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エッセイ

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日記とか回想とか
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#結婚

味噌汁と新妻の悲哀

味噌汁と新妻の悲哀

味噌汁は鍋を使わなくても作れる、というのは一人暮らし時代に知ったことだ。
スーパーには「調味みそ」という、だしの入ったチューブタイプの味噌が売っており、乾燥わかめやねぎなどの具とともにお湯で溶けば、インスタントよりも割安かつ美味しい味噌汁が食べられるのだった。

結婚してから研究はさらに進み、調味みそを買わずとも、ほんだしと普通の味噌を適当に入れれば同じようなものが作れることがわかった。
もちろん

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窓辺でスピッツを聴きながら

窓辺でスピッツを聴きながら

最近、家の中にお気に入りの場所ができた。窓辺だ。
リビングに大きな掃き出し窓があり、ベランダに出入りするために空けてあるのだが、そこに小さな折りたたみ椅子とサイドテーブル(どちらも独身時代の夫の持ち物だ)を持ってきた。軽いので、邪魔なときはどかせばいい。

サイドテーブルにマグカップを置く。たいていコーヒーか紅茶だ。
先週は本を読んだ。何度も読んでいる江國香織の「東京タワー」を、読み終わったのにも

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専業主婦5か月目の日記

専業主婦5か月目の日記

結婚して5か月が経った。もう5か月?という気もするし、まだ5か月?という気もする。

生活は落ち着いてきた、と思う。2,3か月の頃は、私の体調が不安定だったこともあり、こんな生活とても耐えられない、と思っていたときもある。それは夫のせいではなく、単に専業主婦というポジションに慣れていなかったからだ。(いまもまだ慣れていく途中だけど)
朝起きてから夫が20時頃に帰ってくるまで、毎日だいたい12時間ひ

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結婚初日日記 2022.9.19

結婚初日日記 2022.9.19

長く付き合っている恋人と昨日入籍し、夫婦となった(ようだ)(まだ実感がわかない)。
トラブルはないが、いろいろなことがあって頭が混乱している。頭の整理のために書き記してみたいと思う。

2022.9.19
部屋の中はダンボールや紙袋に入った荷物だらけ。家族総出で車に積み込んだ。
からっぽになった部屋の写真を撮った。

父が車で新居に送ってくれた。荷物を運ぶのも手伝ってくれた。別れは実にあっさりした

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結婚するときの自分はもっと大人だと思っていた

結婚するときの自分はもっと大人だと思っていた

私は明日、実家を出る。
結婚するのだ。

荷物は昨日、大方まとめて、父の車で運んでもらった。
クローゼットも、本棚も、べたべたポストカードやブロマイドを貼っていた壁も、小学生のときから使っている机の引き出しも、いまはからっぽだ。

いやだ、とは思わない。
ただ、さみしいと思う。

私はもう、この家には住まないのだろうか。両親と兄弟と暮らすことは、もうないのだろうか。
それは不思議で、想像がつかなく

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出来損ない娘は"自慢の息子"と結婚していいのか?

出来損ない娘は"自慢の息子"と結婚していいのか?

「まあ、自慢の息子ですから」

結婚相手の父親は、私が伺った挨拶のときも、その後の両家顔合わせのときも、決まってそう言った。ほどよく酒が回って、機嫌良さそうに。それだけ繰り返すのだから、本心からの言葉なのだろう。
私はその言葉を聞くたびに憂鬱になった。ばか親だと思ったわけではない。おっしゃる通りだからだ。

結婚相手は、それはよくできた“自慢の息子”だった。
一流大学にトップの成績で入り、学費は四

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結婚直前に読み返す、江國香織の結婚エッセイ『いくつもの週末』

結婚直前に読み返す、江國香織の結婚エッセイ『いくつもの週末』

『いくつもの週末』(集英社文庫)は、江國香織が結婚して2~3年の頃に書かれたエッセイ集。会社員の夫との生活、そのときどきの心模様が鮮やかに描かれている。

作家である彼女にはそれまで存在しなかった、「週末」という概念。
「全部の神経をそばだてて夫と向かいあおうとしてしまう」彼女にとって、夫と過ごす週末はまるでバカンス(たとえスーパーマーケットにしかいかなくても)。終わってほしくないと思うのに、でも

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