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6回目のパレスチナ

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2017年夏の旅。ヨーロッパに住むパレスチナ難民との出会い、本国でも出来事。一期一会の旅
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#中東

クリスチャンの町、タイべ

クリスチャンの町、タイべ

アラブと言えば、イスラム。パレスチナと言うと、聖地を含んでいるところでイスラム教とユダヤ教が争っていると思っている人も多いと思う。争っている内容はさておき、ここパレスチナの人口約495万人の92パーセントがイスラム教徒であるため見かける殆どはイスラム教徒と言っていいだろう。残り7パーセントがキリスト教徒で1パーセントがその他ということになる。
その7パーセントのクリスチャンは点在しているが、首都機

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立ち寄ろう、わざわざね。

立ち寄ろう、わざわざね。

訪問教会というところがある。場所はエルサレムの西側の郊外エン・カレムだ。聖母マリアはイエスを身ごもり、いとこのエリサベトを洗礼者ヨハネを身ごもっていた時にこの場所に立ち寄ったという話がある。
わたしは身ごもりもしていないが、わざわざ足を伸ばして立ち寄ってみよう。実際は立ち寄るというよりも連れて行ってもらうのだが。

エルサレム新市街を通り抜ける。アラブ風なヨーロッパがあったり、新しいものがあったり

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時空を超える

時空を超える

少しだけ空の色が濃くなったエルサレム。商店のガヤガヤとした喧騒、ワンピースのようなアラブ服を着たおじさまたち、スカーフをまとった女性たち、旧市街外の芝生に寝転がる子供達、いつも通りの光景だった。

ダマスカスゲートから旧市街に入る。階段の両サイドにイスラエル兵、そして入り口にもイスラエル兵。着いてすぐのチラ見から実際に近づくと改めてイスラエル兵が増えたことを実感する。どう見ても見た目がアジア人のわ

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同郷っていいね

同郷っていいね

今日はガザ料理の日だよ!いえーーーい!自分じゃ、お料理できないから君がガザ料理作りたいって言ってくれて、料理上手の友達に言ったら来てくれることになったから。家も遠くて中々会えないし、ガザの味も久々に食べられる。すっごい美味しいよ。

わたしたちは公園をぐるり散歩してそのガザ出身の女性を待つことにした。彼女は電車で1時間くらいかけてここアントワープまで遊びに来てくれた。

サラームアレイコム!ハビー

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湖畔のほとり

湖畔のほとり

もうお昼はゆうに過ぎているが、ムハンマドにとっては早めの1日の始まりとなる時間。わたしは散歩に誘った。

OK!じゃあ、僕のお気に入りの場所に行こう!きっと君も気に入るはずだからさ。

わたしたちは近くのスーパーマーケットで各々お菓子と飲み物を購入し近くの湖のある公園に向かった。空はまさにヨーロッパの夏。高い青い空が広がっている。

整備された緑が溢れる公園。その真ん中を歩いて湖に向かう。犬の散歩

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朝が来る

朝が来る

ムハンマドにとって朝は憂鬱なものだった。どんなに天気が良くても気候が最高でも朝は1日の始まりでだからと言ってすることもなく時間をただただやり過ごすだけ。できる限り寝て早く夜が来るように生活サイクルを変えている。

難民問題を考える時、衣食住や安全についてがまず頭に浮かぶだろう。もちろんその通りである。彼らは人であり人間の尊厳を持って生きていくのが当然の権利だとわたしは思う。難民として認定されても待

