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アルバムレビュー

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漫然とアルバムを聴いていると印象を忘れてしまうので、アルバムを聴きながら1曲づつ感想を書き留めてみることにしました。特にジャンルレス。その日選んだアルバムを聴いてレビューしていき… もっと読む
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2021年12月の記事一覧

Loudness / SUNBURST~我武者羅

Loudness / SUNBURST~我武者羅

総合評価 ★★★★★

今年最後のレビューはこちら。素晴らしい、ジャパニーズメタルの総帥、オリジネイターたる自負と気概を感じる見事な新作。40周年、29作目にして初の2枚組。魂のこもった凄味とどこか未だ粗削りな初期衝動が同居する唯一無二の世界観。これだけベテランなのにコンスタントにアルバムを出し続けるのは日本市場の特異性もあるだろうし、本人たちのストイックさもあるのだろう。コンスタントに出す、とい

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C. Tangana / El Madrileño

C. Tangana / El Madrileño

総合評価 ★★★★☆

CタンガナことAntón Álvarez Alfaro (born July 16, 1990)はスペイン、マドリッド生まれのラッパーです。ラッパーといいつつかなりメロディアスな歌も歌うので、「ラップが本職のポップシンガー」というべきか。基本的に最近のラッパーって歌えますからね。特に海外は。で、スペインのヒップホップグループAgorazein(アゴラゼイン)の1員でもあるよ

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Mägo de Oz / Bandera Negra

Mägo de Oz / Bandera Negra

総合評価 ★★★★★

そういえば今年はほとんどスパニッシュメタルを聞いていない。何か大物の新譜がないかと調べてたどり着いたのがこちら。結成33周年(1988年結成)を迎える大ベテラン、マゴデオズ(オズの魔法使い、のスペイン語)の最新作。

ベテランではあるがどこかB級メタル感はある。プロダクションがややチープ。だけれど作編曲能力は高いし、単調になりがちなメロディックパワーメタルの形式でさまざまな

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TEKE::TEKE / Shirushi

TEKE::TEKE / Shirushi

総合評価 ★★★★★カナダを拠点とするカナダ人と日本人の混合サイケデリックバンド。本作は2021年のデビュー作でカナダの権威ある音楽賞であるポラリス賞のロングリストの選出(ノミネート)された。もともと寺内タケシのカバーバンドが母体らしく、日本音楽とサーフミュージックがルーツだそう。バンド名も「テケテケ」。エレキギターのテケテケ音の擬音から。

ジャケットはアンビエントだったりスピリチュアルな環境音

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Mdou Moctar / Afrique Victime

Mdou Moctar / Afrique Victime

総合評価 ★★★★★

サハラ砂漠西部に住むトゥアレグ族にはギタリストのシーンがあるようで、砂漠のブルースでも呼ぶべき一群がいるらしい。その筆頭はTinariwen(ティナリウェン)だと思うのだけれど、新世代(まだ35歳)のギターヒーローがこちらのMdou Moctar(エムドゥ モクター)。バンド名ではなく個人名、ジミヘンドリックス、みたいなもの。砂漠のジミヘン、と呼ばれているそうな。ハウサ音楽

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hodíla ízba/Ходуном

hodíla ízba/Ходуном

総合評価 ★★★★★

ロシア発、11人組(4人の女性ボーカル)を擁するビッグバンド。ミクスチャーで祝祭感がある音像。グローバルポップの中でこうした音像のバンドはいくつかあるけれど完成度が高い。「ロシアならでは」の特異性があり、演奏技術も高く、作編曲能力も高い。4人もいる女性ボーカルのポリフォニーが迫力があるし、サックスソロやギターリフ、「いかにもロシア(というか旧共産圏)」な電子音、展開も盛り込

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Mon Laferte / 1940 Carmen

Mon Laferte / 1940 Carmen

総合評価 ★★★★★

チリ出身でメキシコで活躍するモル・ラフェンテの2021年作。2021年に2枚のアルバムをリリースしていてこちらは2作目。ラテングラミー賞にもっとも多くノミネートされたチリ人アーティストであり、勢いに乗っているSSW。本作はタイトルの通り1940年代というか、ちょっとオールディーズな感覚をテーマに作られているようで日本のムード歌謡とかサザンのバラード(サザンはもともとラテンロ

