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炎上する君~読書記録258~

2010年刊行 西加奈子の作品 こちらは短編集になる。

「太陽の上」中華料理店の三階に住んでいるあなたは三年間外に出たことがない。でもその日、何かが変わる。 「舟の街」ある日、あなたは徹底的に参ってしまった。そして、思い立った。舟の街に行こうと。 「空を待つ」深夜の青梅街道で携帯電話を拾った。その日から、見知らぬ相手とのメール交換が始まる。 「甘い果実」作家志望の私は31歳。勤めていた書店で、あの作家がサイン会を開くという。 「炎上する君」銭湯で私と浜中は足が炎上している男の噂話ばかりしていた。ある日、銭湯にその男が現れて…。 「私のお尻」私は白くて綺麗なお尻をもっているけれど、いつからかそのお尻を憎らしく思うようになった…。 何かにとらわれ動けなくなってしまった私たちを訪れる、小さいけれど大きな変化。奔放な想像力が紡ぎ出す、どこか不穏で愛らしい物語たち。8編収録。


「きりこについて」は、わかりやすかったが、この短編集は不思議な話だらけだった。
けれども、主題としては、「自分の存在意義」についてなのだと感じた。
例えば、お尻のモデルをしている女性の話。顔ではなく、自分の綺麗なお尻だけに存在価値があるような気がしている。

そして、最後の「ある風船の落下」。世界中に多くの人が、傷つき自分の存在を消してしまいたいと願っている。誰もが平等である世界。そんな所に逃れたいのだろう。

もしかして、「舟の街」と「空を待つ」は繋がっていないだろうか?
書かれたのは別の時期で、別作品なのだが、「舟の街」では主人公は携帯電話を捨てている。探すこともしないで放置。
「空を待つ」では、主人公は拾った携帯電話が誰のものかわからないまま、使用している。
この携帯電話は、もしかしたら、「舟の街」で捨てたものなのかな?などとも思った。

映画にもなった表題作よりも他の短編の方が面白かったと思うのは私のひねくれた見方なのだろう。


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