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読書記録

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ジャンル問わず。読んだ本の記録、紹介。
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2023年3月の記事一覧

小説ブラック・ジャック~読書記録261~

小説ブラック・ジャック~読書記録261~

2019年刊行。手塚治虫先生の漫画「ブラック・ジャック」をSF作家・瀬名秀明氏が小説として著した。

作者自身、手塚治虫先生の大ファンだということが伝わる作品で、手塚漫画のキャラクターの魅力を生かしつつ、オリジナリティのある作品となっている。

世代的に作者の瀬名秀明は、少年チャンピオン連載中にブラック・ジャックを読んだ世代であろう。本当に細部まで大ファンだというのがわかるものであった。
更に、手

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おいしい旅 想い出編 アミの会~読書記録260~

おいしい旅 想い出編 アミの会~読書記録260~

アミの会は、仲良し女性作家のグループだ。
で、短編小説を共同発行したりしている。

こちらは2022年に書きおろした作品なので、食事の時にマスクを外したり、食事が終わると付けたり。 そういった細かい描写がリアリティを感じて、面白い。

やはり、私は新津きよみ先生が好きだ。ほんの僅かのページであっても、必ず何かしらのミステリー部分を備えている。

そして、本書最後の大崎梢先生の作品では、読みながら泣

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「おくのほそ道」をたどる旅~読書記録259~

「おくのほそ道」をたどる旅~読書記録259~

2022年に刊行。フリーライターの下川裕治氏による旅日記。

著者は、産経新聞記者を経て、現在はフリーライターとなっている。
主に、旅の本を書いているが、海外での安あがりに出来るものが多い。

興味のある方は、こちらをご覧ください・・・

ここに地図があるが、松尾芭蕉は現在の江東区深川に住んでいた。

ここから、太平洋沿いに東北に向かい、現在の岩手から秋田に。
日本海沿いに西に向かっている。

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炎上する君~読書記録258~

炎上する君~読書記録258~

2010年刊行 西加奈子の作品 こちらは短編集になる。

「太陽の上」中華料理店の三階に住んでいるあなたは三年間外に出たことがない。でもその日、何かが変わる。 「舟の街」ある日、あなたは徹底的に参ってしまった。そして、思い立った。舟の街に行こうと。 「空を待つ」深夜の青梅街道で携帯電話を拾った。その日から、見知らぬ相手とのメール交換が始まる。 「甘い果実」作家志望の私は31歳。勤めていた書店で、あ

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猫は知っていた~読書記録257~

猫は知っていた~読書記録257~

著者は仁木悦子。
1957年に江戸川乱歩賞を受賞した作品だ。

時は昭和、植物学専攻の兄・雄太郎と、音大生の妹・悦子が引っ越した下宿先の医院で起こる連続殺人事件。
現場に出没するかわいい黒猫は、何を見た? 
ひとクセある住人たちを相手に、推理マニアの凸凹兄妹探偵が、事件の真相に迫ることに----。
鮮やかな謎解きとユーモラスな語り口で、一大ミステリブームを巻き起こし、ベストセラーになった江戸川乱歩

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告白~読書記録256~

告白~読書記録256~

告白は、ミステリー作家・湊かなえのデビュー作だ。第一章は2007年に書かれている。

中学教師の森口悠子は、自分の娘は殺された。それを担任するクラスで淡々と持論を展開していく。

6章に分かれているが、それぞれの登場人物の視点から独白形式で書かれている。

他の作品でも思ったのだが、湊かなえさんは、何故こんなにも毒親を描くのが上手いのだろうか。
犯人の少年の母。過保護のクレーマーに、自分勝手な虐待

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イエスのまなざし~読書記録255~

イエスのまなざし~読書記録255~

1981年に日本基督教団(プロテスタント)出版局から出版された井上洋治神父のエッセイだ。
自然のささやきに耳を傾け、イエスの悲愛(アガペー)に生きる神父が生きとし生けるものに、人生の哀しみ、歓びを静かに語りかける。日本人の琴線にふれる珠玉のエッセイ12篇を収録。

