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運命の夏

河川敷を歩いていたら、水面にきらっと光るものがある。音楽をヘッドホンで垂れ流しながら、私は前のめって水の中を覗く。知らない魚が、ちらちらと泳いでいる。その白い腹…

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1年前
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スーパーノヴァ

車窓の中で知らない街がとおりすぎていく。私はまた大学に向かっている。一学期が終わる。おわって、夏が来て夏を超えて秋になって冬が過ぎてまた一年が回る。今年が終わる…

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3日前
9

つめあわせ 夏

夏。 エアコンの効いた部屋から出た時。廊下から階段まで立ち込めた、むわっとした空気。吸い込んで、肺いっぱいに重たい熱気が満ちたとき、きもちい。まだ身体の表面に、…

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2週間前
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読まなくていいよ

4月が始まってから、あらゆることがらがドッと降りかかってきて、自らで支配できない激流のなかにいた。ずっとノート書きたくて、何か文字にしないとなと思ってたんだけど…

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1か月前
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rockin’on 2024/5

「カートコバーン 没後30年」 表題に目を奪われた。モノクロの表紙と、鮮烈な赤で縁取られた文字。手に取るとずっしりと重たい。今月の、ロッキンオン。 捲って捲って、…

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3か月前
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海がきこえる / 再上映

なにがなんだかわからず、ただ涙が出て堪えるのに必死だった。淡々と、しかし匂いや手触りや空のかたちや海の音がはっきりとみえる、そんな作品だった。海がきこえた。 ジ…

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3か月前
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2023 best books

日記に書き溜めていた感想たちをそのまま抜粋します。2024年もいっぱい読むぞ。 ①みどりの月  角田光代 申し訳ないことに、この本は私の中でダントツの寝落ち本である…

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6か月前
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原点に戻る

つかれた。つらかった。漠然とした不安やさみしさはどうしてこうも襲いかかってくるのか。安心しようと息を吸っても、喉のところで貼りついて、ひりひり痺れる。何かがない…

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7か月前
3

All about lily chou-chou

リリイシュシュのすべて / 岩井俊二(2001) 相も変わらず、盛大にネタバレ&衝動書き 二限休んで全部見た。言語化出来ない感情が渦巻いていっぱいいっぱいだ。体が熱い。…

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9か月前
9

一生飽きないこと

本を読むのが好きだ。文章がなかったら、誇張なしで今の私はここにいない。 小学生の時は毎日暇だったので、学校から帰ってランドセルを置くとすぐ本を開いた。本棚は畳の…

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1年前
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追憶の中の

ツイッターがなくなったらやばい、と思い、日曜日にマストドンやその他諸々のアプリケーションのアカウントを作った。が、今日になって復旧(?)したらしく、なんやねんイ…

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1年前
5

チェンソーマン 漫画第一部感想メモ

正直に言えばよくわからなかった。でも読み終えたあとに熱く残るものがあったのは感じた。会えて良かったし読んで良かったし素晴らしい作品だったと思った。 まずカットひ…

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1年前
3

amebic

盛大にネタバレ。というか衝動書き 怖かった。とにかく恐怖で、あ、大丈夫なの?死んでしまったのではないの?彼氏は誰?婚約者は誰?もしかしてすべて「私」の分裂したも…

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1年前
5

村上龍さんについて

久しぶりに本を読んだ。 音楽をシャッフルで垂れ流しながら夕食を食べている途中、ハッと思い立ち本棚の前に行った。なにも考えずにすらりと抜き取ったのはまだ一度も読ん…

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1年前
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運命の夏

運命の夏

河川敷を歩いていたら、水面にきらっと光るものがある。音楽をヘッドホンで垂れ流しながら、私は前のめって水の中を覗く。知らない魚が、ちらちらと泳いでいる。その白い腹が、陽の光に反射してきらきらと光っている。
全部終わったんだ、とふと思う。

去年の今頃は勉強尽くしだった。だって受かりたかったし、やりきりたかったし。でも周りの子たちは私よりもっとやってるみたいだった。それを知ってからは、燃え盛っていたや

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スーパーノヴァ

スーパーノヴァ

車窓の中で知らない街がとおりすぎていく。私はまた大学に向かっている。一学期が終わる。おわって、夏が来て夏を超えて秋になって冬が過ぎてまた一年が回る。今年が終わる。
今年が終わったら、会えなくなる人もいる。二年生までで二外(第二外国語のこと)はおしまいだから、ドイツ語のみんなには会えないね。英語のクラスの友達にも会えないね。
大学を卒業してどれくらいの人がこれから先も友人でいてくれるんだろう。本当に

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つめあわせ 夏

つめあわせ 夏

夏。

エアコンの効いた部屋から出た時。廊下から階段まで立ち込めた、むわっとした空気。吸い込んで、肺いっぱいに重たい熱気が満ちたとき、きもちい。まだ身体の表面に、エアコンの冷気が残ってるから、暑さに支配されきることはない。夏だな、と思いながら呼吸できる。その余裕がある。

入道雲を見た時。高くあがる、白いふわふわ。空はパリッと青い。爽やかな、白と青のコントラスト。そのうえ、雲のある方向に走ってみる

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読まなくていいよ

読まなくていいよ

4月が始まってから、あらゆることがらがドッと降りかかってきて、自らで支配できない激流のなかにいた。ずっとノート書きたくて、何か文字にしないとなと思ってたんだけど何も思い浮かばず、今適当に打ち込んでいる。

