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短歌・詩・俳句

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短歌・詩・猫を中心とした川柳などを掲載しています。
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#短歌

迷子

迷子


誰も僕を知らない街でただ僕は迷子になっていたかったのだ

死にたいと思ったことはただの一度もないが、
どこかに行ってしまいたいと思ったことなら数えられないくらいある。

母


「あんたは誰?」と母が言うので「ああ僕はあなたの子だ」と言ってはみたが

母の痴呆は進んでいる。

僕は実家を離れていて一番上の兄に母のことは任せっきりになってしまっているが、家に帰るたびに兄からは愚痴がこぼれる。

「店に行って勝手にパンを食べてしまう」とか
「庭でいろんなものに火をつけてしまう」などなど。
以前には、階段を頭から落ち救急車で運ばれたと突然電話がかかってきたこともあった。幸い頭

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向日葵と夏空と猫

向日葵と夏空と猫

数年前から、夏がいたたまれないほど暑くなりました。うんざりするような毎日ですが、そんな夏の青空をちょっと明るく遊びながら歌ってみました。

ひまわりが よいしょと持ち上げている空が どっかんどっかん 青い

猛烈に暑い日が続いたかと思うと、雨が降るときには気が狂ったように降る昨今。各地で豪雨災害、地震もありました。噴火も。大変な思いをなさっている方も多いと思います。何もできませんがお見舞い申し上げ

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蓑虫の歌

蓑虫の歌

空をふわりふわりと雲がゆき 旅に出てみたくなるみのむし

この温い寂しさがいい ぽかぽかと日溜まりにゐるみのむしとゐる

風吹けば風にふはりと揺れてゐてみのむしといふ生き方もいい

「隣の芝生は青い」と言いますが、他人の苦労も考えずに自分以外の生き方が羨ましく見えたりすることがあります。
「猫であればよかった」とか、「鳥のように飛べたら」とか。

でも、そのくせ、それは、それが決して実現されないこ

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僕はきっと生きていていい

僕はきっと生きていていい

寂しさはさびしくもどこかあたたかくブナの若葉に木洩れ日は揺れ

僕はきっと ここにこうして生きていて いい 夏 清冽に 風がゆく空

暑い日が続いています。ただ、夏らしい青空が戻って来て、暑いけれど、澄み渡った空気と青空が、気持ちを爽快にしてくれます。
そんな肯定感を歌にしてみました。

ただ僕は、夏より冬の方が好き。海より山の方が好きです。旅に出るなら北を目指します。典型的に「寒冷」を求める人種

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あぢさゐ

あぢさゐ

僕がただ生まれて死ぬという ただそれだけにすぎないんだが

何だかわからないけれど何かを待っている雨の午後

ただここにこうしていたい 降る雨にただ濡れている紫陽花

字足らずのつぶやきでした。

樹

雨後の野に幹黒々と濡れてゐる一樹しづかに死を待つかたち

立ち尽くす樹の哀しみを吹き抜けて風吹けば風輝く日照雨

自由とはこの樹のやうに天を指しやがて朽ちゆくことかもしれぬ

暑い日が続いています。雨が抜けたと思ったらかんかん日が照って。
雨上がり、「樹」を歌ってみましたが、僕が歌を作るとどうしてもこんなふうになってしまい・・。

こちらの方の「樹」は素晴らしいと思い、僭越ですが紹介させてください

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ぽつんと一軒家

日曜の夜は「ぽつんと一軒家」を観る。カミさんは「イッテQ」を観たそうなので、何となくたまに観る。大河ドラマは録画して置いて別の日に観ることになっている。

多くの同じ世代の人が結構「ぽつんと一軒家」に嵌っていると聞くのだが、確かにいい。あんな暮らしがしてみたいと思ってみたりする。何だか、ただただ忙しく毎日が過ぎていくと、やむにやまれず、ああ自然の中で原点に帰りたいと思うのかもしれない。

紫陽花が

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降る雪や明治は遠くなりにけり

降る雪や明治は遠くなりにけり

かつて図書館に勤務していた時
「もはや戦後ではない」
と書いた『白書』を見たいという
来館者があった。

書庫に潜って
1956年の『経済白書』を引っ張り出し、
これがあの有名な序文の一節の載る白書かと
ちょっと感動してみたりした。

ニュースで「男女共同参画白書」に
「もはや昭和ではない」
と書かれることになったと
報じられていた。

そうか、終わったか・・。

その通りだろう。

戦争に彩られ

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蛇イチゴ

蛇イチゴ

今日はお休みだったので、家の周りを猫と散歩。

見えにくいかもしれませんが、栗の花が落ちて「栗花落」→まさに「梅雨入り」を迎え、今日は「五月晴れ」でした。

辺りは青々。ゴールデンウィークに植えられた稲も順調に育っています。

普段は目を遣らない花にも目が行きます。
休耕田に一面黄色い花が咲いていてきれいでした。

僕は花の名前を全く知らず、グーグルレンズの力を借りて調べてみると、この黄色い花は「

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ガキと主夫生活

ガキと主夫生活

「ゴツモンがモノクロモンに変化した」子は叫びつつ風呂に入り来る

小学校3年のガキである息子と2人暮らしをした時期があった。別にカミさんに逃げられた訳ではないので、結婚を申し込みたいと思う方がいるかもしれないが、ご遠慮願いたい。お気持ちだけはありがたく受け取らせていただくことにする。本当は“お気持ち”だけでは勿体ないのだが、やむを得ない。

実はカミさんのお母さんが肺ガンと診断され(実は手術後の説

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雨の匂ひ

雨の匂ひ

雨のにほひ かすかに風の運ぶ夜を 焼酎に梅落として憩ふ

金田一春彦氏の小文に

国文学者に栗花落裕さんという方がある。「栗花落」が苗字で、これはツユリさんと読む。毎年梅雨の候になるとクリの花が散る。このことから「栗花落」と書いてツユイリと読むので、ツユリはその転だ。

とあります。

今年も栗が花を付ける頃になって、今週にも梅雨入りしそうな気配です。

梅雨は、古典では?「五月雨」。よく生徒には

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わたくし

わたくし

蜘蛛の糸きらりと流れ わたくしはわたくしの道をゆくほかはない

ひま

ひま

 

高校時分、テスト監督をしている先生が羨ましくてならなかった。不勉強を悔いながら出来の悪い頭を必死に働かせて問題を解いているのに、いかにも暇そうに窓の外を眺めたり、椅子に腰掛けてぼんやりしていたり、中には野球の投球フォームをしてバランスを崩してひっくり返ったりする先生もいたが、いずれにしても、どの先生ものんびりと心地よく自由時間を楽しんでいるように見えた。
あんなご身分になってみたいと夢のよ

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