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心惹かれる本。素敵な読書の記事。

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2022年4月の記事一覧

琥珀の夢 下(著者:伊集院静)

琥珀の夢 下(著者:伊集院静)

著作者名:伊集院静 発行所:株式会社集英社 2020年6月25日発行

喜蔵(信治郎の兄)は、築港へ向かった。やがて春の朝陽が昇る気配がして、空がぼんやり美しい色に染まりはじめていた。堤防沿いを歩くと、旧桟橋の突端に人影が見えた。うしろ姿で弟とわかった。
 
近づくと信治郎の目から大粒の涙がこぼれていた。「喜蔵兄はん。とうとうでけましたで」子供の時分から、どんな時にも涙を見せることのなかった弟があ

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月族1 プラリネの物語 今村恭子

月族1 プラリネの物語 今村恭子

辻仁成さんの作品と知り、読んでみたくなり、図書館で借りました。

飛鳥が薬子に話すお話に惹き込まれて、信じてしまいそうになりました。薬子になりきって読んでいたのかもしれません。

物語が進むにつれ、飛鳥のお話に出てくるプラリネと薬子が他人とは思えなくなってきます。

3巻まであるようで、2巻を早速予約しました。

1巻だけでも楽しめるファンタジーですが、2巻3巻も読みたいです。

父のビスコ

父のビスコ

読書記録[父のビスコ / 平松洋子 著 / 小学館]

食べ物の記憶というのは不思議なもので、もう何年もその食べ物にお目にかかってないのに、思い出した途端に鼻腔にその時の匂いが広がり、頭の中にその時の状況が浮かび上がる。
誰にでもそんな思い出の食べ物がひとつやふたつあると思うが、この作品は著者である平松洋子さんが生まれ育った倉敷で巡り合った食べ物、東京に出てから巡り合った食べ物など自分自身や家族と

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グルメとグルマン:安野モヨコ「くいいじ」

グルメとグルマン:安野モヨコ「くいいじ」

私は、note の自分のプロフィール(140文字以内)に「自称グルメにしてグルマン」と書いていたが「くいいじがはっている」となおしてみた。「自称」 すなわち「なんちゃって」とつけているところがポイントだったのだが、そこを読み取らない人も多そうだとも思ったのだ。いちゃもんつけられてもいちいち説明するのも面倒だ。

グルマン (gourmand) というのは、「たくさん飲み食いすることが好きな人」「健

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物作りって大変で、だけど面白い。

物作りって大変で、だけど面白い。

最近、図書館の児童書コーナーにハマっている。昔からわかってはいたけども、私はいわゆる大人向けの書籍コーナーにいるよりも、こっちの方が性に合うみたい。手に取るスピードも、借りる冊数も全然違うもの……。

そんな中で、今回特に「これはすごい!」と思った1冊を紹介させてください。

パンダ広告社に勤める主人公、本田パンダは5年目のコピーライター。彼の視点から、広告作成のあれこれや、言葉と格闘する様子が描

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「 もうひとつの居場所 」の物語

「 もうひとつの居場所 」の物語

「 逃げ出してしまいたい 」



今、そんな想いを抱いている人がいたら
ぜひ手に取ってみて欲しい本がある。

どこか懐かしく、少し切なく、とびきり温かい、
「もうひとつの居場所」を描いた物語。



雲を紡ぐ
特に、単行本120頁から122頁の
おじいちゃんの言葉、とても好き。

岩手の瑞々しく美しい自然と
糸を紡ぐ職人たちの芯通った心、
親子、夫婦の関係の再構築。
読み進めるにつれて
心が

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いつかパラソルの下で 森絵都

いつかパラソルの下で 森絵都

森絵都さんの大人の初作品なんだそう。

表紙にも惹かれて…

主人公は25歳の独身女性の野々。兄と妹がいる。

子供の頃、厳格だった父が亡くなり、生前父と関係のあったという女性から連絡が入る、、、父親のルーツを巡る旅に。。。

物語として、ありがちなお話しだと思ったけれど、登場人物の個性がよく描写されていて佐渡に行ったような感覚になったりも。

若い頃は、自分の生き方を親のせいにしていた私…夫、我

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美と幻滅、倦怠と幸福をめぐる物語

美と幻滅、倦怠と幸福をめぐる物語

2022.4.6(水曜日) BY NIGHTFALL

昨夜はたいした物を食べたわけじゃないのに胃がもたれて、食後に胃薬を飲んで9時半にはベッドに入った。
そんな早くから眠れるわけでもないが、横になって目を閉じているだけでも身体は休まると医者に聞いたことがあるのを思い出して、眠ろうという気持ちは捨てて、とにかく横になって何も考えずに目を閉じていたらいつの間にか眠っていた。
今朝は特に胃がおかしいと

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