なんだか私の人生は大学入学とともにおかしくなっちゃった。歯車が狂うってこういうことなんかな。息のしやすかった、楽しかった輝かしい毎日が苦しく鉛みたいな日々に変わった。大好きなひとたちが笑わなくな

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rockin’on 2024/5

rockin’on 2024/5

「カートコバーン 没後30年」
表題に目を奪われた。モノクロの表紙と、鮮烈な赤で縁取られた文字。手に取るとずっしりと重たい。今月の、ロッキンオン。

捲って捲って、ひたすら読んだ。知っていた話も知らなかった話もあった。あのころの写真、あのころのインタビュー、歌、レコーディング、ドラッグ、アルバム。文字を追いかけているうちに何もかもがなだれ込んできて、もうだめだった。読み終わったあと、顔を上げて書店

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海がきこえる / 再上映

海がきこえる / 再上映

なにがなんだかわからず、ただ涙が出て堪えるのに必死だった。淡々と、しかし匂いや手触りや空のかたちや海の音がはっきりとみえる、そんな作品だった。海がきこえた。

ジブリが大好きだ。
小さいときから金曜ロードショーでやるたびに、修学旅行のバスの中でビデオが再生されるたびに、食い入るように観た。でも、この作品は見たことがなかった。ネットニュースで再上映をBunkamuraで行うことを知り、行こうと思った

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2023 best books

2023 best books

日記に書き溜めていた感想たちをそのまま抜粋します。2024年もいっぱい読むぞ。

①みどりの月  角田光代
申し訳ないことに、この本は私の中でダントツの寝落ち本である。なぜって、通しで二十ページも読めたためしがないからだ。しかし、誤解はいけません。決してつまらないものではない。
みどりの月、かかとの下の空、と2作品が収録されているこの本は、とにかく怠い。温い。ほこりっぽい。現実的。ありありと、人生

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原点に戻る

原点に戻る

つかれた。つらかった。漠然とした不安やさみしさはどうしてこうも襲いかかってくるのか。安心しようと息を吸っても、喉のところで貼りついて、ひりひり痺れる。何かがないと、何かにすがりつかないと、やっていけない時がある。それが今だった。

たすけて、と思いながら久々に懐かしい漫画を読んだ。本棚の一角を陣取る、大好きな作品。背表紙のキャラクターたちをなぞって、作者の名前をなぞって、涙が出た。大好きな、死ぬま

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All about lily chou-chou

All about lily chou-chou

リリイシュシュのすべて / 岩井俊二(2001)
相も変わらず、盛大にネタバレ&衝動書き

二限休んで全部見た。言語化出来ない感情が渦巻いていっぱいいっぱいだ。体が熱い。想いが熱になって身体中を駆け巡っている。凄いものを見てしまった。きっとこの映画以外で二度と同じような気持ちを味わえない。苦しくて、耐えきれなくて、抜け出せなくて、それでもどこか輝かしい。

ストーリーは最後まで救いがなく、苦痛の連

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一生飽きないこと

一生飽きないこと

本を読むのが好きだ。文章がなかったら、誇張なしで今の私はここにいない。

小学生の時は毎日暇だったので、学校から帰ってランドセルを置くとすぐ本を開いた。本棚は畳の部屋にあり、右のすみっこで静かに鎮座していた。大きな窓を背にして本棚の端に陣取り、ページを開く。始まっていくお話に、しずかに息を詰める。
リビングから死角になるその場所は、絶好の読書スポットだった。とても気に入っていたので、親は私が見つか

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追憶の中の

追憶の中の

ツイッターがなくなったらやばい、と思い、日曜日にマストドンやその他諸々のアプリケーションのアカウントを作った。が、今日になって復旧(?)したらしく、なんやねんイーロンマスクの気持ちで腸が煮え繰り返りである。

ま、まだAPIがどうのこうのあるみたいだけど。

私、数年前にスマホを持った。初めてインターネットを手のひらの上に乗せた。ずっと憧れていたのはツイッター。知らない人と繋がり、好きなものを共有

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チェンソーマン 漫画第一部感想メモ

正直に言えばよくわからなかった。でも読み終えたあとに熱く残るものがあったのは感じた。会えて良かったし読んで良かったし素晴らしい作品だったと思った。
まずカットひとつひとつや構成、演出が素敵でセンスが凄い。そして、まともであることの愚かさ。救いのない現実的な展開。死は平等に来て、誰もが苦しむもの。絶望が重なっていくし、ごちゃごちゃでもう目も当てられない感じになっていく。でもデンジが何度も立ち上がるの

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amebic

amebic

盛大にネタバレ。というか衝動書き

怖かった。とにかく恐怖で、あ、大丈夫なの?死んでしまったのではないの?彼氏は誰?婚約者は誰?もしかしてすべて「私」の分裂したものが表す幻覚?とか思って読後ぐるぐるした。なにより、錯乱したときの文章が読みやすくて、あこれ考えるわ、と思ったし、分裂するかんじ、身体の一部分であるものが自分のものではなく離れてある感じ、すごい分かる。もしかしたら誰だってこんなふうに狂っ

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村上龍さんについて

村上龍さんについて

久しぶりに本を読んだ。
音楽をシャッフルで垂れ流しながら夕食を食べている途中、ハッと思い立ち本棚の前に行った。なにも考えずにすらりと抜き取ったのはまだ一度も読んだことがない小説、村上龍さんの69。

食卓まで戻り、単行本のピンクの表紙を見ながら夕食をかっ込んだ。何がかは分からないが、私をとんでもなく急き立てるものがあるのは事実だった。時折、こんなふうにどうしようもなく本が読みたくなるのだ。それも特

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