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Epica / Omega

総合評価 ★★★★★

これは聞き逃さなくてよかった。素晴らしい作品。それなりの話題盤だった印象だが、これだけの高品質な作品に見合うほどの話題になっていない気がする。シンフォニックメタルの最高峰。かつ、欧州伝統音楽色も強く、オリエンタルなメロディも取り込んでいてアルバム全体でのバラエティも豊か。70分を超える大作ながら聞き疲れない。驚くほどドラマティック。「シンフォニックである意味」がしっかりあり、各パートの意味もしっかりある。それぞれのパートに主役となるメロディやリフがあり、そこにスポットが当たりつつも舞台(音像)の中では別の物語もしっかり進んでいる(バッキングや編曲)という印象。音だけのドラマだけれど、一つの舞台を見終えた感覚、壮大なライブを体験した感覚がある。感動。

Epicaはオランダのバンドで女性ボーカル(ソプラノヴォイス)と男性ボーカル(グロウルボイス)を擁している。メロデス的なパートからオペラそのものなパートまで、音のふり幅が広く聞き手の感情も大きく揺さぶってくる。本作は5年ぶり8枚目のアルバム。

Alpha - Anteludium 1:38 ★★★★

ピアノとオーケストラによる荘厳なイントロ。ややフォーキーな、欧州伝統音楽的、指輪物語のサントラ的なメロディといえば伝わるだろうか。壮大な物語の始まりを感じさせるオープニング。期待が高まる。

Abyss Of Time - Countdown To Singularity 5:20 ★★★★☆

そのままエナジーが上がっていきバンドサウンドが入ってくる。疾走より勇壮感。グロウルボイスとソプラノボイスの対比、二つのボーカルが絡み合う。二人の神々というか、神話の光景のような。大地の神と天上からの女神のデュエットのような荘厳さ。ドラムパターンはコーラスではツーバス連打だがそれほど重苦しさはない。オーケストレーションが前面に出ている。NightwishとTherionの中間ぐらいのサウンドプロダクションだな。シンガロングなコーラスが多重に重なり合い、近年の(疾走感より荘厳さを増した)ブラインドガーディアン的な曲構成でもある。きちんとパワーメタル的なリフの構築美もある。シンフォニックさはかなり高いもののしっかりメタル感もあり。オープニング、旅立ちというかスタートに相応しい高揚感のある曲。コーラスのメロディライン、隣国ドイツに通じるかっちりした感じもあるがマイナー調のメロディ感覚などは少し違うものを感じる。これがオランダの感覚なのか。

The Skeleton Key 5:06 ★★★★★

ミドルテンポでじっくりとしたテンポ、MetallicaのS&M2のような音像。女性ボーカルが入ってくると一気にファンタジックな世界観が深まる。めくるめくオペラティック、ドラマティックな展開。次々とパートが展開していく。バグパイプのフレーズのような節回しも取り入れたギターソロ。中世欧州音楽的な要素がけっこう入っている。クラシック音楽、宮廷の職業作曲家による純音楽的な要素ももちろんだが、もっと民族音楽的な要素も多分に取り入れられている。

Seal Of Solomon 5:28 ★★★★★

少しエスニックなフレーズ。オランダも一大帝国であったからどこかからエスニックなものを持っているのか。ただ、メロディとしてはエジプトやトルコ、チュニジアといったオリエンタルメタル的要素。トルコ行進曲のように「そうした音楽の影響を取り入れてみた」ということだろう。単純にRainbow的なものかもしれないな。様式美というか一部エスニックなメロディも取り入れたりするのはリッチーブラックモアも行っていたし、メイデンも行っている。伝統芸。この曲はメロディが新鮮で良い。なんというか、ディズニー的とも言える。さまざまな地域の音楽文化の要素が入り混じる、ワールドカーニバルのような曲。豪華絢爛。

Gaia 4:46 ★★★★☆

ゴシックなハーモニー、それと対峙する女性ボーカルのフレーズと声が心地よい。どっしりした機銃掃射のようなリズムに乗ってコーラスが進む。進軍的な曲。タイトルからして地球に関する歌か。ドラムの手数が多い曲。手数は多いが音作りは軽快。テンション高め。

