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南九州新聞コラム

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「自分にとって大切でない人の声は聴かなくていい」

「自分にとって大切でない人の声は聴かなくていい」

あらゆる人の声を聴くことが仕事の一部である私が、こういうことを言うと良くないのかもしれないけど(そうして、後述するけど、そのことの私の中での折り合いとしては、その人が私の「クライアント」であれば、「(仕事上)大切な人」であり、そうでない場合は聴かなくていい、という形でつけているのだけど)、こうして、人目に付く活動をしていると、いろんなことを言ってくる人たちが本当にたくさんいる。

その中には、箴言

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「居場所がないなら作ればいい」

「居場所がないなら作ればいい」

高橋源一郎さんが毎日新聞で連載としておこなっている「人生相談」をまとめたものの2冊目が2022年の7月に出まして、寝る前とか暇なときとかにぽつぽつ読んでいます。

1冊目のタイトルは「誰にも相談できません」(未購入)。
2冊目のタイトルは「居場所がないのがつらいのです」。

どちらも、実際に届いた相談の文章から取られたものだと思います。

思えば、私にも「居場所がなくてつらい」と思っていたことがあ

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NPO法人ルネスかごしまがイベントを(しょっちゅう)やる理由(20220618南九州新聞掲載)

NPO法人ルネスかごしまがイベントを(しょっちゅう)やる理由(20220618南九州新聞掲載)

私が理事長をつとめるNPO法人ルネスかごしまは、よくイベントをする。
毎年8月に県民交流センターの庭でおこなう「ギネスに挑戦しません!大そうめん大会」は、2019年からおこなっており(2021年は雨予報だったので中止にしたら当日は天気がもってしまった)、知り合いの福祉事業所さんが切ってくださった竹で、直線型のそうめん流しを作り、たくさんの人が同時にそうめんを食べることができる企画で、2019年の開

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重層的支援施設を作りました(20220521南九州新聞掲載)

重層的支援施設を作りました(20220521南九州新聞掲載)

鹿児島市を中心に県内全域で「あらゆる困りごとを抱える人と一緒にこれからのことを考える」活動をおこなっているNPO法人ルネスかごしま(うち)ですが、2022年の6月くらいから、重層的支援施設を開設することになりました。場所は、鹿児島市冷水町。西郷洞窟が近くにあり、市街地中心部からのアクセスもそれほど悪くない(市役所まで徒歩20分、車だと7分程度)にもかかわらず、落ち着いた静かな地域にあり、広いリビン

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ひだまりカフェかのやが始まります。(20220514南九州新聞掲載)

鹿児島市で5年、姶良市でも開催してきたひだまりカフェが、ついに大隅半島に上陸します。といっても、ひだまりカフェが何かわからないですね、すみません。

「ひだまりカフェ」とは、誰でも来ることができて、無料で、のんびり好きなことをしたり、お話をしたり、お話をしたりしなかったり、遊んだり勉強したり相談したりもできる、居場所のことです。

自分を傷つけたり、人を傷つけたりしない限り(あと、一応公序良俗

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なぜ、生活困窮支援をおこなうのか(南九州新聞20220416掲載)

なぜ、生活困窮支援をおこなうのか(南九州新聞20220416掲載)

「どうしてたにかつさんは生活困窮支援を行うのですか?」

先日、オンラインでおこなっている伴走型支援者養成講座にて、このような質問をいただいた。はて、私はどうして生活困窮者への支援をおこなっているのだろう。

最初に考えたのは、私が過去に、一般に言う生活困窮者(世帯)であったという事実だ。大学を中退して以後、私は限りなくホームレスに近い状態で暮らしていたことがあるし、今でも日本の、そして鹿児島の平

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後藤さんとラーメンのこと(20220409南九州新聞掲載)

後藤さんとラーメンのこと(20220409南九州新聞掲載)

NPO法人「ボラネット」の理事長であった後藤さんが、昨日亡くなったという連絡があった。私が前の団体にいた時からだから、もう7年くらいの付き合いだっただろうか。

彼は、若いころにバイクの事故に遭い、脊椎を損傷して下半身と上半身の多くにマヒが残り、それでも寝た状態の車椅子で移動をして精力的に動いておられた。ご自身も身体障がいがありながら、行き場のない、ゆえに引きこもりがちな身体障がい者のために、近年

