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雨の匂ひ

雨のにほひ かすかに風の運ぶ夜を 焼酎に梅落として憩ふ


金田一春彦氏の小文に

国文学者に栗花落裕さんという方がある。「栗花落」が苗字で、これはツユリさんと読む。毎年梅雨の候になるとクリの花が散る。このことから「栗花落」と書いてツユイリと読むので、ツユリはその転だ。

とあります。

今年も栗が花を付ける頃になって、今週にも梅雨入りしそうな気配です。


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梅雨は、古典では?「五月雨」。よく生徒には、芭蕉の「五月雨をあつめてはやし最上川」を引いて、陰暦と陽暦では約一か月の季節感のずれがあることを説明します。「五月雨」がしとしとと降る春雨だったら最上川の流れの激しさがわからないよね、と。
同じように「五月晴れ」も「梅雨の間の晴れ間(あるいは、梅雨明けの晴れ)」であって、五月のさわやかな快晴ではない、と。

でも、そんな風情より、豪雨災害が心配な昨今です。降るとなると恐ろしいほどメチャクチャな雨が降るようになってきました。まるで亜熱帯になったよう。

夏もメチャクチャ暑くなりましたね。御殿場に引っ越してきたころは、夏になると高原の風が吹き、日陰にいると鳥肌が立つくらいだったのですが、3年前にどうしても耐えられなくなり、クーラーを購入しました。「えっ、3年前?」と、ちょっと驚いていただけるとうれしいです。

五月のうちから猛烈な暑さに悩まされるようにもなってきました。かつては「六月一日」が「衣替え」だった、と馴染んできた年配の方も多いと思います。もうだいぶ前から学校は全くフレキシブルで、自分で考えなさいみたいな指導になっています。

衣替えと言えば、最初に紹介した金田一春彦氏の小文の同じ頁に

四月一日」さんと書く名字がある。富山県の魚津・滑川に多い。何と読むかというと、ワタヌキと読むのだそうだ。昔旧暦の四月一日というば、衣がえをする日で、今まで着ていた綿入れを脱ぎ、あわせに着替えた。そういうことから「四月一日」はワタヌキだそうだ。

とあります。替えられるのは着物だけではなく、室内装飾や、夏に向かう「気分」も。そこに「季節感」がありました。

七夕やお月見、節分など、みなさんはやっておられますでしょうか?忙しさの中で、また、いろんなものが商業サービスに代行され、気候の変化がさらに追い打ちをかけて、僕らは「季節」から遠ざかりつつあるような気がします。俳句の季語もそういうズレの中にいて、しかし頑張って「季節」を留めようとしているのかもしれません。


せめて今夜は「雨の匂い」を楽しみながら、酒を飲みたいと思います。
(単なる口実・・?)




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