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Jinjer / Wallflowers

総合評価 ★★★★★

ウクライナのバンド。グランジやオルタナを通過した音像で、基本はメタリックハードコアながらところどころにグランジ的な進行や、スラッジ的な酩酊感、そして東欧的な暗さややはり米国や西欧とは違う感じのメロディセンス、節回しが組み合わさっている。ところどころギターのフレーズがキングクリムゾン的。暴虐性、攻撃性が高くテンションが上がるが、攻撃一辺倒ではなくメロディアスなパートや酩酊感も加わっている。これだけ高いテンションを保ちながら聴き疲れさせない構成力と引き出しの多さは見事。カナダの新星、スピリットボックスにも近いものを感じる。


1 Call Me A Symbol 4:21 ★★★★★

つんのめるようなドラム、ハードコア色の強いスクリーム。メタリックハードコア。メロディ感はなく、勢いと音圧で押してくる。女性クリーントーンのパートが入る。こういうパートは個性だな。そこからキングクリムゾン的なリフへ。後半、メロディアスなパートに展開するのが面白い。

2 Colossus 3:37 ★★★★☆

やや間欠的なリズムに。引っ掛かりがある。ところどころに入ってくるメロディアスなパートがいいな。メロディアス過ぎず、激烈性を保ちながら緩急をつけてくる。グランジな感じだがウクライナの特性も感じるメロディ。

3 Vortex 4:02 ★★★★☆

メロディアスでグランジメタル、ニューメタルな感じだが女性ボーカルなのが新鮮に響く。この曲は前の曲と逆でメロディアスな中にスクリームが混ざってくるな。全体としてはグランジを通過した2020年代のメタリックハードコアで、エンプロイドトゥサーブとかにも近い感じだが、差し挟まれるメロディアスなパートが少しエキゾチックなメロディで面白い。東欧的。

4 Disclosure! 3:47 ★★★★☆

こちらはグランジーな音像の中でハイトーンスクリームが踊る。ロブハルフォードのファイトみたいな感じ、かも。音はすごくモダンになっているが。途中から言葉数が増える。ハードコア的に変化。カッコいい。キングクリムゾン的なリフが後半出てくる。無調感でヘヴィネスを表現するとヌーヴォメタルっぽくなるんだな。

5 Copycat 4:23 ★★★★☆

ダウナーでグルーヴィーなリフとメロディアスなボーカル。途中から疾走感が出てくる。モダンヘヴィネスの作法に則った完成度の高い曲。このボーカル、強烈なグロウルとすこしハスキーからハイトーンまで出るクリーントーンボーカルの両方を使えるのが強いな。表現の幅が広い。

6 Pearls And Swine 5:20 ★★★★☆

ヘヴィなリフ、途中からクリーントーンへ。うん、グランジの出始めの頃のような独特の雰囲気とエネルギーがあるな。90年代リバイバルといえばそうなのかと。サウンドガーデンとかあの辺り。そこにモダンヘヴィネス、メタリックハードコアの手法を取り入れて現代的なアグレッションの表現にしている。スロウなパートはヘヴィかつメロディアスでストーナー的でもある。じっくり展開していき、独自の雰囲気がある。

7 Sleep Of The Righteous 4:32 ★★★★★

ヘヴィなパートからスタートし、メロディアスなボーカルパートへ。ただ、メロディアスと言ってもコード感はそれほど強くなく、無調まではいかないがそれほど展開はしない。ボーカルだけがメロディアスというか、クリーントーンで独特の節回しの歌。暗黒の抒情性。かといってヘヴィすぎず、緩急の具合がかなり良い。

8 Wallflower 4:18 ★★★★☆

ベースとドラムと声、ちょっと中期以降のレッチリ的な。グランジを通過してるんだな。ストーナー、スラッジ的な音像。雰囲気がある。

9 Dead Hands Feel No Pain 4:09 ★★★★☆

メロディアスでスピーディーなリフとボーカル。後半になるにつれてメロディアスになっていくのか。上手い構成。ずっと押されると疲れるし。途中からアグレッションが強まっていくが、ギターリフがメロディアスでベースもうねる様になってきた。心地良い酩酊感だが音圧は高く攻撃性も高いからテンションが下がらない。女性ボーカルのハードロックリバイバル、ルシファーとか、にも近い世界観かも。基本的にビートがしっかりしてるんだな。

10 As I Boil Ice 4:22 ★★★★★

ミドルテンポ、重心低めで攻めてくる。ドラムの手数多め。スピリットボックスにも近いかもな。グランジ、オルタナな感じをうまく取り入れている。さらに東欧的な暗さ、ちょっとエキゾチックなボーカルの感じが加わって独特さが出ている。気がつくと抒情的なパートでしっとり終焉。

11 Mediator 4:30 ★★★★★

ヘヴィなリフだが歯切れが良い。お、ストップアンドゴーからハードコア的な疾走へ。グラインド的。グルーヴィーなリズムに代わりボーカルが入ってくる。ビートの切り替わりが多い。クライマックス的な盛り上がり。アルバムの最後に相応しい。

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