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Eclipse / Wired

総合評価 ★★★★★

スウェーデン、北欧メタルの中堅、エクリプス。「北欧のメタル」というと人によってイメージするものが違うが(世代によって最初に想起するのが透明感のあるハードロックなのか、あるいは激烈なブラックメタルやメロデスなのかが違うだろう)、こちらは80年代的な、元来の意味での「北欧メタル」を奏でているバンド。完成度がとにかく高い。80年代スタイルのメタルを頑なに演奏しているけれど十分今のサウンドとして通用するのは何より作曲の巧みさと編曲のうまさ、そしてプロダクションの良さだろう。そしてUSのヘアメタルバンドとはまた違うメロディセンス、北欧らしい透明感もある。マイナーコードの使い方が上手いんだよね。その分、USのバンドにある妙な勢いというか大陸的なおおらかさとかバッドボーイズの猥雑さはあまり感じないのだけれど、華やかなアリーナロック、80sメタルのフォーマットの魅力は普遍的に色あせない快感なんだなぁということを再認識させてくれる。クリスマスイブの夜にも似合う祝祭感と透明感のあるパーティーロック。おススメ。


Roses On Your Grave ★★★★★

雑踏の音、その中でだんだんとリフが響きだす。ライブハウスのシーンだろうか。一気にバンドがスタート。華やかなメタル。LAメタル感。LAメタル(UKではヘアメタル)とはUKのNWOBHMで盛り上がったソリッドなパワーコードのリフをそれまでアメリカで盛り上がっていたプログレハードというかポップハードロックと組み合わせた硬軟織り交ぜた、JourneyミーツIRON MAIDENやSAXONみたいな音楽性だった、とざっくりいえてしまう。まぁそれを一番体現したのはNWOBHMから現れたDef Leppardだったような気もするが。モトリークルーとかの猥雑でスキャンダラスな感じはあれはあれでキャラクター。こちらはデフレパード直系の完成度の高いポップソングかつメタルのエッジがしっかり立った音像。ポップでキャッチー、かつヘドバンもできる、メタリックドライブミュージック。しょっぱなからキラーチューン。


Dying Breed ★★★★☆

メロディアスなリフ、Beast In Black(BIB)の前作、フロムヘルウィズラブ的な衝撃もある。あれよりはパワーメタル成分は弱めでボーカルは超絶ハイトーンではないが、メロディセンスと透明感、メタリックな高揚感のバランスが程よい。


Saturday Night (Hallelujah) ★★★★★

「土曜の夜」という王道のパーティーロックテーマ。かつ「ハレルヤ」という、お隣フィンランドのLordiの出世曲「ハードロックハレルヤ」を彷彿させるテーマ。ちょっとボンジョビ感もあるのはサムデイ・アイルビー・サタデイ・ナイトを連想してしまうからか。ちょっと声はあの頃のジョンボンジョビに似ている、かも。華やかなアリーナロック、且つ、北欧的な透明感を感じさせるメロディ。これは(歌詞はあまり関係ないけど音像的に)クリスマスイブに相応しい祝祭感がある。


Run For Cover ★★★★☆

少しメロディの質感が変わった。哀愁を感じるメロディへ。(同じスウェーデンのバンドの)ヨーロッパ的でもある。ゲイリームーアにも同名曲があるが、ちょっとアイルランド的というかあの頃のゲイリーっぽさもギターフレーズには微妙に入っている。壮大なツインリード、最初の哀愁から盛り上がり、後半は祝祭感が続く。


Carved In Stone ★★★★☆

アコースティックなバラード。暖かいハーモニー、プライベートで距離が近い感じがする。だんだんと壮大に盛り上がるパワーバラード。しっかりと熱量が高まっていく。


Twilight ★★★★★

少し静かにスタートし、そこからリフがそのままシンガロングなウォウウォウコーラスへ。アリーナロックの王道。だけれどチープさはなく、けっこう硬派なビート、アレンジが凝っている。おお、これは編曲の妙。うまくタメてサビの解放感を作っている。ボーカルとリフのユニゾンも効果的。


Poison Inside My Heart ★★★★☆

静かなオープニングから溌剌としたバンドサウンドに変化する。フックのあるコーラス。素晴らしいなぁ。80sメタルのエッセンスをしっかり継承しつつ2021年の作品としてのエッジもあるし、焼き直しではない個性、北欧というかスウェーデンのメロディセンスとこのバンドの個性も感じる。進化、深化してきた80sメタルを感じる。フォーマットとしてのヘアメタルはまだ改良の余地があったというか、これだけ良質な曲を立て続けに生み出せば高揚感を生み出せる、色あせないフォーマットなんだな。


Bite The Bullet ★★★★

少し迫力がある曲、グランジ以降の音のエッジがある、というか。ややダーク。ただ、ダウナーな感じはなく、あくまでギターサウンドに勢いがある、程度。歌メロはしっかりキャッチーだし、00年代以降のメロハー、という感じの曲。


We Didn‘t Come To Loose ★★★★

ビッグビート、というか、ビートが強調され、そのビートに合わせて曲が盛り上がっていく。リズムが強い曲。We Will Rock You的というか、あしを踏み鳴らすミドルテンポのリズムの上で壮大なコーラスとギターソロが舞う。拳を突き上げるアリーナロック。ツインリードがちょっとシンリジィ感がある。コーラスとリフが絡み合う感じはDanger Dangerとかも思い出すな。


Things We Love ★★★★★

おや、メイデンみたいなスタート。アイリッシュなメロディをウーマントーンのギターが奏でる。そこからバンドが入ってきてメイデン色は薄まる。フェアウォーニング的。そういえばフェアウォーニングってドイツなんだよな。ウリジョンロート、ジーノロートとかフェアウォーニングをなんとなく連想させるのはメロディアスなギターのオープニングの所以か。煽情的なメロディ。


Dead Inside ★★★★☆

哀愁と勢いを兼ね備えたメロディ、アルバムの最後の曲。かすかな余韻を残してアルバムが終わる。

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