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Jaubi / Nafs At Peace

Jaubi / Nafs At Peace

総合評価 ★★★★☆

パキスタン、ラホールの4人組バンドが多くのゲストを迎えて作ったアルバム。基本はジャズロックと北インド音楽(ヒンドゥスターニー音楽)の融合であるが、北インド音楽とロックの融合、という意味ではこの記事で取り上げたアーティストのような衝撃はない。その分、西欧音楽というかジャズロックの範疇には収まっており、より普遍的な層にもアピールできるというか、バランスが良いのかもしれない。イン

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Eclipse / Wired

Eclipse / Wired

総合評価 ★★★★★

スウェーデン、北欧メタルの中堅、エクリプス。「北欧のメタル」というと人によってイメージするものが違うが(世代によって最初に想起するのが透明感のあるハードロックなのか、あるいは激烈なブラックメタルやメロデスなのかが違うだろう)、こちらは80年代的な、元来の意味での「北欧メタル」を奏でているバンド。完成度がとにかく高い。80年代スタイルのメタルを頑なに演奏しているけれど十分今の

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In Vision / In Vision

In Vision / In Vision

総合評価 ★★★★☆

ロシアのメロデスバンド、デビュー作。2021リリース。惜しい、あと一歩。メロデス作品としてはかなり完成度が高く、デビューアルバムというのは驚き。Triviumとかにも近い、アグレッションとメロディの組み合わせ方の才能を感じる。もちろん、デビューアルバムなのでTriviumのような「多重に重ねて盛り上がっていく力」とか「ドラマの緩急の幅」みたいなものは楽曲力も、もちろんプロダ

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Epica / Omega

Epica / Omega

総合評価 ★★★★★

これは聞き逃さなくてよかった。素晴らしい作品。それなりの話題盤だった印象だが、これだけの高品質な作品に見合うほどの話題になっていない気がする。シンフォニックメタルの最高峰。かつ、欧州伝統音楽色も強く、オリエンタルなメロディも取り込んでいてアルバム全体でのバラエティも豊か。70分を超える大作ながら聞き疲れない。驚くほどドラマティック。「シンフォニックである意味」がしっかりあり

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Snail Mail / Valentine

Snail Mail / Valentine

総合評価 ★★★★☆

ビョークのようなメロディラインとアコギ、インディフォーク的な音作り。時々オルタナティブロックが混ざった音。全体的にメロディセンスが良く、曲のバリエーションはあるがどの曲も世界観があってしっかり聴ける。無理にポップにするでもなく、口ずさんで作ったような自然体のメロディーが心地よい。インディーズらしさがある良作。

Valentine ★★★★☆ビョークのようなヴァース、オルタ

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Papangu / Holoceno

Papangu / Holoceno

総合評価 ★★★★★

ブラジルのプログレッシブメタルバンド。それなりにアグレッションはあるのだけれどエクストリームではなく、プログレッシブな色が強い。最近のキングクリムゾンぐらいの攻撃性。サックスも入ってくるし、先日見たキングクリムゾンライブにも近い感覚があった。音作りやメロディセンスは独特で、ブラジルならではの感覚も少し入っている。ブラジル音楽特有の「不思議なメロディーなのだけれど妙に説得力が

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Jinjer / Wallflowers

Jinjer / Wallflowers

総合評価 ★★★★★

ウクライナのバンド。グランジやオルタナを通過した音像で、基本はメタリックハードコアながらところどころにグランジ的な進行や、スラッジ的な酩酊感、そして東欧的な暗さややはり米国や西欧とは違う感じのメロディセンス、節回しが組み合わさっている。ところどころギターのフレーズがキングクリムゾン的。暴虐性、攻撃性が高くテンションが上がるが、攻撃一辺倒ではなくメロディアスなパートや酩酊感も

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