様になりました。

2019年に神戸モンキーズ劇場を運営する「二助企画」に入社しました。2020年2月に「あいちゃん」とコンビを結成しました。デビュー当初は、「あいちゃん」は猿まわしの演目のみに集中し、大場さんがショーの前後に手話でお客様に挨拶をするのみでした。

大場さんは50音を表す手話や指文字を独学で勉強し、手話通訳者の資格取得にもチャレンジしました。

ショーの全編に手話を盛り込むことを目標に掲げ、一緒に散歩しながら、芸を「あいちゃん」に教えるという日常を継続しました。「あいちゃん」が最初に覚えた手話は、胸を2回叩く「分かった」。そして「ありがとう」や「できる」、「合いの手」を習得しました。トータル4種類の手話を覚え、大場さんとの軽妙な手話での掛け合いもできる様になりました。

特に大場さんが「あいちゃん」に教えるのが大変だったのは、右手は縦に動かし、左手は地面と水平にする、「ありがとう」。習得するまでは1年を要しました。

元々、ニホンザルはチンパンジーなどと比較しても手先は器用ではありませんが、コンビを結んだ時から稽古を積み重ね、育ち盛りの「あいちゃん」は時間をかけて柔軟に手話を少しずつ覚えていきました。大場さんは「少し覚えることができると、沢山『あいちゃん』を褒めます。成功体験の積み重ねで習得できました」とその道のりを回顧しました。

あの日の姉妹とのもどかしさが、手話の世界へと踏み出した機転となりました。あの当時の悔しさから「どんな方でも楽しめるショーを創りたい」との想いが高まっていました。

大場さんと「あいちゃん」の『アイノテ』は今までに関西の聴覚障害者団体のイベントなどで手話もするパフォーマンスを披露しました。2023年7月中旬からは日本各地の聴覚に障害を抱える人たちの団体などを1年をかけて巡回するプロジェクト【走れ!ウキウキお猿の宅配便】を行っていて、4m×6mの公演スペースの提供や活動資金の支援を呼びかけています。

参考:手話猿まわし 日々成長 読売新聞(2023年)

2022年10月に開催された「近畿ろうあ者大会」で試しに手話をお披露目してみました。お客様からの笑顔に大場さんは手応えを感じたといいます。

ショーでは大場さんが口頭の説明に手話を交えながら進行していきますが、お客様に「頑張って」など何個かの手話を伝授するシーンもあります。大場さんは「耳が聞こえない人にショーを楽しんで頂くことに留まらず、沢山の方に手話に興味を持って頂ければと思っています。せっかくですし手話を何個か覚えて頂いて、『あいちゃん』を応援して貰いたいです」と笑顔でそう述べました。

2023年8月、

トレーナーの大場由佳さんとニホンザルの5歳のメス「あいちゃん」が2023年8月28日、秋田県秋田市にある県立聴覚支援学校を訪問し、手話が入っている芸ができる「あいちゃん」が子ども達の前で得意な芸を披露しました。

大場さんによれば、「あいちゃん」は4年程度時間を要して「美味しい」や「ありがとう」といった約10種類の手話を習得しました。

「あいちゃん」のショーを見た女子生徒は「私が想像していたよりもとても上手い『あいちゃん』の手話で、しっかりと表現できていて凄かったです」と言いました。

大場さんは「聴覚に障害を抱えている人達にも、猿まわし特有の『ボケとツッコミ』をより楽しんで頂ける様に、今後も『あいちゃん』と切磋琢磨して精進していきたいです」と語りました。

参考:手話を使った芸 ニホンザル「あいちゃん」聴覚支援学校を訪問 NHK NEWS WEB(2023年)


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