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僕たちとBUMP OF CHICKENは、「切なさ」を超えて出会えたんだ

【BUMP OF CHICKEN/『BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER SAITAMA SUPER ARENA』】

自分の人生を彩り、照らし、支えてくれるバンドとして、BUMP OF CHICKENを選ぶ人は本当に多い。

彼らの音楽は、長い年月の中でいくつかの世代を超えて、数え切れないほど多くのリスナーに愛されている。

藤原基央が生み出す楽曲は、作品を重ねるごとに明確な変化を遂げているにもかかわらず、"天体観測"も"ray"も、同じ温度、同じ手触りで僕たちを包み、一つに結んでくれる。

それはとても不思議な感覚ではあるが、今回の映像作品を観ることで納得ができた。


BUMP OF CHICKENの表現の出発点、そして核心は、いつまでも変わることはない。

それは「切なさ」である。

「過去」と「今」と「未来」は一直線上にしか存在することができない。

自分自身の時間軸しか生きることができない僕たちは、大切な人の「過去」を遡ることも、「未来」を覗き見ることもできない。

同じ記憶を積み重ねて、同じ明日を思い描くためには、同じ「今」を共有するしかない。

だからこそ、残酷に過ぎていく一瞬一瞬があまりにも尊い。

そして、当たり前のように隣に居ることができている時間でさえ、どうしようもなく切ない。

その前提の上に成り立つからこそ、BUMP OF CHICKENと僕たちのコミュニケーションは、いつだってかけがえのないものになる。


《出来るだけ離れないで/いたいと願うのは/出会う前の君に/僕は絶対出会えないから/今もいつか過去になって/取り戻せなくなるから/それが未来の/今のうちに/ちゃんと取り戻しておきたいから》("宇宙飛行士への手紙")
《過去からの声は何も知らないから/勝手なことばかり/それは解ってる/未来の私が笑ってなくても/あなたとの今を覚えてて欲しい》("pinkie")
《一緒に見た空を忘れても/一緒にいたことは忘れない》("花の名")


今回のツアーは、特定の作品のリリースに紐付いたものではないため、22年間の歴史を総括するようなセットリストが組まれた。

BUMP OF CHICKENが表現し続けてきた「切なさ」の輪郭が、数々の名曲によって浮き彫りになっていく展開に、僕は強く胸を打たれた。


そしてもちろん今回のツアーは、ただ単にこれまでの歴史を振り返るためのものではない。

改めて思い知らされた、彼らの「今」の輝きを伝える数々の新曲たちは、どれも本当に素晴らしい。 

特に"記念撮影"は、新たな代表曲の一つとして、これからより広く、より深く愛されていく楽曲になると思う。

スクエアでシャープな音像は、圧倒的な未知性を放ちながらも、そこに乗るカジュアルな言葉たちは、彼らが表現し続けてきた「切なさ」の本質を見事に射抜いている。

《想像じゃない未来に立って/僕だけの昨日が積み重なっても/その昨日の下の/変わらない景色の中から/ここまで繋がっている》("記念撮影")


2016年リリースのアルバム『Butterflies』以降に発表された新曲は、現時点で計8曲。

今回のツアーで披露された"アリア"、"アンサー"、"リボン"、"記念撮影"、タイアップ楽曲として届けられている"シリウス"、"Spica"、"望遠のマーチ"、そして先日、映画『億男』の主題歌として予告編で一部解禁された"話がしたいよ"。

もちろん全ての新曲が収録されるかは未定ではあるが、やがて発表されるであろう新作の全体像は既に浮かびつつある。

23年目にして、新たな最高傑作が生まれる予感を抱いているのは、決して僕だけではないと思う。


※本記事は、2018年9月1日に「tsuyopongram」に掲載された記事を転載したものです。

「tsuyopongram」はこちらから


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