つめあわせ 夏
夏。
エアコンの効いた部屋から出た時。廊下から階段まで立ち込めた、むわっとした空気。吸い込んで、肺いっぱいに重たい熱気が満ちたとき、きもちい。まだ身体の表面に、エアコンの冷気が残ってるから、暑さに支配されきることはない。夏だな、と思いながら呼吸できる。その余裕がある。
入道雲を見た時。高くあがる、白いふわふわ。空はパリッと青い。爽やかな、白と青のコントラスト。そのうえ、雲のある方向に走ってみるとなお良い。なんかよくある映画の一コマみたいだ。主人公然として自転車を漕ぎまくっている自分、かわいいんじゃねと思う。
夕陽。電車の中で窓のとこにもたれていると、スマホやら本やら自分の頬やらに、金色の光の帯がかかる。ハッとして顔をあげると、前の疲れた顔したおじさんや、物憂げな表情の女の人の身体にも、金色がまぶされてる。ものが、一番やわらかく優しい輪郭をおびる時間。
ラーメン食べているとき。私はラーメン狂だから年中ラーメンを食べてるんだけど、夏はいいねえ。汗かきながらちょっと辛めの脂の乗ったラーメンを食べるの、きもちい。達成感が冬の倍。横をちらっとみれば、友人の額にもまるい汗の粒が浮かんでいる。この熱ごと、一緒に受け止めている、気がする。
バイトや学校を終え、夜遅くに帰って缶ジュースを飲むとき。もう20だからビール飲めるんだけど、炭酸が苦手で手を出してない。それと、おじいちゃんと約束したから。成人したら、初めてのお酒はおじいちゃんと飲むって約束。まあ、おじいちゃんは死んじゃって、もういない。
代わりに缶ジュースを、帰り道によく寄るコンビニで買って帰る。最近はネトフリで暗殺教室をみてます。暗殺教室を見ながら、ピーチネクターの缶々のフタをぱしゅっと開ける。この音が好き。私の、張り詰めていた気持ちもぷしゅっと抜ける。テレビの音と私の咀嚼音だけがする、誰もいないリビング。
本当は、夏が苦手だ。絶対病むから。あついし外出たくないし、家にこもってしまう。こもってると罪悪感が湧くんですねえ。今日も家出ないで映画ばっか見てたなーと、夜、自分の部屋で天井を見上げて考えてるとき、漠然とさみしさが襲ってくる。私、いま大学生で、若くて、みずみずしいのに。あれ、これで大丈夫?
今年も怖い。怖いけど、夏服は好きだし、海も花火も、夏がもたらすものたちは、結構好きだよ。
ゆるやかに、少しずつ、気持ちもあがってきて、好きだった人とも話せるようになって、みんなで夏遊びに行こーとか、普通の友人としての会話をDMでしたりとか。ご飯も食べるようにしてる、痩せすぎていたから大学でカウンセリングを受けている。家族のことも話せている。
前回の記事、たくさんの人が読んでくれて、うれしかった。書いてる時は絶望で、おしまいで、涙がとまらなくて、夜が無限だった。
みんなからの好きで、救われました。
ありがとう。私は元気にやってます。みんなも自分を傷つけすぎることのないように。悲しみに支配されないように。
今日は夕陽がきれいだね。一週間、がんばったね。
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