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私のこと

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自分のこれまでのことを綴っています
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2019年10月の記事一覧

クリスチャンの友人

クリスチャンの友人

 大学がミッション系だったということもあり、私にはクリスチャンの友人が何人かいた。それまでの私とキリスト教の関わりといえば妹がミッション系の幼稚園に通っていたので、彼女のクリスマスの舞台劇を観に行ったことがあるくらいのものだった。イエス・キリストの降誕劇である。子どもたちの劇はとても可愛らしく、私の心に暖かいものを残してくれた。年月がたち大学生になる頃には、私は自分の生きている意味が本格的に分から

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ミューズ

ミューズ

ミューズ ギリシャ神話で、文芸・学術・音楽・舞踏などをつかさどる女神ムーサの英語名。

 ミューズとは私の地元にある喫茶店の店名である。私はその日知人に誘われ、体操教室の帰り道に初めてミューズに寄った。ミューズは面白い店で、カレーの専門店でありながらマスターが芸術に精通していることからギャラリーの役割も果たしており、地元の芸術家と芸術を愛する人々が集うサロンとなっていた。私は美味しいカレーを頂きな

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空に手を伸ばして

空に手を伸ばして

 私が理解者も得られぬままさまよっていた頃の話である。その日私は気晴らしに友人の家に出かけた。お昼をご馳走になり、何か時間を潰せるものはないだろうかと辺りを探していた時に、私は本棚に「それ」をみつけたのである。『ドラゴンボール』全巻を。私は何の気もなしにそれらの本を手にとった。そうしたらページをめくる手が止まらなくなり、次の巻へ巻へと読み進めるうちに42巻全巻を読み終えてしまったのである。何だろう

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花祭りの里へ

花祭りの里へ

 高校大学と同じ学校に通っていた友人がいた。(ついでに高校の部活も一緒だった)彼女の名前をTちゃんとする。Tちゃんとは学科は違ったが妙なところで気が合うので、私は彼女と話をするのを楽しみにしていた。Tちゃんは『花祭り』の研究を熱心にしていた。ここでいう花祭りとは釈迦の誕生日を祝う仏教行事のことではない。愛知県北設楽郡の東栄町に700年以上続く伝統的な神事のことである。Tちゃんはこの祭りに完全にはま

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茶の心

 大学生になった私はすっかり意気消沈していた。本当は大学を休学して少し休養をとるべきだったのだが、何となくレールから外れることが怖くて石にかじりつくようにして大学に通い続けていたのである。やはりここは何か新しいことを始めるべきだろうと私は考えた。まずはなにかサークルに入ろう。見学会の最中にはもちろん弦楽部にも足を運んだのだが、練習が毎日あるということで諦めざるをえなかった。当時私は自宅から往復に5

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父をたずねて

 愛知県の春日井市に住んでいた頃の話である。確か小学2年生ぐらいだったと思う。当時長野県に単身赴任していた父親から電話がはいった。トンネルが完成しそうだから見に来ないか、と。父親は中堅のゼネコンに勤め、当時トンネル工事に着手していた。父に会えるのは1ヶ月に1、2回という生活をおくっていた私は、うれしさに電話口で飛び上がった。ただそれだけ離れて暮らしていると、自然と父親とどういった距離感で話をしてい

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初恋バレンタイン

初恋バレンタイン

 私が初めて人を好きだと自覚したのは小学6年生の時である。私は年度の初めにその学校に転校してきたのだが、思えばあっという間の1年だった。冬のある日私は友人数名とバレンタインのチョコレート作りをすることになった。その年ごろの女の子というものは基本的に男の子よりも早熟で、集まるとクラスの男子の話題ばかりしていたように思う。話の流れで誰が好きかを告白することになった。私は思い切ってK君が好きだと皆の前で

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こんな夢をみてきた

 私は昔から二種類の夢をよくみてきた。一つはビルから落ちる夢。もう一つはモンスターに追いかけられる夢。モンスターに追いかけられる夢の方は分かりやすいだろう。なにか現実的に不安なことがあるとこの夢は現れた。そしてモンスターに捕まりそうになると、目が覚めるというのがお決まりのパターンだった。大抵テストの前や何か緊張する場面に遭遇すると夢の中でも苦しむことになるのである。

 一方ビルから落ちる夢という

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二人の先生

二人の先生

 educate ①教育する ②養育する

     語源 ラテン語で(その人の 持っている能力を)引き出すの意

 ある人と話をしていてお薦めの本を教えてもらう機会があった。その方はいった。『銀の匙』(中勘助)がいいのではないか、と。私はこの本のタイトルこそ知っていたが読んだことはなかったので、どうしてその本を薦めるのか理由をたずねてみた。その方の話によると灘校に以前変わった先生がいて、その先

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非現実の日常

非現実の日常

 私の住む街には立派な公会堂がある。大正デモクラシーの最中に建設を望む声が上がり、昭和6年(1931年)に竣工した、国の登録有形文化財となっている貴重な建造物である。外観はロマネスク様式を基調とし、中央には大階段が設置されている。窓は優美な楕円状のアーチを描き、建物上部には半球ドームとその周りを囲む4羽の鷲がシンボリックな印象を残す。滅多にお目にかかることのできないこの建築様式は、見たものに必ずや

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