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生きてる限り、腹は減る

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どんなに嫌なことがあった日でもお腹はすく。 生きることは食べること。昨日何食べた、今日何食べよう、そんな食事にまつわる記録。
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#日常

黄金色の栗あんを、空に捧ぐ

秋のお彼岸。

お団子屋さんの袋を片手に、京都にいる祖父に会いに行った。

中には前日に買った、焼き栗餅が入っている。

前日。

季節限定のものはありますか。
おすすめはどれですか。
日持ちはいつまでですか。

珍しく明るいうちに帰れた仕事帰り、駅中の美味しいお団子屋さんで、店員のお姉さんを質問攻めにして選んだのが、焼き栗餅と月見団子だった。

若い店員のお姉さんは、焼き栗餅と月見団子を、ていね

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あんぱんは、欠けて、満ちて

あんぱんは、欠けて、満ちて

久しぶりにあんぱんを食べた。

それも横綱級のあんぱんだ。

まず仕事が終わって、職場近くの美味しくて安いパン屋さんに行こうと思っていたのだけど、風がとても強く吹いていたのと、空に広がった灰色の雲が今にも雨を降らせそうだったので、それをやめて、地元のパン屋さんに行くことにした。

地元のパン屋さんは、最寄駅を降りたらすぐ何軒かあって、たまたまふらりと入ったそのパン屋さんは、あんぱんがとても有名なお

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食べる、生きる、循環する

食べる、生きる、循環する

家の冷蔵庫が好きだ。

決して大きな冷蔵庫ではない、自分と同じぐらいの背丈の冷蔵庫だ。

先日など、仕事中、無意識のうちにキーボードで reizouko と無意味に入力・変換してしまっていて、あわててバックスペースを連打したほどだ。

あの四角のフォルムのなかに置かれた、食べものたち。ひんやりした、けれども間違いなく自分をつくる、あたたかい食べものたち。食べものたちは、冷蔵庫のなかで呼吸し、生きて

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わらびもちって、なんなんだろう

わらびもちって、なんなんだろう

わらびもちってなんなんだろう。

松重豊さんが自身のラジオ番組『深夜の音楽食堂』で、わらびもちが高級化していることについて異を唱えていた。

松重さんによると、故郷福岡では、もなかの皮にわらびもちをのせてきなこをサッとかけて、おじさんが20円、30円で売りに来ていたものらしい。(これは福岡だけかもしれない…説)

あぁ言われてみれば確かになあ、わらびもちってなんなんだろうと思う。

ちょっと暑いな

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秋なのに、春みたいな旅立ちのマドレーヌ

秋なのに、春みたいな旅立ちのマドレーヌ

「お世話になりました」
と、若い男の子が菓子折りをもって挨拶に来た。彼は10月1日から別の支店に行くことが決まっている。彼とは1ヶ月程度だけど一緒に働いたことがあって、今は部署も違うし仕事上の関わりもないけれど、フロアが一緒のところで働いている。
「ありがとう」
とお菓子を受け取りながら、少し言葉を交わした。

異動になる部署は人数が足りておらず、体力的にもハードなところだという。
「体壊さないよ

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雲隠れの月夜

雲隠れの月夜

中秋の名月。穏やかな夜を過ごしている。月は雲隠れして、その姿は残念ながら見えない。けれど、雲と雲の間からぼおっとした虹のようなひかりが漏れているので、あそこに月がおるんやなあ、というのがすぐにわかる。

遅めの晩御飯を済ませたあと、うさぎの型が抜かれた、まあるい月見まんじゅうをひとつ、スーパーで買って食べた。78円。ポップにはお月見セール!!と書いていたので普段はもっと高いのだろうか、それともそう

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柿が熟すまで

久しぶりの秋空の日、祖母の家で柿を剥いだ。

仏壇にお供えしていた2つの柿は、まだ熟しておらず、かたい。祖母に「ひとつもってかえりなさい」と言われたけど、皮を剥いで切るのがとても面倒だったので、「ええ、いいよーおばあちゃん食べなよ」と言ったら、「ほなここで剥いでいったらええやん」とあっさり言われ、そうすることにした。

柿は前に、一度だけ剥いだことがある。なぜ柿を食べようと思ったのかは詳しく覚えて

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鍋からご飯を炊いて、「ゆっくり生きよう」と決めた朝

鍋からご飯を炊いて、「ゆっくり生きよう」と決めた朝

普段炊飯器でご飯を多めに炊いて、余ったら冷凍保存をしている。けれど今朝、いつものようにご飯をレンジでチンして食べようと思ったら、ひとつもなかった。ではパンでも食べようかと思ったら、食パンもない。

1日の始まりに思い通りにならないことがあると、スタートダッシュでダッシュを切れなかったような気持ちになり、ああ、今日1日もう終わったな…と思ってしまうのだけど、幸いなことに、今日は休日。めずらしくいつも

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極楽行きの塩サバカスクゥートとオレンジマーマレードのクリームチーズパン

極楽行きの塩サバカスクゥートとオレンジマーマレードのクリームチーズパン

この前平日に仕事が休みだったとき、お昼までダラダラしてから近所の有名なちょっとオシャレなパン屋さんに出かけた。心踊りながらどのパンにしようかさんざん迷い、塩サバのカスクゥート、オレンジマーマレードのクリームチーズパンを買った。それらを家で昼間からクーラーをつけて、ルイボスティーと一緒に味わう。

塩サバのカスクゥートには、ベビーリーフ、赤玉ねぎとレモン、焼いた塩サバが彩りよくサンドされている。それ

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クリームソーダのおもひで

クリームソーダのおもひで

クリームソーダの緑茶を、お気に入りのマグカップに淹れて飲んでいる。クリームソーダの緑茶って、なかなか面白いでしょう?そう、面白いと思って、昨年買ったのだ。賞味期限を少し過ぎてしまっているけれど、白いカップのなかに広がる、メロンソーダをかなりうすめたような緑色や、(あ、でも緑茶だから、単純にその葉っぱの色ですね)バニラアイスを模したあまい香りは、この新緑の季節にとても合っている。あぁ、このさわやかさ

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ちょっくらチョコレート、渡しにいってくる

ちょっくらチョコレート、渡しにいってくる

料理をするとき、「待つ」という時間が好きだ。

たとえば、炊飯器でお米が炊けるまでの時間。ひじき煮をつくるとき、落としぶたをして、ぐつぐつ煮る時間。しょうが焼きを焼く前に、豚肉と玉ねぎを、しょうが、みりん、酒、しょうゆに浸けておく時間。言い出すとキリがないけれど、長くても短くても、そういう「この工程をすれば、何かができあがる」、それを待つ時間が、とてもわくわくするのだ。

雪が溶けて春が来るのを待

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うっふぷりん  と。

うっふぷりん と。

「写真撮ろうぜ」

そう言いだしたのはおそらく、弟だったと思う。

大人になって4人でちゃんと写真を撮るのは初めてかもしれない。

いつも誰かひとりが写真係になっていたから。

カメラが趣味の父が、デジタル1眼レフカメラをセルフタイマー設定にする。

わたし、弟、父、母の順番で横1列に並んだ。

カシャ、と音が鳴るものだと思っていたけど、鳴らないうちに撮影は終わっていた。

「今までありがとうな…

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