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雲隠れの月夜

中秋の名月。穏やかな夜を過ごしている。月は雲隠れして、その姿は残念ながら見えない。けれど、雲と雲の間からぼおっとした虹のようなひかりが漏れているので、あそこに月がおるんやなあ、というのがすぐにわかる。


遅めの晩御飯を済ませたあと、うさぎの型が抜かれた、まあるい月見まんじゅうをひとつ、スーパーで買って食べた。78円。ポップにはお月見セール!!と書いていたので普段はもっと高いのだろうか、それともそう書いているだけなのだろうか。割ると中はこしあんがぎっしりつまっている。あんこの飾らない素朴さがいつも愛しくて、たまらないなあ、と思う。あんこの甘さは、良いところも悪いところも、もう全てを許してくれる気がする。

月見まんじゅうを食べながら、YouTube で音楽を流す。秋になると、中秋の名月が近づくと聴きたくなる曲がある。


ひとつめは、ハンバートハンバートの『今晩はお月さん』という曲。静かな今日みたいな日にはとても合っている。コロナになってから、思ったように、すぐに会いたい人に会えない状況が続いているけれど、月を見ながら大切なひとを思い出す、そんなひとりの時間を慈しんでもいいと思う。


ふたつめは、小川七生の『月灯りふんわり落ちてくる夜』。クレヨンしんちゃんのエンディングテーマだった曲で、この時期になるととても聴きたくなる一曲。満月の夜、みさえとしんちゃんとひまわりとしろで、駅までひろしを迎えにいって、最後は手をつないで帰るという、何気ない家族のストーリーなのだけど、なんていうか、とてもあたたかいのだ。こういう家族っていいなあって思わせてくれる。


今日、近くの有名なお団子屋さんのふくろを提げたサラリーマンを見た。何が入っているのだろう、月見団子かな。家族へのお土産だろうか。それとも実は単身赴任中で、甘党な男性はこっそりひとりで食べるのだろうか。


今年も十五夜がそろそろ終わる。

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