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#週刊少年マガジン原作大賞
【呻吟】ーーとの賭け
父、母が複雑そうな面持ちで立っていた。
一年振り。こんな娘を迎えに来てくれるようなそんな寛大な親だったらしい。
おかしなもので、私の心は浮足立ち。社内での両親の話も耳に入ってこなかった。
それもこれも、両親の発した一年振の言葉が、失跡でもお帰りでもなく、「殺人未遂で事情が事情だったから、こんな一年で帰ってこれたんだ」というようなことだったからだ。期待せざるを得ない。
他にも、「精神病」
【呻吟】理の日 before.
ーーを正面に据え、この手を血で染めることとなる三日前。ーーは寂しい教室で私と向かう合う。
「俺のことを殺してくれないか?自殺は怖いんだ」
突然そんなことを言い出した。
彼の顔は暗い表情をしていたのだろうか。声は震えていた気がする。
私は咄嗟に出してしまったこの言葉を、今でも悔やんでいる。 「三日後土曜日でしょ。私の家に来て。両親、居ないから」
彼は笑って見せたのか、口角を不自然
【呻吟】ユイの戯言Ⅲ
「現実と向き合うの?」ユイだ。
無理でしょという目をしている。出てきやがったか。
「ムダよ。あなたは考えれば考えるほど、黒一色で出来上がったあなた自身に蝕まれる人でしょう。現状に満足しているのだから、なにかを成そうだなんて思わないことね」その姿は、すべてを悟った仏かのように思われた。
たしかに、ユイのいうことも一理ある。好きなことを仕事にする人、億り人、数多の選択肢。考えるのには疲れたし
【呻吟】ーーは真実を求め、現実を望む
その日も、なんてことのない日常だと思っていた。
あまりに平凡すぎて、この日常を物語にすることは、古今東西あらゆる文豪が集えども、難しいかのように思われた。
「真実と事実の違いをさ、優等生もどきはしってる?」
ーーには心なしか、影が差していた。まだ夕刻五時すぎだが、季節を感じさせる。
「わからないって、私が言ったら?」
「知らないワケじゃないんだな。優等生らしく、真面目に答えててく
【呻吟】ーーとまともな中学生
『明るい』と言うと、またニュアンスが違う気もする。
クラスメイトや私と関わる人全般には、私は夢を描ける子で、夢を叶える知性を兼ね備えているように思われていたことだろう。成績優秀で、リーダーシップを取る。クラスの人は皆私を慕い、友達がたくさんいる。
全ての人の彼女の印象はこうだった。絵に描いたかのような優等生っぷりだ。
そんな中、ーーだけは、私をそんな目では見ていなかった。
『優等生もどき
【呻吟】 ユイの戯言Ⅱ
「君は、これから先、何をして生きていくつもりなの?」まるで、私には未来が残されてなんてないという風に、ユイが素朴な疑問んを投げつける。自身のことを教えなさい、と。
「私とあなたが出会って、7日も経ったんだから」愉快気にそう呟く、ユイの示す事実に少し驚く。
もっと時間が経っているものだとばかり思っていた。9ヶ月と1週間、体感では同じだった。
ゆいがまたいつ砂に帰ってしまうかもわからない。そん
【呻吟】 ユイの戯言Ⅰ
ここ砂丘では、時間の経過が早い。正しくは砂丘とも呼べないのかもしれないが。
ほんのりと暖かい白のみが広がる箱。
ある一定の距離を進むと、見えざる壁と対峙することとなるこの異次元空間は、箱である。
広がる砂の真上には、古今東西あらゆる『美』を寄せ集めた黒い天井が存在する。唯一とも思われる丘の、隆起した頭に腰を掛けると、一望を楽しむことができる。
砂に美しさを見出すこと、9ヶ月。9ヶ月とは、