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孤独な夜

そろそろ帰ろうか。

外は優しい淡いオレンジ色した電灯と石畳み。そして8月末というのに少し肌寒い。

家に帰る前にモロッコカフェでミントティー飲んで帰ろうよ。

そう言ってカフェに歩いて向かう。店の外のテーブルに座りミントティーを注文する。一つは砂糖なしで。

まだ信じられないよ。ここで友達に会えるなんて。本当に嬉しい。信じられない。ここにも友達はいるよ。でも違うんだ。疑ってるってわけじゃないけど

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シリア難民夫婦の家に招かれる

シリア人難民ムハンマド夫妻のアパートメントに行く。ドアを開けるとまだあどけない少女のような奥様が待ち受けている。

ウェルカム!さっき電話で話は聞いたわ。ガザのムハンマドのお友達ね!よろしく。

奥様はにこやかに出迎えてくれた。美しい髪と透き通る目をした奥様とムハンマドは高校生カップルがじゃれ合うように今日の帰宅をお互い喜び合っている。見ててこっちが照れくさくなるくらい。でもよく考えてみると、二人

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シリア人ムハンマド

ガザ人ムハンマドの紹介で友達となったシリア人ムハンマド。彼らは難民であり母国語がアラビア語という共通点があり友人となった。シリア人ムハンマドから奥様を紹介したいからということでお宅にご招待される。

さあ、行こう!トラムですぐだから!

ガザ人ムハンマドはあとから合流すると言って、シリア人ムハンマドと2人で彼の住むアパートメントに向かう。

その前にもう一人紹介したい人がいるんだ。すぐ近くだからそ

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もう一人のムハンマド

ムハンマドの電話が鳴る。アラビア語で何やら喋っているけど、わたしにわかるのはインシャアッラーくらい。

さあ、行こう!友達を紹介する。語学学校で知り合ったんだ。君の話もずっとしてたから。

私たちはアントワープ駅の方に向かった。駅前で多く見かけるオーソドックスなユダヤ人たち。そして立ち並ぶダイヤモンド商店。そこをくぐり抜けて行く。

ワッサラームアレイコム ワアレイコムサラーム

見た所20代前半

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アントワープを歩く

ムハンマドの案内でアントワープ主要観光地を歩く。日本人なら絶対好きなこの場所にももちろん。アントワープ聖母大聖堂。そう!フランダースの犬の最後のシーンはここなのです。その大聖堂の前にはネロとパトラッシュの像がある。そこを一通り歩いたあと、

アントワープが一望出来る場所があるからそこへ行こう!

ムハンマドの提案によりバスに乗って移動する。そこは彼がアントワープで一番気に入っているところだ。それは

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ガザ人ムハンマドが難民になるまで

インドでの学生生活が終わって就職活動をしたんだ。何社か内定もらってアメリカの企業も採用が決まったんだけど、ビザが下りないというのでどこにも最終的には働けなかったんだ。パレスチナ人だからね、最初から予想はしていたけど。それでビザなしでも入国できるヨルダンに行った。ヨルダンで就職活動をしようと思ってね。

ヨルダン人とガザ人も実はあんまり仲が良くないんだよ。過去の歴史でね。パレスチナ難民も多いし。ヨル

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ガザ人ムハンマドとの再会

列車に乗ってアントワープ駅に着く。歴史あるその建物は天井が高く美しい装飾、いかにもヨーロッパという感じがした。目につくところ、至る所に大きな銃を携えたソルジャーがいる。イスラエルだと見慣れた光景。久々のパリでも以前より明らかに増えていた。ここ、ベルギーもそうだった。電車を降り、駅のコンコースに向かう。ムハンマドと会えるのか心配もしつつ、Wi-FiのマークはあるがわたしのiPhoneはそれをキャッチ

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ガザ人ムハンマドに会いに行く

2015年の春、ムハンマドから1通のメッセージが届いた。彼とは2013年南インドマイソールで知り合ったパレスチナ、ガザからマイソール大学で学ぶ学生だった。インドに来る前にはアルジェリアに居たりしたらしい。

今、ヨルダンのアンマンにいます。これからアンオフィシャルルートでヨーロッパを目指します。しばらく連絡取れないけど心配しないで。また連絡するから。

メッセージにはそう記載されていた。アンオフィ

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