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All about lily chou-chou

リリイシュシュのすべて / 岩井俊二(2001)
相も変わらず、盛大にネタバレ&衝動書き

二限休んで全部見た。言語化出来ない感情が渦巻いていっぱいいっぱいだ。体が熱い。想いが熱になって身体中を駆け巡っている。凄いものを見てしまった。きっとこの映画以外で二度と同じような気持ちを味わえない。苦しくて、耐えきれなくて、抜け出せなくて、それでもどこか輝かしい。

ストーリーは最後まで救いがなく、苦痛の連鎖のようだった。つらくて早く終わって欲しいと何度も願った。埃っぽい閉塞感、田園の草いきれ、電車の中で聴いた音楽、踏み潰された一万円札、和室に並べられたふたつの布団、望遠鏡から見上げた夜空、その先の宇宙。宇宙はどこまでも続いている。もしかしたら未知の生命体がいるかもしれない。だが見つけるには、あまりにも広い。

頭上には莫大な世界が広がっているのに、この一田舎に閉じ込められた少年にはなす術が無い。逃げたくてもどうしようもない。世界はあまりにも小さく、完結している。等身大の中学生の、教室ひとつぶんの世界。殴られ、無為に奪われ、絶望をこれでもかと味わわされる。殺される、と恐怖する感情は決して誇張ではなかった。追い込まれた苦しみ。言葉にしようのない、どうしようもない痛み。
苦痛の繰り返しに死を選ぶひともいる。死がちょうどすぐそばにいる。思春期。青々としたみずみずしい時代。しかし見える色は灰色だ。光のない、うすぐらい闇の中にいる。

ナイフで刺した感覚を思う。穢されたエーテルを思う。リリイシュシュの始まりは彼からだった。唯一の救いだった液晶上の人間は彼だった。リリイシュシュのすべてはなんだった?彼が割ったあたらしいアルバム。呼吸。生き続けることの強さ。彼女の音楽。咆哮。青春が切り裂いたもの。リリイシュシュ。どこからが間違いだったのか。どこからが音楽だったのか。音はもう聴こえないのか。エーテルはまだそこにあるか?

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