山路来て 何やらゆかし すみれ草 松尾芭蕉「野ざらし紀行」より。
本書は、この芭蕉の句から始まる。
井上洋治神父をモデルにした遠藤周作

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九十歳。何がめでたい~読書記録254~

九十歳。何がめでたい~読書記録254~

2016年に出版された直木賞作家・佐藤愛子先生のエッセイだ。

佐藤愛子先生は、1923年、大正12年生まれ。まだまだ元気で過ごされておられる。

いやあ、実に爽快。楽しい。ウンウンと頷きながら読んでしまった。

和田秀樹先生曰く。若い世代の方は、老害だの、好き勝手に言っているだのの感想を持つ方もいるようだ。
イヤイヤ。そんな事は決してない!と断言したい。

幾つか、本書から転載したい。

「文明

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宗教を物語でほどく 島薗進~読書記録253~

宗教を物語でほどく 島薗進~読書記録253~

2016年、宗教学者で、東京大学名誉教授、上智大学教授の島薗進先生による著書。

国内外の文学作品を独自の、宗教学者としての目線で語られている。

アンデルセン、宮沢賢治のように、熱心なキリスト教徒、仏教徒の立場で童話を書いている場合もあるが、中には(特に日本人の場合)、本人は宗教観というものはなく、普通に書いているのだが、視点を変えると宗教的である
とか、ちょっとした教訓であったりと。捉え方が実

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イワン・イリイチの死~読書記録252~

イワン・イリイチの死~読書記録252~

ロシアの文豪トルストイが1886年に書いた小説。

一官吏が不治の病にかかって肉体的にも精神的にも恐ろしい苦痛をなめ、死の恐怖と孤独にさいなまれながらやがて諦観に達するまでの経過を描く。題材は何の変哲もないが、トルストイ(1828‐1910)の透徹した人間観察と生きて鼓動するような感覚描写は、非凡な英雄偉人の生涯にもましてこの一凡人の小さな生活にずしりとした存在感をあたえている。

主人公は病床で

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今と言う一瞬に、一生の幸せがある~読書記録251~

今と言う一瞬に、一生の幸せがある~読書記録251~

医師の矢作直樹氏が、2019年に書かれたエッセイ。

この本のテーマは、ずばり!「中今(なかいま)を生きる」である。
では、「中今」とは?

中今とは今この一瞬ということであります。 『広辞苑』には「過去と未来との真ん中の今。 遠い無限の過去から遠い未来に至る間としての現在」とあります。

とにかく、過去や未来を考えず、今を生きること。それが「中今」であり、著者が言いたいことである。

心を調える

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六十代と七十代心と体の整え方~読書記録250~

六十代と七十代心と体の整え方~読書記録250~

2020年に刊行された和田秀樹医師による著。
読むと生きる意欲が湧いてくる本!後半生のステージを生きるための知恵が満載。精神科医にして高年学のオーソリティ、人生の達人がお届けする実践的かつ思索的処方箋。

和田秀樹医師は、老人科勤務もされていたことから、この類の分野に於いては詳しい。

今や日本は「人生100年時代」。
だが、身体、心と若いままではない。
QOL(生活の質)が低下した状態が長く続く

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おちゃめなパッティ~読書記録249~

おちゃめなパッティ~読書記録249~

あしながおじさん」のウェブスターの著した、とっても愉快で、胸キュンな女学生お転婆物語。1911年に発行。あしながおじさんが1912年に発行なので、その前の作品になる。

「由緒正しく、規律に厳しい寄宿制の女学校に通う、仲良し三人組のお嬢さんたちは、そのストレートな生き方で、いつも学園中に痛快な嵐を巻き起こしていく。
その中で正しさ、優しさを貫いてゆく中で、学園の周辺に存在する人々も巻き込みながら成

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