Code Of Life 5:58 ★★★★★

またエキゾチック、オリエンタルなイメージのメロディ。チュニジアのMyrathにも近い雰囲気を感じる。砂漠。タブラのような音がする。タブラじゃなくこれ北アフリカの打楽器だな。何て言ったかな。モロッコとかあっちの方にある楽器。エキゾチックなリフがそのままギターリフに変わる。これはカッコいいな。こういうミドルテンポでじっくり煮立っていくような曲は凄味を感じるな。一応グロウルも入ってくるのだけれど、アグレッション云々より「そういうキャラクター」というか、壮大な一つのミュージカル、オペラの中の必要な登場人物、という感じがする。ボーカルもそう。すべてが一つの物語に集約されていく。これは壮大だなぁ。去年のNightwishのアルバムもかなりシンフォニックメタルの極限を推し進める内容だったけれど、こちらはよりオペラティックでありドラマティック。

Freedom - The Wolves Within 5:37 ★★★★★

波のような、引いては返すリフ、そして荘厳なコーラス。ハレルヤコーラス的。その中をソプラノボーカルが立ち昇り、照らしていく。グロウルボイスとのデュエット。この曲は耳に残る、キャッチーなフックがある。ちょっと北欧感もあるメロディ、ABBAとか。メインメロディはわかりやすかったものの中間部でメロディが展開し、パートが目まぐるしく入れ替わっていく。

Kingdom Of Heaven - Part III - The Antediluvian Universe 13:24 ★★★★★

焚火の音だろうか、そこに民族音楽的な縦笛が響く。ドラマの一シーンのような情景が浮かぶ音像。長尺曲だけありじっくりとドラマが展開していく。堂々とした展開、ヘヴィなリズムでメロディが展開する。Rainbowのスターゲイザーのような、少し緊張感のあるボーカルライン。さまざまなパートを経て途中は疾走シーンへ。ただ、各シーンが無闇と展開するわけではなくじっくり腰を据えて物語が進んでいく印象。じっくりとドラマに浸ることができる。この曲は激烈性へのふり幅も大きく、アグレッション強めなパートではメロデス的、ブラックメタル的な音像まで達する。今までの曲にも出てきたさまざまな要素がじっくり練られ、さらに掘り下げられて表現される。それに合わせて聞き手の感情の揺れ幅も大きくなる。

Rivers 4:48 ★★★★★

前の曲でクライマックスを迎えたまま、「次の章」が幕を開ける。別のシーンに変わったことを感じさせる静謐な始まりだが、空気感は繋がっている。後日譚というべきか。透き通るソプラノヴォイスが響く。シンフォニックなパワーバラード。ボーカルの歌唱力を堪能できる曲。

Synergize - Manic Manifest 6:56 ★★★★★

急に空気が変わりツーバスの疾走へ。緩急のつけ方がダイナミックで聞き飽きない。このアルバム70分ある長尺のアルバムなのだが、ここまで聞き疲れがないな。凄い。疾走するメタルパートと荘厳なオペラパートのそれぞれの変容が大きく、見事な緩急がある曲。

Twilight Reverie - The Hypnagogic State 4:29 ★★★★☆

かなりシンフォニックだが前の曲よりは少しテンションが下がった、というか、ボーナストラック的な始まり。普通にメロディアスで良い曲ではあるが小曲感がある。前曲で一度コンサート本編が終わり、ここからアンコール、といった雰囲気もある。ライブ的な作りになっているな。中間部のオーケストレーションから語り、そしてカーカスのようなかっちりしたメロデスパートへ。再びテンションが高揚していく。滑らかにギターソロが入ってくる。曲のそれぞれのシーンでしっかり主役となるメロディやリフがあり、そこにスポットが当たりつつそのほかのパートでもドラマが起きている。舞台上で多くの出来事が同時進行しているかのような、だけれど一つのドラマが展開していく感じがある。

Omega - Sovereign Of The Sun Spheres 7:06 ★★★★★

ファイナルカウントダウン的な、シンセというかシンセ的な管楽器のフレーズが鳴り響き曲がスタートする。アルバムの最後に相応しく壮大なスタート、そこから激烈性が高いパートへ。これは期待が高まるオープニング。最後の曲らしいクライマックス感がある。伝統楽器色、プログメタル感、パワーメタル、ソプラノボーカル、すべての要素が絡み合う。

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