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「桃太郎さん」との出会いと別れ(南九州新聞20220402掲載)

「桃太郎さん」との出会いと別れ(南九州新聞20220402掲載)

先週の土曜日、いつものように鹿児島市民福祉プラザで「ひだまりカフェ」を開催していた私は、その場をスタッフに任せて、福祉プラザの隣の県民交流センターで開催されていた「西田橋拓本」の展示を見て、福祉プラザに帰るところだった。

県民交流センターの1階には、先日「一箱古本市」を開催した共生協働センターがあり、そこで、毎月1回最終土曜日に、ネコさんの保護活動などをおこなっているNPO法人あんじゅりあんさん

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「一箱古本市」を開催して(南九州新聞20220326掲載)

「一箱古本市」を開催して(南九州新聞20220326掲載)

3月21日、春分の日に鹿児島市の県民交流センター内共生協働センターにて「一箱古本市」を開催しました。当初は鹿児島市名山町バカンスで屋外開催予定だったのですが、10日ほど前から当日が雨予報で、3日前になっても変わらなかったので場所を変更して開催しました。急に場所を使わせてくださった鹿児島県共生協働課に感謝しつつ、総括など。

出店者は全部で13名(たぶん)。11時からのスタートでしたが、午前中予定が

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「誰でも来ていい」って本当ですか?(20220319南九州新聞掲載)

「誰でも来ていい」って本当ですか?(20220319南九州新聞掲載)

何回かに分けて、うちの法人であるNPO法人ルネスかごしまが運営する「ひだまりカフェ」のこと(誰かの居場所を運営すること)について書かせていただいています。

今回は「誰でも来ることができる場所を作ること」について

世の中には、「(基本的には)誰でもおいで」と言っている場所がいくつかあります。地域によってはその選択肢が多岐にわたることもあるでしょう。しかし、そのじつ、本当の意味で、誰でもに対してウ

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「カウンセリングとは、傾聴とは」(南九州新聞20220312掲載)

「カウンセリングとは、傾聴とは」(南九州新聞20220312掲載)

はたして、読者の中に「カウンセリング」を受けたことがある人はどのくらいいるのだろう。あるいは、訓練を受けた傾聴者が行う「傾聴」を受けたことがある人はどのくらいだろう。「今、私はこの人にちゃんと話を聴いてもらえている」という経験をしたことがある人はどうだろう。

世間的に「カウンセラー」という資格を基に仕事をしている人は多い。「カウンセラー」という立場の人と話をしたことがあるという人は多いだろう。だ

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「楽しそうだから自分がやる」という感覚(南九州新聞20220305掲載)

「楽しそうだから自分がやる」という感覚(南九州新聞20220305掲載)

友人が福井県でやっている読書会の記録が送られてきた。
正確には「福井県でやっている読書会の記録をまとめたものが、全国どこでもコンビニのプリンタで印刷できるようになったので、それを出力した」のであるが、本筋からは外れるので割愛。とにかく、私の友人がやっている読書会の記録を読んだところ、その中に「一箱古本市」についての本(「一箱古本市の歩き方」光文社文庫)があって興味を持った。

その本自体はまだ読ん

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渋滞が好きではない話

渋滞が好きではない話

それはまあ、好きな人なんてそうはいない、という話ではあるだろうと思うのですが。

私は渋滞が好きでない。

朝はそもそも起き(れ)ないからいいとして、夕方のラッシュアワーも当然好きではない。もちろん、それぞれの車を運転する人には、それぞれの事情(たとえば、こどもが帰ってくる前に家に着かないといけないとか、〇時までに帰社しないといけないとか)があり、やむなく車を走らせていることは頭では理解できる。し

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「余裕を持とう」と思った時にはすでに余裕は無く(南九州新聞20220219掲載)

「余裕を持とう」と思った時にはすでに余裕は無く(南九州新聞20220219掲載)

支援活動だけの話ではないと思うのですが、人の話を聴くには、そして、自分の価値を脇に置いて、ジャッジせず、その人のあるがままを受け入れるには(「傾聴」においてはこのような聴き方をします)、聴く側に心理的な余裕が無ければならない、と言われている。

今日食べるものに困っている人が、同じく飢えている人に食べ物をわけることができるかというと、もちろん、世の中には(あるいは伝説上は)いるのかもしれないけれど

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